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Wed, 17 December 2025

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写真で振り返る2012年ロンドン五輪&パラリンピック

写真で振り返る2012年ロンドン五輪&パラリンピック

ロンドン五輪

日本

レスリング

女子55キロ級の吉田沙保里と同63キロ級の伊調馨が五輪3連覇を達成。そのほか、同48キロ級の小原日登美、男子フリースタイル66キロ級の米満達弘が金メダルを獲得した。


レスリング女子55キロ級の吉田沙保里


レスリング女子63キロ級の伊調馨

体操

男子団体総合決勝で一旦は合計得点で4位となったものの、競技終了後に日本チームが抗議。その結果、2位に繰り上がり、銀メダル獲得。同個人総合では内村航平が同種目で28年ぶりとなる金メダルを獲得し、雪辱を果たした。


体操男子個人総合の内村航平


体操男子団体総合

柔道

女子57キロ級の松本薫が金メダルを獲得したものの、男子は史上初の五輪での金メダルなしという結果に。

サッカー

日本女子代表「なでしこ」が決勝で米国に2対1で敗れ、惜しくも銀メダル。男子代表も4強入りし、男女ともに快挙を成し遂げる。


サッカー日本女子代表「なでしこ」

そのほかの競技

• ボクシング、男子ミドル級の村田諒太が日本人48年ぶりとなる金メダル獲得。
• 競泳男子、平泳ぎの北島康介は400メートル・メドレー・リレーで銀メダル。
• 卓球女子団体が銀メダル。同種目でのメダル獲得は実施競技になって初。
• バレーボール女子が28年ぶりの銅メダル獲得。

英国

陸上

陸上男子の5000メートル及び1万メートルで英国のモハメド・ファラが金メダルを獲得。


モハメド・ファラ

自転車

自転車男子でクリス・ホイが今大会で2個のメダルを獲得、英単独最多となる金メダル通算6個に。


クリス・ホイ

そのほかの競技

• テニス男子シングルスで英国のアンディ・マリーが悲願の金メダル。
• 女子七種競技のジェシカ・エニスが金メダル。
• 自転車男子個人ロード・タイム・トライアルでブラッドリー・ウィギンスが金メダル獲得。

世界

陸上

陸上男子、ジャマイカのウサイン・ボルトが100メートル、200メートルの両種目で金メダルを獲得し、2大会連続で2冠を達成。400メートル・リレーの決勝でもジャマイカが世界新記録で優勝。


 

そのほかの競技

• 水泳男子、米国のマイケル・フェルプスが今大会で金メダル4個を獲得、通算で18個の金メダル。

金メダル獲得数・国別ランキング

順位
国名
金メダル
銀メダル
銅メダル
総合
1米国462929104
2中国38272388
3英国29171965
4ロシア24263282
11日本7141738
参考: BBCほか

ロンドン・パラリンピック

日本

車いすテニス

車いすテニス、男子シングルスで国枝慎吾が2連覇を達成。

そのほかの競技

• ゴールボール女子、日本は中国を破り金メダル。
• 柔道男子100キロ超級で正木健人が初出場金メダル。
• 競泳では、女子100メートル背泳ぎで秋山里奈、男子100メートル平泳ぎで田中康大が金メダルを獲得。

英国&世界

競泳

競泳女子で英国のエレノア・シモンズが400メートル自由形及び200メートル個人メドレーにおいて世界新記録で金メダル獲得。


エレノア・シモンズ

そのほかの競技

• 陸上男子で英国のデービッド・ウィアーが今大会4個の金メダルを獲得。
• 陸上男子100メートルで英国の19歳ジョニー・ピーコックが南アフリカのオスカー・ピストリウスを破り、金メダル獲得。

金メダル獲得数・国別ランキング

順位
国名
金メダル
銀メダル
銅メダル
総合
1 中国 95 71 65 231
2 ロシア 36 38 28 102
3英国 34 43 43 120
4 ウクライナ 32 24 28 84
5 オーストラリア 32 23 30 85
24日本 5 5 6 16
参考: ロンドン・パラリンピック公式ウェブサイトほか
 

英国のクリスマス・マーケット

日照時間が極端に短く、ときには肌に痛みを感じるほど冷え込む英国の冬は、外出する機会が減りがち。気分も塞ぎ込みがちになるこの冬に、私たちを明るくそして温かい気持ちにさせてくれるのがクリスマス・マーケットだ。出掛ける、食べる、飲む、話す、温まる、買う、遊ぶ。幸せを感じる瞬間がいっぱい詰まった、英国各地のクリスマス・マーケットの中から特にお勧めのものを紹介する。

ハイド・パーク冬の一大エンターテイメント!
Hyde Park Winter Wonderland


平日でも多くの人が集まるハイド・パークのクリスマス・マーケット

春は草花が生い茂り、夏には絶好の日光浴スポットに、秋は落ち葉が舞う散策コースとなるハイド・パークが、今や「ワンダーランド」に変身している。英国各地で開催されるほかのクリスマス・マーケットとの一番の違いは、エンターテイメント施設の充実ぶり。敷地内に突如としてアイススケート・リンクや観覧車が設置されて、巨大遊園地になったかのよう。絶叫マシーンや射撃ゲームも用意されているので、丸一日を飽きずに過ごすことができるはず。もちろん食べ物や飲み物のストールも豊富。家族連れに最適だ。

(写真左)目玉の大観覧車。(写真右)英国では珍しい大ジョッキで飲むビールの味は格別。

Bavarian Village
敷地内の中央にある木組みの小屋周辺のスペースは、クリスマス・マーケットの本場、ドイツはバイエルン州の村をイメージしたもの。入場は無料で、ここで大きなジョッキを傾けながら、DJの音楽に合わせて歌えや踊れやの野外パーティーが開かれる。

1月6日(日)まで(12月25日は休み) 
10:00-22:00
Hyde Park London W2 2UH
最寄駅: Hyde Park Corner
www.hydeparkwinterwonderland.com

 

サウスバンク英国における冬の食材にこだわるなら
Real Food Christmas Market


魅力的な通常のマーケット

テムズ河岸のサウスバンクで開かれるクリスマス・マーケットは冬の風物詩。ただ意外にあまり知られていないのが、今年は12月14日~16日と20~23日のみ開催されるこの「リアル・フード・マーケット」だ。普段は毎週金曜日から日曜日にロイヤル・フェスティバル・ホールの南側出口で開催されているこのマーケットがクリスマス特別仕様になる。仲介業者を通さないことで、生産者から直接、手軽な価格で購入できるよう運営されているこのマーケットでは、クリスマス料理に欠かせない七面鳥や、2週間かけて丁寧に処理されたガモン(塩漬けされた豚肉)などが店頭に並ぶ。

(写真左)青く光るロンドン・アイの界隈にクリスマス・マーケットが広がる
(写真右)食にこだわった「リアル・フード・マーケット」は特にお勧め

Choir Performance
サウスバンクのクリスマス・マーケットでは、毎日午後1時半と7時半に聖歌隊による合唱が行われる。マーケット以外にも文化施設やレストランなどが立ち並ぶこの一帯に、お昼休みや仕事の帰り道にでも立ち寄ってみようかな、という人たちにお勧め。

Real Food Christmas Market
12月14日(金)~16日(日)、20日(木)~23日(日)

木 12:00-20:00 金・土 12:00-20:00 土 11:00-20:00 日 12:00-18:00

Southbank Centre Christmas Market
12月24日(月)まで

11:00-22:00 土日 10:00-22:00
Southbank Centre
Belvedere Road, London SE1 8XX
最寄駅: Waterloo
www.southbankcentre.co.uk

 

リンカーンクリスマス・マーケットで町興し
Lincoln Christmas Market


夜空の下でライトアップされたリンカーン大聖堂のすぐ近くで
クリスマス・マーケットが開かれる

日本人の間では聞き慣れないイングランド中東部リンカーンは、実はクリスマス・マーケットが代名詞となっている街。そもそもつい最近まで、クリスマス・マーケットと言えばドイツを始めとする欧州大陸のものだった。しかし今から数十年も前に、ドイツ西部にある姉妹都市ノイシュタットを視察したリンカーンの地方議員が英国に「輸入」。今ではストール数が250、人口の約2倍となる15万人の来客数を誇る英国最大級の催しを作り上げてしまった。つまりクリスマス・マーケットを使っての町興し。夜空に輝く大聖堂の前に多くのストールが並ぶ姿は圧巻だ。

(写真左)250以上のストールが出店するその規模は英国最大
(写真右)気軽に話に応じてくれるお店の人々との出会いもマーケット散策の楽しみの一つ

Park and Ride Service
車でお出掛けの人は、マーケットから少し離れた駐車場へ行くことを誘導される。そこからシャトル・バスを利用して、マーケットが開かれている市内中心部へと向かう。本サービスを利用するための前売り券は12ポンド。

12月9日(日)まで
リンカーン市内一帯
ロンドンから電車で約2時間
詳細は下記ウェブサイトを参照。
http://lincoln-christmasmarket.co.uk

 

エディンバラ冬にエネルギーを爆発させる街へようこそ
Traditional German Christmas Market

なぜ寒い季節により寒い北方のエディンバラへと向かうのか。その理由は、エディンバラには寒さを吹き飛ばすほどのたくさんの楽しみが待っているからだ。市内にはサンタ宛ての手紙専用の郵便ポストが設置されていて、サンタが一日に2回、手紙の収集にやって来る。さらに街の中心部には本物のトナカイの姿も。本場ドイツのものを再現したクリスマス・マーケットに加えて、週末はファーマーズ・マーケットを含むいくつものストールが並ぶ。そして大晦日にはストリート・パーティーに野外コンサート、花火と盛りだくさんの内容となっている。


凍てつくような寒さの中でも賑わうクリスマス・マーケット。
寒い地域だからこそ味わえる温もりがある

The Lost Elves on Rose Street

エディンバラ市内中心部にあるローズ・ストリートを出発点とし、迷子になったサンタの小人を探しに出掛けるという企画。12月24日までの11:00-17:00に随時参加可能の無料イベント。小さなお子さんと一緒にエディンバラの市内散策を楽しみたいという方はぜひ。

12月24日(月)まで
Mound Precinct, Edinburgh
ロンドンから電車で約4時間半
詳細は下記ウェブサイトを参照。
www.edinburghschristmas.com

● Santa's Postbox
12月9日(日)~24日(月) (サンタの登場は11:00、16:00)
East Princes Street Gardens
● Reindeer in St Andrew Square
12月9日(日)、14日(金)~16日(日)、21日(金)~23日(日)
St Andrew Square
● 大晦日にエディンバラで行われるイベント
www.edinburghshogmanay.com

 

映画監督 西川美和 インタビュー

小説、漫画、テレビ・ドラマなどのヒット作の映画化が主な潮流となりつつある日本の映画業界にあって、オリジナル脚本で勝負をし続ける西川美和監督。独特の作品世界を生み出すこの稀有な才能に、カンヌ、トロント、そしてロンドンなど海外の国際映画祭も注目している。かつての黒澤明や小津安二郎作品のように、邦画がその作品性において再び世界の脚光を浴びる日は来るのか。10月に開催されたロンドン・フィルム・フェスティバルへの参加のために渡英した西川監督に話を伺った。

西川 美和(にしかわ・みわ)
1974年7月8日生まれ、広島県出身。早稲田大学第一文学部卒。大学卒業後、是枝裕和監督の映画「ワンダフルライフ」の製作に参加。2002年に「蛇イチゴ」で監督デビューを果たす。2006年に発表した「ゆれる」がカンヌ国際映画祭に出品。長編第3作となる「ディア・ドクター」は、ブルーリボン監督賞を始めとする映画賞を多数受賞した。小説の執筆も手掛けており、2009年に刊行した「きのうの神さま」は直木賞候補に。ロンドン・フィルム・フェスティバルでの最新作「夢売るふたり(Dreams for Sale)」の上映に合わせて10月に渡英した。
Photo by Shinotsuka Yoko

「海外での上演はいつもハラハラするんです」

監督としては初参加されたロンドン・フィルム・フェスティバル(LFF)についての感想をお聞かせください。

欧米では、つまらないと思うと上映中でも席をお立ちになってしまう方が結構いらっしゃるので、海外での上映ではいつもハラハラするんです。ロンドンの方は最後までじっくり観ていただけるお客さんがほとんどでほっとしました。LFFでは舞台挨拶の機会もあったのですが、観客の皆様はシャイで礼儀正しい方たちが多くて、日本人と共通している部分が少なくないのかなという印象を抱きましたね。

過去に観客としてLLFに参加されたことがあったと伺いましたが、そのころから本映画祭への参加を思い描いていたのでしょうか。

師匠である是枝裕和監督の「誰も知らない」がLFFに出品された際に、たまたま観光でロンドンを訪れていたので、その上映を一人の観客としてというか、ほぼ野次馬のような感じで観ていました(笑)。当時の私は監督デビュー作「蛇イチゴ」を撮り終えたばかりで、かたや「誰も知らない」はカンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を獲得するなどして話題を集めていたので、是枝監督や、同監督と同じように世界各地の国際映画祭に出品している関係者の方々と自分が同じ土壌にいるとは到底思えなかったです。ただ是枝監督の映画がLFFで上演されているのを観たことで「確かな実績を築き、キャリアを積んでいけば、いつかは呼んでいただける映画祭なんだろうな」とは漠然と思いました。だから今回ロンドンにご招待いただいて、「ついにロンドンに呼んでもらった」というちょっとした感慨はありましたね。

この度LFFで上演された「夢売るふたり」の主な舞台として使われている居酒屋のシーンを見て、日本への憧憬を膨らませた英国人もいたのではないかと想像します。

「大衆的で、敷居が高くなく、どこにでもあるお店」という設定で居酒屋というシチュエーションを選びましたし、実際にほとんどの日本人観客にとっては居酒屋とはそういう存在なので、日本での上映であの場面設定について感想をいただくことはあまりないんです。ところがLFFでもトロント国際映画祭でも、あの居酒屋の風景に関しての感想だとか「食べ物がすごくおいしそうだった」と仰る方が結構いらして「へー、そこに反応するんだ(笑)」と意外な思いでした。

私自身は日本の風光明媚な風景や伝統文化を映画のセールス・ポイントにしているつもりはありません。むしろそうした風景や文化の中で暮らしている人々の生活や人生をしっかりと書いていくことができれば、周りの風景はどんなものでもいいとさえ思っているんですけれども。ただそうした人々の生活を描くために綿密な取材を行ったり、取材で集めた材料を映像の中に入れようとすると、自ずと風景のディテールが画面に映り込みますよね。結果的に、海外の観客の皆様には物珍しいとか日本的であると感じられる映像になるのかなあと思っています。

「夢売るふたり」の英題が「Dreams for Sale」に決定するまでの経緯を教えていただけますか。原題の中から「ふたり」が抜け落ちたのはなぜでしょう。

まず「夢売る」という言葉がそもそも本来の日本語としては存在しない言い回しですよね。何となく違和感を覚える表現というか。また同時に「夢見る」とか「夢得る」といった言葉をも潜在的に喚起するような、不思議なニュアンスのタイトルだと自分では認識しているんです。

ただ言語が外国語になった時点でそうしたニュアンスを厳密に再現するのはほぼ不可能です。それならば「夢売るふたり」というタイトルを逐語訳するよりも、そのタイトルが持っていた効果というかインパクトを同じような形で与える表現を英題にしたいと考えました。英語で「~ for sale」という言い回しが頻繁に使われていると思うのですが、本来は「dreams」と合わせては絶対使われない表現ですよね。その辺りのどこか不思議な言葉の組み合わせが醸し出す違和感が、「夢売るふたり」という原題のそれとつながると感じたので、このタイトルを採用することにしました。

「『映画の循環』の流れになりたいと願っています」

西川監督にとって日本国外の観客とはどのような存在ですか。

私自身が外国の映画をたくさん観て育ってきたこともあって、映画というのは字幕や吹き替えさえ付ければ容易に国境を超えて交換できる文化だと信じています。そうやって自分の知らない地域の価値観、歴史、文化を知ることで日々を豊かにしていくことができるというのが映画の素晴らしさだと思っていますので。そうした「映画の循環」とでも呼ぶべき現象を止めることなく、その循環の流れの一つになりたいという願いはずっと持っています。私は知らない国の映画を観たいと常に思っていますし、自分の映画がその国名を聞いたことさえないような国で上演してもらえたらそれほどうれしいことはありません。

映画を製作する上で、日本人だけが観るのであれば必要ないけれども、海外の観客を意識するのであれば必要となる工夫などあるのでしょうか。

日本で映画をヒットさせたいということだけを考えるとなると、国内で知名度のある人を優先してキャスティングすることになると思います。ただそれは実は海外の人にとってはほとんど意味のないことですよね。例えば「夢売るふたり」に、ウェイトリフティングの競技選手という役があります。この役には、知名度のある体格の良いタレントさんにちょっとトレーニングして出てもらえれば、日本国内での展開においてはありがたいという考え方もあるんです。でも「そういうことではないだろう」という思いが自分の中にはあるので。だから、この役については一からオーディションさせていただきました。そうした判断も「映画はグローバルに広がっていくものだから」という考え方から生まれたものなのかもしれません。

世界的にいわゆる単館映画館が減少し、ロンドンにおいても欧州諸国や日本の映画作品を映画館で観られる機会が随分と減ったような印象があります。このような状況において、映画製作者には何が求められていると思いますか。

 「映画製作者には何が求められているのか」というのは今でも日々考え続けていることなので……。ただ映画界において「新しいものを作るんだという意思」よりも「絶対に失敗しないものを作りたいという要請」の方が強くなっているという現状は確かにあると思います。そうした状況とどう戦っていくのかは、現在、映画を作ろうと思っている世界中の作家が共通して抱える悩みなのではないでしょうか。

私の場合は「作りたいものを作らせてくれる人が集まるまでは作らない」という方針を持っているので(笑)。自分が納得できるストーリーを書き上げられるまでは映画を撮り始めちゃいけない。そうした方法をずっと続けられる保証はないけれども、今後もそのスタンスは維持できたらと思っています。

「嘘をどれだけ跳躍させるかが勝負のしどころ」

前作の「ディア・ドクター」では、無医村医療の実態を調べるために泊まり込みの取材なども行っていたと伺いました。そうした綿密な取材活動を行われている一方で、西川監督の作品はそのフィクション性を高く評価されています。ご自身では現実とフィクションのバランスをどのように取ろうと意識されていますか。

私は映画を作る上で「嘘」をすごく大事にしています。もちろん現実の方がずっと過酷で、生々しくて、エキサイティングであるということは十二分に分かっているんですけれども、一方で嘘だけが人間が作れるもの。物語の中で嘘をどれだけ跳躍させることができるかという点が、作り手の勝負のしどころだと思うんですよね。現実世界への取材活動というのは、すればするほど発見が出てきますが、どれだけ取材を重ねても、それは創作物ではなくて単なる取材に過ぎないので。取材をしているとすごく仕事をしている気になってしまうのですが、その気持ちに溺れないように気を付けています。すべての材料がそろったときに、机の上で一人でじっと考えてふっと浮かんでくる「嘘」が一番大事。現実とフィクションの配分というものを計算したことはないですが、6対4でも5.5対4.5でもいいから、嘘の世界の方が分量が多くなっていなければいけないと思っています。

ご自身よりずっと年輩の役者さんや男性スタッフに指示を与えなければならない映画監督という立場を務めることでのご苦労も多いのではないかと察します。

20代で監督デビューを果たしたころは、男性の先輩ばかりを相手に仕事していたので、「穴があったら入りたい」という気持ちをずっと抱えながらやっていました。まあ、今も身の縮むような思いというのは全く変わらないんですけれども。ただチームの皆さんというのはプロの集まりですし、仕事というのは、他人が努力して培ってきた経験や知識をお借りしながら進めていくもの。俳優に対してもスタッフに対しても、相手への敬意というのが大切だと思っています。相手のキャリアと存在に対して常に敬意を払いつつ、一緒に前を向いていくにはどうしたらいいか。それは監督だけが示すことができる、その作品に対する確かなビジョンでしかないと思うのです。私の場合は自分で脚本を書いているので、その作品の本来のあるべき姿や目指すべき形を自分だけが知っているという確信を持つことができます。そこを頼りにしている部分があるので、逆に言うと自分で脚本を書かなくなると寄る辺がなくなってしまうのかもしれません。

世の中には男女両方の性別が存在するのが現実ですし、ありとあらゆる世代が共存しているというのが私たちが生きるこの世界ですよね。そういう環境で色々な意見を交換しながら、ぶつかりながらも助け合って、力を貸して、お互いを思いやるってすごく良い体験だと実感しています。その体験を味わいながら、楽しんでやっているつもりです。

西川美和「夢売るふたり(Dreams for Sale)」

 

俳優・古川 雄輝 インタビュー

ときは江戸時代。偶然が呼び寄せた一人の日本人と一人の英国人の絆を題材に、日英の制作陣がゼロからつくり上げた2009年の合作舞台「ANJINイングリッシュサムライ」が、「家康と按針」と名を変えて来年1月、ロンドンにやって来る。11月初旬、演出を手掛けるロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの芸術監督、グレゴリー・ドーランや英俳優らとロンドンで稽古に励んでいたのは、徳川家康と英国人侍、三浦按針の通訳であるドメニコを演じる古川雄輝。海外生活は長いが英国は初めていう彼が、日英の橋渡し役として輝くべく稽古に勤しむリハーサル・ルームを訪ねた。

古川 雄輝 Yuki Furukawa
1987年12月18日生まれ。東京都出身。7歳からカナダで暮らし、高校入学時に単身、米ニューヨークへ。慶応義塾ニューヨーク学院を経て慶応義塾大学理工学部に進む。2010年、芸能界デビュー。以降、舞台、映画、テレビ・ドラマとジャンルを問わず幅広い活躍をみせる。2013年1月~2月、ロンドンで上演される「家康と按針」において、宣教師ドメニコ役を演じる。


今回に先駆け、8月にも来英されたそうですね。

僕はカナダで育って、ニューヨークの高校に通ったので、アメリカの英語しか話せなかったんです。舞台の時代背景は1600年代なので、登場人物がアメリカ英語を話していたらおかしいということで、イギリス英語の勉強のために来ました。あとは演出のグレッグ(グレゴリー・ドーラン)とお会いして役について話したり。

今回の滞在で、実際に英国人キャストとの稽古が始まったわけですね。日本との違いは感じますか。

日本人キャスト抜きで一通り稽古したんですが、稽古場の雰囲気というのがやはり違いますね。例えば皆で本読みをするときも、日本だったら主役はここ、その後は役の順に座って、というように場所が細かく決まっているんです。でもこちらでは、座りたいところに座ればいいじゃん、みたいな。あとは本読みしながらクッキーやリンゴ、オレンジを食べていたり(笑)。本読みのときに演出家の前で食べ物をばくばく食べるなんて、日本だったらありえない光景なので、そういう意味では自由だな、と思います。演技の面でも、今回は再演になるんですけれども、再演の場合は、前やったときはこうだったからこうしよう、とビデオを観ながら細かく決める演出家の方もいらっしゃると聞きますが、グレッグの場合は、新しい2人だから好きなようにやってみせてくれ、と言って、実際に僕たちがやってみてから考えて、演出してくださいました。

イギリス英語には慣れましたか。

少しは。完全になるまでにはもう少しですね。でもグレッグとも話をしていて、100% 完璧なイギリス英語でなくても大丈夫みたいです。キャラクター的にも、ドメニコは日本人なので、アメリカ英語に聞こえるよりは、日本語英語に聞こえた方がいいということで、とにかくR やL を巻き過ぎてアメリカ人っぽく聞こえないようにしなくては、と思っています。セリフもイギリス英語バージョンをiPhone に入れていつでも聞けるようにしています。

英国でも指折りの名演出家、ドーラン氏との稽古はいかがですか。

まず最初にお会いしたときに、僕の生い立ちについて詳しく話をし、そこから「じゃあ、その経験はドメニコにどう繋がるかな」というように、まず僕とドメニコの共通点を一緒に探して役作りをしていきました。なので、ドメニコという役にすごく自然に入り込んでいけました。ただ少し戸惑うのは、外国の方って「That was great!」とか「Brilliant!」といつも褒めてくれるんです。でも、本当はそうではないのでは?、とも思ってしまいます。マナーとして褒めている、そういう部分があるんじゃないかと(笑)。「今のはグレートだった」って言った後に、役の心情について説明をするんですよ。だからこそより一層、役について常に深く考えていないといけないなと感じます。

日本を代表する俳優、市村正親さんが徳川家康を演じられますが、以前も舞台「エンロン」で共演されたそうですね。

市村さんは色々とアドバイスをしてくださるんです。本来ならば僕の方から「このセリフが分からないので教えてください」と言うべき立場なんですが、市村さんは僕に限らず若い役者さん皆に平等にアドバイスしてくださる。非常にありがたいことだと思います。僕は「エンロン」が初めての大きな舞台だったので、本当に色々教えていただきました。本番中にも舞台裏ですれ違うと、うまくいった日には、良かったよっていう意味で指をGood! ってやってくださるんです。しかも無言で、ちょっと笑って。それを見て、今日はうまくいったんだな、と。市村さんがグーってやってくださるときには、ほかのスタッフさんからも「今日は良かったよ」って言っていただけるんです。そうやって本番が始まってからもたくさんアドバイスをくださって。一つGood! をもらえると、次に市村さんが「そこは良くなった、じゃあここはこうしてみたらどうだ」と言ってくださり。それで次の日に試してみると、また新たな課題を……というように、毎日こちらを気にかけてくださる、そういう方ですね。

今回演じられるドメニコという役は、初演では藤原竜也さんが務められたわけですが、初演はご覧になりましたか。

初演はDVD で観ました。僕には役者を始めたときから海外の作品に携わりたいという思いがあって、「Anjin」という作品があると聞いて、どうしても観てみたくて、役が決まる前に観ていたんです。なので役が決まったと聞いたときにはすごくうれしかったです。ただ、竜也さんの演技を真似しようとしてもできないですし、僕は竜也さんではない。だから竜也さんの真似をするというよりも、今の自分の味を出すというか、自分らしいドメニコをやれるように、と思っています。

デビュー作を含め、数本の舞台に立たれていますが、古川さんにとって舞台とは?

生の反応が分かるというのが良いですね。舞台は役者にとって一番成長できる場所だと僕は思っているんです。映像だと監督とコミュニケーションを取る間もなく、あっという間に撮影が終わってしまう。撮影に行くのも自分が出番のシーンだけですから、ほかのシーンのキャストの方と会わないうちに終わってしまうことも多々あります。だから舞台から始められて良かったなと思うのは、何も分からない状態でこの世界に入って、演出家の方が演技というのはこういうものなんだと細かく教えてくださり、作品全体をキャスト全員で時間をかけて作るところからスタートできたこと。そして今では、自分が成長できる場だからこそ、舞台をやりたい。最低でも年に1本は舞台をやれる役者になりたいと思っています。

最後に読者に向けて一言、お願いします。

日本を舞台にした作品ですが、日本人とロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)のキャストが合同でやるというのはなかなかない機会ですし、グレッグがRSC のトップになって初の日本との共同作品です。あとは僕個人的に、海外でも働きたいという思いがある中、初めて英語で演技をするということで、自分にとっては確実にすごく大事な作品になると思います。僕のことをこの舞台で知っていただくとともに、この舞台は色々なことを感じていただける作品ですので、一人でも多くの方に観に来ていただきたいですね。

「家康と按針」の演出を手掛ける
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー芸術監督

グレゴリー・ドーラン氏に聞く

ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのツアーで日本に滞在していた際、1600年にウィリアム・アダムズという英国人が日本に漂流したという話を聞きました。私は長年、英国でシェイクスピアが活躍していた時代に、世界のその他の国々でどのようなことが起こっていたのかという点に興味を抱いていたので、この話を日英の俳優たちとともに舞台化できないかと思ったのが「Anjin」のきっかけ。両国の脚本家たちと共同で作業を進め、2009年に東京で初演を迎えました。

この物語には、実に魅力的な人物が大勢出てきます。アダムズはもちろんのこと、将軍徳川家康や、豊臣秀頼の母である淀殿。中でも淀殿の気性の激しさは、シェイクスピアの「ヘンリー6世」に出てくる王妃マーガレットを彷彿とさせますね。

日本と英国が共有する歴史を、日英の俳優たちと一緒に探る作業はとても魅力的です。ドメニコを演じる古川雄輝さんは、好奇心旺盛で柔軟に物事を受け入れる姿勢が魅力的な俳優。再演ということで重責だとは思いますが、やり遂げてくれることと信じています。

Anjin: The Shogun and The English Samurai
Sadler's Wells
Rosebery Avenue, London EC1R
2013年1月31日~2月9日
Tel: 0844 412 4300
www.sadlerswells.com/shogun
 

フォトコンテスト2012 受賞者発表!

受賞者発表!フォトコンテンスト2012 英・独・仏ニュースダイジェスト主催

昨年、英・独・仏の3カ国から多数の写真作品が集まった英・独・仏ニュースダイジェスト主催フォトコンテスト。今年は「私の好きなもの / こと」をテーマに、また数多くの個性的な作品が寄せられました。英・独・仏それぞれの国ならではの景色を切り取ったもの、どこの国にも共通する、身近な人や日常の風景を写し撮ったもの ── 作品の数だけある、千差万別の「好きなもの / こと」を、受賞者、審査員のコメントとともにご覧ください。

*写真をクリックすると拡大します

マチュア部門大賞

フランス 「夏のサン・マルタン運河沿い」
受賞者:金子 孝佑さん(27歳)

夏のサン・マルタン運河沿いこの写真は、ある日の昼下がり、散歩の際に撮影しました。僕は出掛けるときにカメラを持ち、あてもなく歩き回るのが好きです。この写真を撮影した日は天気も良く、暖かかったので、たくさんの人たちがパリのサン・マルタン運河沿いに腰掛け、楽しそうに過ごしていました。曲線を描く運河や空、水に映る人々と木々。上下左右の構図が面白い、良い写真が撮れたと思っています。今回は大賞を頂き、とてもうれしいです。これからも、何げなく気ままに、良い写真を撮っていけたらなと思っています。

審査員のコメント
レベルの高い候補作が並ぶ中、この作品は早い段階で良いなと感じたものの一つです。まず、何より構図が素晴らしい。非常によく練られていますね。蛇行する川のライン、水面に反射する木々や建物……。大勢の人々の姿が収められているのに、静けさが漂ってきて、穏やかな雰囲気に満ちた作品になっていると思います。あえて受賞者にアドバイスをするならば、空の部分が少々白飛びしているので、もう少し露出を抑えた方が良かったかもしれませんね。 by Canon Europe


キッズ部門大賞

ドイツ 「金五郎」
受賞者:加藤 トーマス・麗聖(らいぜ)くん(10歳)

雲の絨毯ぼくの作品が選ばれたって聞いたとき、「俺の金五郎がかわいいからや!」って金五郎を抱きしめたよ。いつもママの古いデジカメで、サッカーの試合で優勝したときのメダルとか、部屋に飾っているガンプラとか、自分で作ったおもちゃやロボットとか、好きなものを色々と撮ってるんだけど、この写真を撮ったときは、やっぱり金五郎が一番かわいいな~って思った。金五郎は、ぼくがママのお腹にいるときにママが買った、ぼくの一番好きな宝物だから、いっぱい撮ってるよ。

審査員のコメント
この作品からは、受賞者が今回のテーマである「私の好きなもの / こと」を撮影しているのだということが非常に強く感じられます。被写体のぬいぐるみが、持ち主である撮影者にとても愛されているのだということが伝わってくるのが良いですね。構図的にも、被写体を真ん中に据えるのではなく、片側に寄せているのがユニークですし、かなり被写体に寄りつつも、ブレずにピントもちゃんと合っているのが素晴らしいと思います。 by Canon Europe


マチュア部門入賞

英国 「古本市」
受賞者:安達 真一さん(27歳)

安達 真一さん撮影前回、応募した際には次点だったので、今回は入賞できてうれしく思います。この写真はロンドンのサウス・バンク地区で日曜日に出る古本市を捉えたもので、週末に写真を撮りに出掛ける際には必ず通るようにしています。この日はあくまで普通のロンドナーの姿を撮りに行ったので、本の目線で本を選ぶ人々の写真を撮ってみました。普段は一眼フィルム・カメラを首からぶら下げてロンドン中の「人」を撮影しています。これからも「人」をテーマに、生き生きとした写真を撮っていきたいと思います。

審査員のコメント
入賞、おめでとうございます。この作品は、たくさんの古本が置かれた台と同じ高さのアングルから撮影されていて、本から見た目線で人々を捉えている点が素晴らしいと思います。写真から、人々が各々興味のある本に注意を注いでいる様子が実に良く伝わってきますね。また、カラーではなく、モノクロで撮影されているというのが、新品の本ではなく「古本」をテーマとしている点と良く合致しているな、とうならされました。 by Buckinghamshire Golf Club


マチュア部門入賞

ドイツ 「シャボン玉」
受賞者:高橋 著さん(48歳)

高橋 著さん撮影これは、ニュルンベルクへ旅行した際に撮った写真です。ある日の夕刻、多くの人で賑わう中央広場で、数人の幼い子供たちが自分の体くらい大きなシャボン玉を作っては追いかけて、無邪気に遊んでいました。その姿をファインダー越しに追っていると、自分まで童心に返るようでした。この女の子は、シャボン玉を作ろうと一生懸命に挑戦し、父親の助けも得て、ついに大きなシャボン玉を作ることができたのです。そのときに見せた、うれしさと驚きが入り混じったあどけない表情が印象的でした。

審査員のコメント
入賞、おめでとうございます。画面いっぱいに広がる、七色に輝く大きなシャボン玉に、少し驚きながらも喜ぶ女の子の顔。この子の歓声が聞こえてきそうなショットですね。今にもシャボン玉を触ってしまいそうな右手や、きっと微笑んでいるであろう周りの人々の姿までを想像させる楽しい一枚で、何回観ても飽きません。この女の子がシャボン玉遊びが大好きであることが伝わってきて、今回のテーマ「私の好きなもの / こと」にもぴったりだと思います。 by Steigenberger Frankfurter Hof


マチュア部門入賞

フランス 「ひとときの風」
受賞者:大貫 マチューさん(26歳) 

大貫 マチューさん撮影できるだけ自然に、その場、そのときにしかない大切な瞬間を絵に収めるのが生きがい。この一枚に写っているのは91歳のおじ、オリビエです。彼の姿を写真に収めたいと前から思っていました。今年の夏、カンヌで暖かい光と風に包まれながら読書をしている彼の姿を見て、走ってカメラを取りに行き、気付かれず撮ることができました。彼の人生がこの瞬間に詰まっていると私は思います。毎朝、彼の安らかな姿を見ると嫌なことを忘れて心が落ち着きます。これからも元気でいてくれることを願ってやみません。

審査員のコメント
夏といえばバカンス。そしてバカンスといえば家族とともに過ごす時間が多いものですが、夏の太陽に照らされ、テラスで一人、心ゆくまで読書にふける老人の姿に、南フランスで過ごすもう一つのバカンスのスタイルを知ることができます。日の長い夏の一日、雑音も雑事もない環境でゆったりとした静かなときが流れ、時間を気にせず好きなことに没頭できる彼をうらやましく思います。 by Hanawa


キッズ部門入賞

英国 「雨上がりのバラ」
受賞者:阿部 咲也香さん(5歳) 

阿部 咲也香さん撮影お花の写真を撮ることが大好きで、ロンドンに来てからお散歩をしながら小道やお庭に咲いているお花を撮っています。今回の写真は雨の日が続いた後の晴れ間に、大喜びして外にお散歩に出たときに近所の庭先で撮りました。バラの花びらに雨のしずくがのっていて、お日様でキラキラしてきれいだな~と思ったので、しずくがきれいに撮れるように気をつけました。これからはイギリスのお城に咲いているお花を撮ったり、フラワー・ショーに行ってきれいなお花の写真を撮りたいです。

審査員のコメント
お子さんでも大人でも、風景写真を撮る際には、美しい景色すべてをカメラに収めたくて、つい引き気味に撮って焦点がボケてしまい、出来上がった作品を観るとあのときの風景とは似ても似つかない、とがっかりしてしまうことが多いのではないでしょうか。この作品は一輪のバラのみを切り出すように映し出すことで、花の持つ美しさを十二分に引き出しています。花びらに光る雨の粒が、花、そして作品全体に生命感を与えているようで素敵ですね。 by JP Books


キッズ部門入賞

ドイツ 「帰り道」
受賞者:吉岡 二郎くん(12歳) 

吉岡 二郎くん撮影父と一緒に自宅から約9キロ離れた湖に自転車で行くのが、ぼくの休日の楽しみ。行きは早く遊びたいので超特急で漕ぎますが、帰り道は違います。夕日になる前の眩しい太陽に照らされたひまわり畑や麦畑、小川などは「どれも絵になるな~」と思いつつ、少し進んでは止まり、また少し進んでは写真を撮る。そんなときの、父の自転車と太陽を撮った写真です。絵になるシーンを逃さないよう、いつも首からカメラをぶら下げています。入賞はとてもうれしく、もっと色々な写真を撮ろうと思います。

審査員のコメント
観ていると、とても心が和む美しい写真ですね。太陽、青空、緑の森や畑、自転車と、写真に収められたそれぞれの要素の調和が大変良く取れていると思います。自転車から延びる影も、なかなか面白い形をしていますね。ここから、写真が撮られた時間のみならず、その瞬間の気温や空気の匂いまでが感じ取れるようです。きっと楽しい小旅行だったんだろうなと想像させてくれる、心地良い一枚です。 by Feiler


キッズ部門入賞

フランス 「ブドウ畑」
受賞者:ゆうさん(11歳)

ゆうさん撮影フランスには、ブドウ畑がたくさんありますが、そのブドウは食べるためではなく、ワインを作るためのものらしいです。私が見つけたブドウも、すごくおいしそうなのに、やっぱりワイン用で、そのまま食べたほうがおいしそうなのになぁ、と思いました。私は自分のカメラを持っていないので、普段はお母さんのiPhoneのカメラで写真を撮っています。家でも外でも、面白いものを見つけるとすぐに撮れるので、とても楽しいです。

審査員のコメント
季節を感じさせるとともに、遠近感を強調した一枚。右上にのぞく真っ青な空と光の具合が収穫の秋を思わせ、また、ブドウという対象物のみずみずしさがよく伝わってきます。ワインの産地で実った、まるまると大きい粒のブドウ。手を伸ばしたら今にもつかめそうな臨場感溢れる写真に、「撮影者は本当にブドウが好きなんだな」と感じられ、観る側もこのブドウに愛着を覚えずにはいられない、そんな素敵な写真です。 by Paris Miki


[審査員総評]

コンテストで受賞作品を選ぶというのはいつも困難を伴います。今回もクオリティーの高い候補作が多く、選考には時間がかかりました。今年度の特徴の一つとしては、白黒写真が多く見られましたね。白黒写真を撮る上で大切なのは、コントラストをはっきりとつけること。さもないとグレーがかった、暗い写真になってしまう危険性があります。何を写真に入れて、何を入れないのかを考えつつ構図を決め、観る者の視点を導き、写真にストーリーを語らせることが大切です。ポートレート写真には子供の表情がよく捉えられているものなど、目を見張る作品もありましたが、フォーカスが被写体の目に合っていないなどの理由で残念ながら受賞には至りませんでした。ポートレートを撮る際には被写体の「目」が重要となることを念頭に置くと良いでしょう。また、風景を撮るときには、地面と空の割合をどうするかがポイント。もし空が印象的ならば上部2/3を空が占めるように、といったようにメリハリを付けた構図にしてみてください。
by Canon Europe

[ダイジェストからのコメント]

今回は、英・独・仏ニュースダイジェスト主催フォトコンテスト 2012に数多くのご応募をいただき、誠にありがとうございました。昨年、大好評をいただいたこのコンテストも第2回目を迎え、昨年以上にバラエティーに富んだ作品の数々が集まりました。  

前回同様、当選までの流れといたしましては、まずはニュースダイジェスト社内で一次選考を実施。各国各部門10点の作品を選んだ後に、審査員による最終選考が行われ、入賞作品、及び大賞作品が決定しました。  

今回は「私の好きなもの / こと」がテーマだったこともあり、撮影者の皆様の個性が感じられる作品が多かったように思います。やはり家族、動物、風景の作品が数多くみられましたが、広大な光景を白黒で表現することにより寂寥感を強めたり、人物の周りの風景をあえて抽象的にすることでまるで映画のひとコマのようなインパクトをもたらしたりと、一捻りが加わったものが目に付きました。キッズ部門では、ただ写真を撮るのではなく、どんな瞬間を撮りたいのかという撮影者の意図が明確に見えるものがあり、驚かされました。  

[受賞者と賞品]

マチュア部門
大賞 金子孝佑さん Canon Europeより
デジタル 一眼レフカメラ EOS 650D
英国入賞 安達真一さん Buckinghamshire Golf Clubより
2ボールプレー券 (有効期限2013年3月31日)
ドイツ入賞 高橋著さん Steigenberger Frankfurter Hof より
「ホフガルテン」のブランチ券4名様分
フランス入賞 大貫マチューさん レストランHanawaより
献立コース、 ペアお食事券(飲み物込み)
キッズ部門
大賞 加藤トーマス・麗聖くん Canon Europeより
コンパクトデジタルカメラ IXUS 240
英国入賞 阿部咲也香さん JP Books より
バウチャー50ポンド相当
ドイツ入賞 吉岡二郎くん Feilerより
シュニール刺繍の子供用タオル
フランス入賞 ゆうさん Paris Mikiより
Ray Ban Juniorのサングラス

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次のページでは、今回、惜しくも受賞を逃したものの、
第一次選考において高い支持を得た次点作品をご紹介。
次点作品紹介

 

フォトコンテスト2012 受賞者発表! - フォトギャラリー

受賞者発表!フォトコンテンスト2012 英・独・仏ニュースダイジェスト主催

昨年、英・独・仏の3カ国から多数の写真作品が集まった英・独・仏ニュースダイジェスト主催フォトコンテスト。今年は「私の好きなもの / こと」をテーマに、また数多くの個性的な作品が寄せられました。英・独・仏それぞれの国ならではの景色を切り取ったもの、どこの国にも共通する、身近な人や日常の風景を写し撮ったもの ── 作品の数だけある、千差万別の「好きなもの / こと」を、受賞者、審査員のコメントとともにご覧ください。

*写真をクリックすると拡大します

フォトコンテスト2012

今回、惜しくも受賞を逃したものの、第一次選考において高い支持を得た次点作品をご紹介。

英国 英国の次点作品

英国 ドイツの次点作品

英国 フランスの次点作品


受賞作品をまとめてもう一度




フォトコンテスト受賞者の言葉、審査員総評などはこちら

 

写真家・森山大道氏 インタビュー

年間約500万人が訪れるという世界最大級の現代美術館であるロンドンのテート・モダンにて、日本の写真家・森山大道氏の作品を集めた特別展が開催されている。「アラーキー」こと荒木経惟氏などとともに日本の写真文化を長きにわたって築いてきた同氏がとりわけこだわりを持つのが、街中で早撮りした、いわゆる「スナップ写真」。構図を細かく決めるのに最適なスタジオや、極限的な場面を捉えることができる戦場などでの撮影に比べると、プロとアマチュアの差が出にくいであろうスナップ写真に森山氏はなぜこだわるのか。同展のオープンに合わせて渡英した同氏に話を伺った。

森山 大道(もりやま・だいどう)

1938年10月10日生まれ。大阪府出身。60年代に写真同人誌「provoke」に参加。その後「アサヒカメラ」の表紙を担当する。日本写真批評家協会新人賞、日本写真協会年度賞、ドイツ写真家協会賞などを受賞。東京工芸大学客員教授、京都造形芸術大学客員教授。「アレ・ブレ・ボケ」と形容される独特の作風で世界的な注目を集める。現在、森山氏が多大な影響を受けたという米写真家ウィリアム・クライン氏の作品と合わせた同氏の作品の展示会がロンドンのテート・モダンで開催中。

www.moriyamadaido.com

William Klein+Daido Moriyama
「William Klein+Daido Moriyama」展の入り口

フィルム・カメラの時代から写真家として活動されてきた森山氏にとって、デジタル・カメラの登場はどのような意味を持っていますか。

僕は今、フィルムとデジタルの両方を使って撮影しています。デジタル写真は、やはり枚数を多く撮ることができるというのが何よりの魅力ですね。特に僕の場合は、ストリートでスナップ写真を撮るというスタイルをずっと続けてきましたから、撮影する枚数がほかの写真家よりも自ずと多くなってしまうんです。デジタル・カメラが登場する以前からもともとフィルムでもいっぱい撮る方なので、自分にとって、デジタル・カメラの「多く撮ることができる」という特徴は大きな意味合いを持っています。

デジタル・カメラの普及によって大量に写真撮影するのが容易になったことによって、一枚の写真の価値が減ってしまったとは思いませんか。

そう仰る気持ちはよく分かります。ただ僕がこれまで撮影してきた路上のスナップ写真というものは、とにかく圧倒的に量を撮らないと意味がないんですよ。僕のスナップ写真に対する考え方の一つとして、「量のない質はない」というのがあります。それが僕のテーゼなんです。量を撮ることによって初めて質が確保できるというのも一つの真理だと思います。

ただ大量に写真を撮影したとしても、結局、作品として発表できるほどの良質のものは限られた枚数ということになりますよね。

その質問にとてもシンプルに答えるならば、撮ったものはすべてOKなんですよね。少なくともストリートで撮影したスナップ写真について言えば、これが良くてこれが良くないというのはないと思います。本当はできれば撮影したもの全部を展示したい。でも実際には展示スペースが限られているからそれは無理。だから仕方なく、いくつかを選んでいるということなんですけれども。

William Klein+Daido Moriyama
森山氏の2011年の作品「東京」
Daido Moriyama, TOKYO, 2011
Courtesy Daido Moriyama Photo Foundation © Daido Moriyama

William Klein+Daido Moriyama
「William Klein+Daido Moriyama」の展示室

森山氏はストリートでスナップ写真を撮影する際に、ファインダーを覗くことすらしない場合があるとのことですが、その際は直感だけを頼りとしているということなのでしょうか。

街中でカメラを手にしていると、確かに何となく一定の方向に「何かがある」と感じることがあります。だから、その方向にカメラを向けてシャッターを切る。もしかすると、そうした行動を「直感を頼りに行動する」と表現するのかもしれませんね。

ストリートでスナップ写真を撮影するスタイルは、「ヒッピーの父」と呼ばれる米作家ジャック・ケルアックの小説「路上(On the Road)」に多大な影響を受けていると聞きました。ご自身では具体的にどのような影響を受けたと思いますか。

僕の作品すべてがケルアックの影響を受けたわけではないので、その影響という観点のみから自分の活動を語ることはできません。ただ若いころにケルアックの世界を眺めるスタンスみたいものには大変に共感できたものですから。そして、若いときに感動を受けたものって、後の人生においても、たとえそれほど意識せずとも、半ば無意識にその影響が出てきてしまいますよね。それこそ直感というか、自分のベースとなりますから。一瞬のひらめきの中に、それまでの人生の中で積み重ねてきたものの影響が色々と出てくるんだと思います。

William Klein+Daido Moriyama
森山氏の代表作「三沢の犬」
Daido Moriyama, Misawa, 1971 © Daido Moriyamaa

William Klein+Daido Moriyama
展示会のオープンに合わせて、テート・モダンを訪れた森山大道氏(写真中央)

森山氏のようなプロの写真家に限らず、私たちのような一般人も、日常生活の中でデジタル・カメラを使ってスナップ写真を撮る機会は非常に多いと思います。写真技術に乏しい者が、美しい風景を美しいと感じたままに、尊敬している人を自分が尊敬しているということが分かるように撮影するには、どのようなことを心掛ければいいのでしょうか。

一枚の写真を撮るという行為には、やはり気持ちと欲が入り込みますよね。特にスナップ写真というのは、自分が持っている欲望を外界にぶつける、言わばショートさせる行為であるわけですから。そうであるとすれば、尊敬している人を撮るときには、撮影者が尊敬している感じが写真の中に映り込みますよ。あとはたくさん量を撮ることですね。まあ写真家として活動しているわけではない人に「量を撮れ」と言ったところで、その人たちにはほかにやらなくてはならない仕事や生活があるので無理でしょうけれども。もし量を撮れないのだとしたら、やはり心を込めることでしょうかね。それで、もっと写真を撮りたいという人はとにかく量を撮る。量を撮ることによって分かることっていっぱいあるんですよ。決して無駄にはならない。

気持ちやメッセージを込めるという意味で言えば、社会的なメッセージが込められた写真作品についてはどのようにお考えですか。

社会的なメッセージって、あんまりそれを表に出そうとすると、説明的になり過ぎて作品自体からリアリティーが失われてしまうんですよね。政治性とか社会性というのは、自分たちの日常の中に含まれているものでしょう。だからその日常そのものを撮ることによって、たとえストレートではなくても、作品がどこからかメッセージを発するというのが写真作品のあり方なのではないかと思います。

「William Klein + Daido Moriyama」に対する英各紙のレビュー

彼の探究心と性格は野良犬のよう - 「インディペンデント」紙

森山氏が撮る写真の多くは、痛ましいほどにはかなく、陰気で、不安定でさえある。彼が撮影する都市は、遠く離れたどこかであると感じさせる。そしてカメラのレンズには隙がない。彼の探究心と性格は、1971年に彼自身がカメラに捉えた野良犬を彷彿とさせる。

夢のような展示会 - 「イブニング・スタンダード」紙

あまりに多く使われ過ぎている感のある「大ヒット」という言葉だが、2人の偉大な写真家の生涯にわたる作品を集めたこの展示会には「大ヒット」という言葉がぴったりと当てはまる。その2人とは、ウィリアム・クライン氏と森山大道氏だ。まるで夢のようなこの展示会を去るとき、頭には決して消えることのない記憶が埋め込まれるであろう。

ゴールデン街を記録した写真家 - 「デーリー・テレグラフ」紙

近年では観光名所の一つとなっている新宿のゴールデン街だが、私が手にした旅行ガイドブックには、部外者扱いされるかもしくは金を巻き上げられる可能性があるからこの地区を通るのは避けるようにと記されている。しかし、今日は森山大道氏と一緒だ。森山氏は、60~70年代にかけて、この地区の生活を記録した写真家である。森山氏とゴールデン街に来るのは、フランス人画家のトゥルーズ=ロートレックとムーラン・ルージュを訪れるようなものだ。

興奮は展示場を去った後も続く - 「フィナンシャル・タイムズ」紙

森山大道氏は移動中の車の中から写真撮影を行い、街中で目にしたありとあらゆるものを驚くべき反射神経で撮影する。彼ほど過激な写真家でなければ、こうして撮影したもののほとんどを破棄していたであろう。だが森山氏は自分の反応を信じて、その反応によって撮影した写真を保存することにした。彼の写真効果の中には、ボケや極端な構図、そしてアレといったものが含まれる。しかし、それらの写真からは醜悪さが微塵も感じられない。これは非常に素晴らしい展示会だ。展示場の中を歩き回るだけで興奮するし、その興奮は展示場を去った後もずっと続く。

彼はすべてを写真に撮ろうとする - 「ガーディアン」紙

森山氏のヴィジョンはあらゆる意味においてすべて暗い。そして、彼はたとえどれだけ平凡なものでも、使い捨て用品であっても、とにかくすべてを写真に撮ろうとしているように見える。彼の写真には魅了される者と同時に当惑する者がいるだろう。だがそれは、本展示会におけるもう一人の写真家であるウィリアム・クライン氏のエネルギーに満ちたヴィジョンの延長上にある暗さとして意味を成しているのである。

William Klein+Daido Moriyama

2013年1月20日(日)まで
£12.70
10:00–18:00(金・土は22:00まで)

Tate Modern
Bankside London SE1 9TG
Tel: 020 7887 8888
Southwark/London Bridge/Mansion House駅
www.tate.org.uk
 

観て聴いて味わって楽しむ 劇場併設レストラン

シェイクスピアが活躍した16世紀に花開いたという英国の劇場文化。 その伝統は現在も脈々と息づき、人々の週末スケジュールに舞台やコンサートの観賞予定が入っているというのもよくあることだ。
そういった習慣の下、観賞前後の食事も、特別な夜を楽しむためのエンターテインメントの一環として捉えられている。
劇場にももちろんレストランやバーが併設され、観客が気持ち良く観賞できるよう趣向を凝らした空間作りがなされているようだ。
今回、取材したのは、そんな劇場併設レストラン。
観て聴いて味わって堪能する、とっておきの夜をどうぞ。

開演前はほぼ満席! 人気のシアター・ダイニング
Café Bar @ The Royal Court Theatre

Café Bar @ The Royal Court Theatre新進気鋭の脚本家による新作を世に送り出すために創設されたロイヤル・コート劇場。地下からさらに凹んだオーケストラ・ピットのようなカフェ・バーは、開演前の時間帯は観劇客らでぎっしりと埋まる人気で、「ロイヤル・コートで芝居を観るなら食事もここで!」という常連も多いという。メニューは英国料理を中心に、上演作品の客層に合わせて入れ替わる。定番の「スモークド・フィッシュ・ボード」は、日替わりの鮮魚2種が盛られ、2人でシェアできるほどのボリュームながら7.50ポンドとリーズナブル。といってクオリティーに妥協があるわけではなく、サバのスモークは脂のりが程よく前菜にぴったり。サラダに入っている赤と白のコントラストが鮮やかなラディッシュは、まるで日本のカブのような甘みが感じられ、できるかぎり英国産の食材を、というポリシーにも納得の味だ。毎週月曜日には鑑賞券が10ポンドで限定販売されるので、観劇と合わせて訪れたい。

写真下)Smoked Fish Board £7.50, San Marco £7.25

Café Bar @ The Royal Court Theatre
店名 Café Bar @ The Royal Court Theatre
住所 Sloane Square, London SW1W 8AS
TEL 020 7565 5058
最寄り駅 Sloane Square駅より徒歩1分
オープン 月~土 12:00-深夜
(食事は20:00 まで)
Website www.royalcourttheatre.com

演劇界の「今」を感じる刺激的なレストラン
The Cut Bar @ Young Vic

The Cut Bar @ Young Vic若い俳優や監督に実験的な発表の場を与えるため、1970年代にオープンした劇場。力のある若い才能が見られるだけに、目の肥えた演劇ファンが集う。初めて訪れたなら、客席から手が届きそうな距離に立つ俳優たちに戸惑うかもしれないが、気が付けば巻き込まれるように夢中になってしまうだろう。2フロアからなるバー&レストランは、吹き抜けの開放的な空間が魅力。朝食から、しっかり食べたいディナーまで、幅広いチョイスが用意されている。中でもお勧めは、「ロックフェラー・バーガー」。肉厚なパテに加えて、ベーコン、チーズ、ソテーしたほうれん草、そこにオイスターまで詰まった、まさに米NY のロックフェラー・ビルを髣髴とさせる巨大なバーガーだ。クリーミーなソースとほうれん草の甘みが肉のうまみを引き立てる、類い稀な味をぜひ試してみたい。開演前に注文をしておけば、幕間ぴったりのタイミングでテーブルとドリンクが用意されるサービスも。

写真下)Rockefeller Organic Beef Burger £9.50, Grilled Portobello Mushroom & Jura Cheese £7.25, Free Range Chicken, Bacon and Mayo Wraps £4, Nachos £3.75

The Cut Bar @ Young Vic
店名 The Cut Bar @ Young Vic
住所 66 The Cut, London SE1 8LZ
TEL 020 7928 4400
最寄り駅 Southwark 駅より徒歩3分
オープン 月~金 9:00-11:00/12:00-23:00 
土 10:00-11:00/12:00-23:00 日休
Website www.thecutbar.com

旧チョコレート工場でいただくモダン・ブリティッシュ
Menier Chocolate Factory Restaurant

Menier Chocolate Factory Restaurant1870年に建てられたフレンチ・チョコレートの工場が、レンガの壁や鉄の柱などインダストリアルなパーツを残したまま、劇場に変身。客席数180と小規模ながら、数々の賞を受賞した話題の作品が多く、ここで成功を収めたミュージカルは、ウェストエンドの大きな劇場で上演されることもあるという。ミュージカルのポスターが壁を飾る店内では、旬の食材を使ったモダン・ブリティッシュ・フードが楽しめる。夏には口当たりのさわやかな冷製ガスパッチョ、秋口には体をぽかぽか温めてくれる季節の野菜を使ったスープが人気だ。もちろん肉や魚のメイン料理も豊富。まろやかな子牛のレバー・ステーキにたっぷりのマッシュポテト、ジューシーなポーク・ベリーといったボリューミーな料理が食欲をそそる。満腹になっても、看板メニューの「メニエ・チョコレート・ブラウニー」は断然別腹。信じられないほど濃厚な深い味わいは、やみつきになるおいしさ。

写真下)Pan Fried Calf's Liver £16, Chicken Cordon Bleu Stuffed with Parma Ham & Brie, with Creamy Mash Potatoes & Buttered Spinach £15

Menier Chocolate Factory Restaurant
店名 Menier Chocolate Factory Restaurant
住所 53 Southwark Street, London SE1 1RU
TEL 020 7234 9610
最寄り駅 London Bridge駅より徒歩10分
オープン 火~土 12:00-15:00/17:30-23:00
日 12:00-15:00 月休
Website menierchocolatefactory.com

世界の味を楽しめる、上品なタパス・スタイル
Barbican Lounge @ Barbican Centre

Barbican Lounge @ Barbican Centreブルータリズムと呼ばれる、冷たい印象の打ちっぱなしコンクリート建築が賛否両論に語られることもある文化施設バービカン。とはいえ、コンサート・ホール、劇場、映画館、ギャラリーを備えたこの施設は、超一流のエンターテインメントを幅広く楽しめる場所として人気が高い。2階(レベル1)に位置するレストラン「バービカン・ラウンジ」は、こっくりとした深いブルーに赤が際立つミッド・センチュリー・モダン風のインテリア。「色々な味を試してみたい」という声に応えた、タパスのような小皿料理が並ぶ。完璧な固さに仕上げたアスパラガスと、7種のトマトが彩り良く盛り付けられたサラダ、スロー・クックでたっぷりとうまみを閉じ込めたオッソブッコ(仔牛のシチュー)のニョッキなど、想像力に富んだ美しい料理の数々は、まるでアート作品のよう。毎月季節の味が加わるメニューから、好きな6皿を選べるセット(27ポンド)もお勧めだ。

写真下)Truffe & Osso Bucco Gnocchi £8.50, Pan Fried Polenta Chips £4.50
Rosary Goat's Cheese & Asparagus £6

Barbican Lounge @ Barbican Centre
店名 Barbican Lounge @ Barbican Centre
住所 Silk Street, London EC2Y 8DS
TEL 020 7382 6180
最寄り駅 Barbican駅より徒歩5分
オープン 月~土 12:00-20:30
日 12:00-19:30
Website www.barbican.org.uk

ワインとともにステージを楽しむ
St. James Theatre Studio Bar

St. James Theatre Studio Bar今年9月、バッキンガム宮殿のほど近くに小劇場がオープンした。312席のシアターとレストラン、そして2つのバーを備えた建物内には往年のスターたちの白黒写真が飾られ、歴史や伝統を重んじることの多い英国の劇場とは一味違った、モダンな雰囲気が漂っている。「臨場感のあるステージをリラックスして楽しんで」と設けられた「スタジオ・バー」は、ショーが開催される日のみオープン。木曜はコメディー、金曜はジャズなど、週末にかけて様々なショーが催されており、厳選されたワインを嗜みながら、目と鼻の先にあるステージで繰り広げられるショーを鑑賞できる。ミニ・バーガーやサラダなどのスナックが3.50ポンドから用意されているほか、ワインもボトルで16ポンドからと比較的リーズナブル。入店に際しショーのチケット購入が必須となるが、チケットは10ポンドからと、こちらも手頃だ。カジュアルに、でも本格的なショーを堪能できる穴場スポットになりそう。

写真下)Bar Snack £3.50~, Mas de la Source £5.95

St. James Theatre Studio Bar
店名 St. James Theatre Studio Bar
住所 12 Palace Street, London SW1E 5JA
TEL 0844 264 2140
最寄り駅 Victoria駅より徒歩5分
オープン 木~日 マチネの前後 / 18:00-深夜
Website www.stjamestheatre.co.uk

空高くまで突き抜けるような開放感を
SKYLON @ Royal Festival Hall

SKYLON @ Royal Festival Hallクラシック音楽の殿堂、ロイヤル・フェスティバル・ホールの2階に位置するのがこちら。テムズ河を臨むガラス張りで開放感に満ちた店内は、コース・メニューのみを提供するフォーマルなレストラン、カジュアルなグリル、バーの3つに分かれている。数々のミシュラン・シェフを育てたピエール・コフマンの下で修行したフィンランド出身のヘレナ・プオラッカさんが腕を振るっており、フレンチに北欧の要素が加わった料理が並ぶ。店内中央に堂々とそびえ立ち、「ロンドンでも指折りの充実したメニュー」とマネージャーが胸を張るバーには仕事帰りに立ち寄る客も多いという。中でもオリジナル・カクテル「ミスター・グレイ」が、偶然にも現在大人気の小説「フィフティー・シェーズ・オブ・グレイ」の登場人物を彷彿させるネーミングとあって、密かなブームなのだとか。刻一刻と移り変わるテムズ河の景色を愛でながら、しっとりとしたひとときを過ごしてみては。

写真下)Salmon Gravadlax(コースの一部)
Two Course Lunch £24.50 / Three Course Lunch £28.50
Two Course Dinner £40 / Three Couse Dinner £45

SKYLON @ Royal Festival Hall
店名 SKYLON @ Royal Festival Hall
住所 Belvedere Road, London SE1 8XX
TEL 020 7654 7800
最寄り駅 Waterloo駅より徒歩3分
オープン Restaurant 月~土 12:00-14:30 / 17:30-22:30 日 12:00-16:00
Grill 月~土 12:00-23:00 日 12:00-22:30
Bar 月~土 12:00-翌1:00 日 12:00-22:30
Website www.skylon-restaurant.co.uk

観て食べて、五感で楽しむ特別な空間
The Yard Theatre

The Yard Theatreガレージや駐車スペースの並ぶ閑散とした線路脇エリアの一角に、車の整備士とは明らかに異なる、おしゃれな人々が出入りする建物がある。パリで演劇を学んだ芸術監督ジェイ・ミラー氏が、「パリにある自由な芝居小屋をロンドンにも」と今年の4月にオープンした小劇場だ。倉庫を改造したという劇場に併設されたバー&キッチンには、廃材を利用したテーブル席にブランケットが敷かれ、アットホームな雰囲気。劇場内でもほかの劇場や交通機関で使われていた古い椅子が再利用され、手作り感があふれている。スタッフも芝居好きのボランティアが多く、何かわくわくとした期待と意欲を感じさせる場所だ。レストランのメニューは、芝居に合わせてシェフごと交代するというから興味深い。シェフは脚本を読み込むと、例えば「交錯する人々」というテーマなら、手を伸ばしてシェアできる料理を中心にメニューを組み立てる。一つのテーマを五感でたっぷり楽しむ、特別な夜が過ごせそうだ。

写真下)Wild Mushroom on Rye Bread Toast £4
A Lightly Spiced Casserole of Tender Pork Belly and Beans & Peas £4

The Yard Theatre
店名 The Yard Theatre
住所 2A, Queen’s Yard, London E9 5EN
TEL なし
最寄り駅 Hackney Wick駅より徒歩3分
オープン 火~土 18:00-21:30
日 15:00-20:00 月休
Website www.the-yard.co.uk

取り壊し予定の倉庫を再利用
CLF Art Cafe

CLF Art Cafeロンドン南東部ペッカム・ライ駅前の、活気ある商店街の片隅にあるゲートをくぐり薄暗い小道を抜けると、グラフィティ・アートが施された廃校のような建物が現れる。都市開発のために取り壊しの危機にあった倉庫をアート施設として再生し、オープンしたのだそうだ。3フロアに屋上も加えた広々としたスペースでは、芝居、コンテンポラリー・アートなどの催しが定期的に行われており、週末には音楽イベントも目白押しだ。バーではカリビアン、アフリカンを中心とした軽食が用意されているが、現在のところのメインはドリンク。ラムとジンがベースの一押しオリジナル・カクテル「エルダー・ブッシー」は、ふわっと軽いライムのさわやかな香りとラムのまろやかさのバランスが絶妙。今年でオープン5周年。「もっと色々なイベントに挑戦したいし、フードも充実させていくよ」というマネージャーでDJ のミッキーさんの弁は、エキサイティングな発展を予感させる。

写真右)Elder Bussey £6.50, Red Stripe £3.50
写真下)Sausage Roll £2.50, Spinach and Chickpea Pastry £2.50

CLF Art Cafe
店名 CLF Art Cafe
住所 133 Rye Lane, London SE15 4ST
TEL 020 7732 5275
最寄り駅 Peckham Rye駅より徒歩1分
オープン 月~木 17:00-深夜 金 17:00-翌4:00
土 17:00-翌6:00 日休
Website www.clfartcafe.org

取材: Sayaka Hirakawa ②〜④⑦ / Tora Chestnut ①⑤⑥⑧


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布袋寅泰 インタビュー

中学生のころ、群馬のレコード・ショップでUKロックの
妖しい臭いを嗅いだ瞬間からずっと、
彼の視線はロンドンに向けられていた――。
インタビュー中に披露したエピソードの端々から
零れ落ちるように出てくる
英国人アーティストの名前や曲名。
英国での滞在経験が決して少なくないことを窺わせる、
英文化についての豊富な話題と落ち着いた語り口。
そして、歴史的な建造物と緑に彩られた
ロンドンの風景に溶け込んでしまう独特の佇まい。
この人は、来るべきしてこの街に来たのだろう。
50歳を迎えた今年に英国で新たな挑戦を開始した
ギタリストの布袋寅泰氏に、ロンドン市内のホテルで話を聞いた。

The interview was taken at Pearl Restaurant and Bar,
Chancery Court Hotel, London.

 
布袋寅泰(ほてい・ともやす)
1962年2月1日生まれ。群馬県出身。1981年にロック・バンド「BOØWY」のギタリストとしてデビュー。1988年の同バンド解散後はソロ活動を本格化。クエンティン・タランティーノ監督の映画「キル・ビル」のメイン・テーマとなった「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」は、英国のiTunes Store の音楽部門で1位を獲得したほか、欧州サッカー連盟の入場テーマに使用されるなどして世界的なヒット曲に。2012年8月より、家族とともにロンドンに移住した。
www.hotei.com

「イギリスの妖しい香りが群馬の片田舎まで風として届いてきていた」

随分と昔からイギリスのロックを聴き込んでいたそうですね。

僕の少年時代は、日本にバンドはまだ数えるほどしか存在していなくて、ロックと言えば「外国のもの」だったから。そして外国の中でも、ビートルズとローリング・ストーンズがいるイギリスはとりわけロック発祥の地というイメージがあったな。アメリカからはエルビス・プレスリーの音楽なんかが入ってきていたけれども、ファッション、ファンタジー、アートといったものを内包したロックンロールを伝えてきたのはやはりイギリス、しかもロンドンだった。

僕は群馬の生まれなんだけれども、当時はインターネットもビデオもなくて、情報は本当に限られていて。だからイギリスのロックを聴きたいと思えば、レッド・ツェッペリンやビートルズのLPが並べられた街のレコード屋さんに出掛けた。70年代後半のあのころは、僕が好きだったT-REXのマーク・ボランが亡くなるちょっと前ぐらいで、つまりはグラム・ロック全盛期。イギリスの妖しい香りが、群馬の片田舎までレコード・ショップを通じて風として届いてきていた。

初めて買ったロックのレコードは何だったか覚えていますか。

エマーソン・レイク&パーマーの「恐怖の頭脳改革(Brain Salad Surgery)」っていうアルバム。いわゆるプログレッシブ・ロックで、あんまり歌が入っていない、クラシックとロックが融合したようなちょっと難解な音楽だった。僕は中高一貫校に通っていたのだけれど、生徒会長をやっていた3年上の先輩がロック・マニアで、その先輩と仲良くさせてもらっていたこともあって、中学のころからロキシー・ミュージックとか少しマニアックなイギリスのロックに触れていてね。中学・高校のころって、背伸びしたいじゃん。ロックには、優等生が入っていけなさそうな、なんかやばい感じがあるよね。アドベンチャー感覚っていうかさ。ロックを聴く度に少しずつ大人になっていくような気がしていた。

それからはもうロックにどっぷり。先輩と文化祭に向けてバンドを組んで、デヴィッド・ボウイのカバーとかやっていた。今思えば、あのころの曲名やバンド名から覚えた英単語って随分あるなあ。「Saturday」のつづりは、ベイ・シティー・ローラーズの「サタデー・ナイト」の歌詞にある「S、A、T、U、R、D、A、Y」で覚えていたりとか。外国語だから余計に、英語の言葉から色々と勝手なイメージを連想していたのかもしれない。そうして毎日を過ごしていくうちに、もう14歳、15歳のころから漠然とプロのギタリストになりたいと思い、ロックの本場であるロンドンに行くってことを夢見るようになっていた。

「ギターに乗って世界中を飛び回るというのが僕の夢だったから」

初めてロンドンを訪れたのはいつですか。

BOØWYのレコーディングでベルリンに行って、バンドのメンバーで「せっかくここまで来たんだから」って言って、その帰りにロンドンに立ち寄ったのが初めて。「Marquee Club」っていうライブ・ハウスで、たかだか100人にも満たない感じだったけどそこでライブをやって、空き時間にパンクの聖地であるキングス・ロードに、そして革ジャンを買うためにカムデン・マーケットへ出掛けた。といってもまだお金がない時代だったから、当時のプロデューサーから50ポンドを借りてね。そのお金で、脱いだらその形のまま地面に立たせることができるようなカチカチの革ジャンを買ったなあ。

初めてロンドンに来て、実際に呼吸してこの街の匂いを嗅いで、すっごい、すっごいうれしかったね。飛行機やロケットに乗るみたいに、ギターに乗って世界中を飛び回るというのが僕の少年のころの夢だったから。その夢がちょっと実現したような気がしたんだ。

ソロ活動開始後初めてのレコーディングをロンドンで行ったと聞きました。

BOØWYを解散した後もその熱のまだ冷めやらぬ東京にとどまるより、自分の大好きなロンドンで新たな人生のスタートを切ろうという気持ちで、アビー・ロード・スタジオで初のソロ・アルバムとなる「GUITARHYTHM」のレコーディングをすることにした。アルバム完成後も、ロンドンでフラットを借りて東京との間を行ったり来たり。まあほとんどすべてレコーディング絡みだったけれどね。一番長いときで、1年のうち3カ月ぐらいをロンドンで過ごしていたんじゃないかな。アビー・ロード・スタジオのほぼ斜め前みたいなペント・ハウスに住んでいたこともあった。

ロンドンでのレコーディング作業だと、ロックアウトして一日中音楽を楽しみながらレコーディングができる。昼間から冷蔵庫にあるビールを出して抜いてもいいし。日本でそれをやると何だかすごく不謹慎な行為のように思われちゃう。まあ一方で、こっちでは日本のように予定通りには物事がなかなか進まないんだけれども。日本を離れてみて日本の特異性に気付くというか、あそこまで分刻みで何もかもが成立している国はなかなかないんじゃないかなあ。

「いつかはロイヤル・アルバート・ホールでライブをやりたいな」

今年になり、家族を伴ってのロンドンでの生活がついに実現しました。
なぜこのタイミングでの渡英なのでしょう。

BOØWYを解散した直後に憧れの地であるロンドンに移住していても不思議ではなかったのだけれども、自分なりに日本でもっと面白い音楽シーンを作りたいと思っていたこともあって、東京での活動が長引いてしまった。今年になって50歳という年齢を迎えて、いよいよラスト・チャンスというか。60歳になると、体やメンタルの面で大きく変化するだろうし。

ギタリストとしての自分のギターそして音楽に今はとても自信がある。願わくばロンドンで今までと違った刺激を受けて、変化を吸収して、自分の音楽として表現したいなあと思うし、今はそれができる段階に自分はいると思う。もちろん、作品を発表したり、ツアーをしたりしながら日本での活動も続けるつもり。

まずはイギリスの人たちに自分のギターを聴いてもらうところから始めて、「HOTEIのギターって面白いね」って思ってもらいたい。BOØWYを始めたときのように、観客数が100人から150人になって、200人になって、まあたぶん500人ぐらいにはなると思うんで。そして、やっぱりオリジナリティーというか、HOTEIのギターは誰とも違う、ジミー・ヘンドリックスともキース・リチャーズとも違う。初めて聴くスタイルだ、初めて体験するスタイルだ、っていうのを自分のアイデンティティーにしたい。僕はあんまりギターが巧い方ではないけれども、他人と違うサウンドやメロディーやリフを弾いている自信はあるんで。

イギリスではどのような音楽活動を展開していく予定ですか。

映画「キル・ビル」のメイン・テーマとなった「BATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITY」が世界的に認知されるようになったお陰で、「HOTEI」という名前は知らないかもしれないけれども、どこかで僕の曲を聴いたことがあるという人はこのロンドンという街にきっとたくさんいると思う。ギターのカッコいいところが全部詰まったあの曲が世界的に愛されたってことは僕にとっても強い自信になっていて、あの曲が僕をここに連れてきてくれたって気がするし、あの曲がこれからもずっと僕を支えてくれるような予感がする。侍スピリットを持った、決して若くはない1人の男がギターを持ってこちらにやって来れば、こちらのロック・ファンやギター・ファンに何かを感じてもらうことができるんじゃないかな。あとはこっちのミュージシャンとも様々なコラボレーションをやっていきたい。ゆくゆくはバンドを組みたいな。

まあさっきは観客数が「500人ぐらいにはなる」なんて言ったけど、謙遜でゼロを1個減らしているからね(笑)。 夢は大きくっていう意味で言うと、僕はロンドンのロイヤル・アルバート・ホールが大好きで。いつかはあそこでライブをやりたいな。そういう憧れとか夢って大切だと思うんだよね。叶えようと思って叶わないときもあるけど、でもやっぱり叶えようとしないと。ロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートはなるべく近いうちに。でも、ちゃんと一歩一歩積み重ねていって、あの場所にたどり着けたらいいなって。

12月に予定しているロンドンでのコンサートの構成はもう決まりましたか。

ぼちぼちね。もしかすると即興演奏の部分が増えていくのかもしれない。もう思いっきりギター弾きたいから。火が噴くようにギターを弾きまくりたい。僕はバンドを解散した後に歌うことを選んで、「歌うギタリスト」として30年やってきたけど、やっぱり自分はギタリストだと思っている。歌いながらギターを弾くのも好きだけど、やっぱりギターだけ弾いているときの方が自由。だからこっちではギターをメインにしたい。

随分前にロンドンで何回かライブをやったときは、若気の至りと表現できるような、自分の刀というかギターを振り回しているだけのものだったので。あれから数十年経って、今は全く違う自分のスタイルを持っている。自分のギターに自信があり、自分の演奏を皆さんに楽しんでもらえる確信がある。そういう状態でまたロンドンに戻って来られて、ラウンドハウスっていう本当に音響から何から素晴らしい環境の整ったステージで再スタートの第一歩を踏めるというのはとても幸せ。

今回のコンサートでチケット代を安く設定したのは、ロンドンに住んでいる若い皆さんにも足を運んでもらいたかったから。たくさんの観客と向き合うことでまた何かの発見があるだろうし、そしたらまた来年、単独ツアーなのかそれとも野外音楽フェスティバルへの参加という形なのか、ともかくイギリスでの音楽活動を充実させていきたいので、今回のスタートを皆に応援してもらいたい。やはり熱狂というのは皆で一緒に作り出すものなので、観客の皆さんにはすごく期待しているんですよ。

「ギターの弦の張り方から練習し直さなきゃ。そこからのスタート」

渡英後はどのような毎日を過ごしていますか。

ロンドンに引っ越して2週間経つけど、全く音楽に携わる時間はなく……。新居に運び入れた家具を組み立てるのに精一杯で。ギターは一本持ってきたけど、アンプはないし、これから機材をそろえる段階。家も借り家だから、近所迷惑にならないように気を付けないといけないし。だからギターを弾きたくなったら、どこか街のスタジオを借りて思い切り弾こうかなって。ただここでは機材から何から自分で運ばなきゃいけないしさ。ギターの弦を買うのもここ何十年は他人任せにしていたから、選び方もすごく下手になっちゃっているんで。ギターの弦の張り方から練習し直さなきゃいけない。そこからのスタート。

ご家族はロンドンでの生活をどのように捉えていらっしゃいますか。

渡英というのはまあ僕の勝手な思い付きなので、まずは家族を説得する必要があった。10歳になる娘には「パパは転勤することになった」と伝えて。それから「パパには夢があって、昔からの夢で、世界で挑戦したいってずっと思っていたんだ」って言った。そうしたら「パパの夢なんだからパパ一人が行けばいいんじゃん、なんで私たちも一緒に行かなきゃいけないの」って始めは猛烈に反対されちゃって。日本の学校には友達がたくさんいるからまあ当然の反応なんだろうけど、ともかく自分の気持ちを根気良く説明した。家内(歌手の今井美樹さん)は結婚するときに、「いつかは外国暮らしになると思うけどそれでもいいか」っていう承諾を取っておいたから。

昨日はリッチモンド・パークに家族で行って、またドライブもちょくちょくしている。あとは美術館に行ったり、公園に行ったり。東京にいると無意識に人混みを避けてしまうというか、娘と一緒にデパ地下なんてとてもじゃないけど行けないし。でもロンドンだと、ハロッズやホール・フーズなんかに一緒に出掛けている。便利な東京暮らしの中で失っていたものも結構多いから、それを取り返そうとしている部分もあるのかな。地下鉄に乗ったり、バスに乗ったり、自転車漕いだり。まずは朝起きて、頭ボサボサのまま日本から連れてきた愛犬と一緒に散歩に出られることに感動する。東京の暮らしでは、正体バレバレと分かりつつもキャップを被ってから外出しなければならなかったから。寝癖ついたまま外に出たっていうのは、もう何十年ぶりなのかな。

「自分らしく誇らしく生きていくっていうのが、僕にとってのロック」

それにしても、50歳という年齢で新たな挑戦というのは大胆ですね。

自分の人生を彩っていくのは自分自身でしょう。ほんのちょっとした勇気が日常を変え、自分を生き生きとさせる。もしそういう選択肢があるのだとしたら、迷わず選択すればいい。夢を持って渡英してきたのだけれど、なかなか夢が叶わなかったり、滞在ビザが切れて帰らなきゃいけなくなったり、もう何十年も住んでいるのになぜロンドンに自分がいるのか分からないっていう人もたくさんいると思う。でも、どんな事情があったにせよ、結局今という未来を選択してきたということなんじゃないかな。僕の挑戦もそんな大それたものではなく、ただ僕は僕のために、僕が僕であるがために、もっと僕が僕らしくいるために、何かを捨てて何かを選んだというだけ。そして、既に僕はその決断を絶対に後悔しないという確信がある。

僕の方から偉そうに誰かに向かって、もっと夢を探せ、夢を叶えるんだ、挑戦しろ、といったようなことは絶対に言えない。夢とか挑戦っていうのは、それぞれの人々がそれぞれの生き方の中で毎日探していることだから。逆に言うと、僕がそういった皆さんからエネルギーをもらっている部分もあるしね。そうした人たちへの尊敬の念と、自分の挑戦を支えるエネルギーを音楽の中に閉じ込めて皆に送りたい。その音楽で皆がもっと自由になれて、自分自身を探しやすくなればうれしい。

最後に、布袋さんにとってのロックの定義とは何ですか。

人を真似しない、自分のスタイルで生きていくということかな。自分のスタイルを肯定するためには、自分自身を磨かなければならない。口だけや格好だけじゃだめじゃん。「俺、最高なんだよ」って言っても、ほかの誰かに最高だと思ってもらえなかったらね。「何がロックか」っていう究極の問いにあえて答えようとするならば、ちょっとした遊び心を忘れないこととか、ユーモアのセンスを磨くこととか、自分の意見を他人にきちんと伝えつつ、でも他人の意見にもちゃんと耳を傾けるっていうことでもあると思う。ロックというのは荒々しいだけじゃないから。優しくなければロックは格好悪いというか。

僕はスーツが好きで最近よく着ているのだけれど、「ロックの人がスーツを着るのはおかしい」と言う人が時々いる。でもロックは自由なものだから。だからスーツを着るのも僕の自由。やっぱり歳を重ねれば、円熟して、スマートになって、でも切れ味鋭い、光っているジェントルマンでいたいと思う。それはロックであろうが、板前さんであろうが、サッカー選手であろうが、ビジネスマンであろうが皆同じでしょう。自分のスタイルを探し、手に入れたら、それを磨きながらも誇示せず、自分の中の輝きとして、常にずっと抱きしめて、自分らしく誇らしく生きていく。それが、僕にとってのロック。


日時: 12月18日(火)
場所: Roundhouse
Chalk Farm Road, London NW1 8EH
料金: £28.50*
*購入方法により、料金に多少の変動あり
Tel: 0844 482 8008(Roundhouse)
Tel: 0844 338 0000(24時間チケット・ライン)
BookingsDirect.com
 

ミュージシャン さかいゆう インタビュー

さかいゆうインタビューさかいゆうインタビュー

まず、プロになることを決意した。歌も歌えず、楽器も弾けない18歳の少年の音楽人生が始まったのは、そこからだった。独学で楽器を学び、ロスのストリートで歌い、いつの間に、映画主題歌もこなすシンガー・ソングライターとして活躍する存在に。ミュージシャン、さかいゆうの歩んできた道は必然だったのか、幸運(ラッキー)だったのか。その答えは11月、ロンドンで、聴く者の心の琴線にさらりと触れる歌声が、教えてくれる。


プロを目指す前には、どのような形で音楽と接していたのですか。

小さなころは、テレビから流れてくる歌謡曲とか演歌ばっかり聴いてましたね。美空ひばりさんとか、谷村新司さんとかをカセット・テープに録って。うちの地元は田舎すぎてCDがなかったんですよ。

本格的に音楽を始めたきっかけは?

18歳のときに、ミュージシャンを目指していた友達が交通事故で亡くなったんです。それをきっかけにミュージシャンになろうと思ったんですけれども、どうやって目指していいのかも分からない。それで1年間くらい働いて、20歳くらいで東京に上京して、そこからですね。

ご自身が音楽が好きで、というよりは、友人の遺志を継いだ形だったのですね。

そうですね。目指し始めた後で次第に音楽にはまっていったという感じですね。最初は彼(友達)が聴いていたような、ロックなんだけどブルースっぽい、クラプトンなんかを聴いていたんですけれど。ブルースとかロックって、元々の基礎になるものと言うか、ルーツ・ミュージックと言いますか。ゴスペルにも繋がるような、そういう土臭い音楽が好きで、何も分からずにずっとブルースとかジャズを聴いてましたね。

東京ではどのような音楽生活を?

友達もいなかったんで、ずーっと家で音楽を聴いてました。楽器も弾けなかったし、歌もそんなにうまくなかったんで、ひたすらずーっと聴いてましたね(笑)。歌を本格的に練習したり、ピアノを練習したりするようになったのは、21歳のときにLA に行ってからです。

なぜ海外、それもロスに行こうと思ったのですか。海外で成功してやろう、という気持ちで?

自分の好きな音楽がブルースとかジャズだったんで、その発祥地とも言える国に行きたくて。現地のライブ観たさに行ったって感じです。成功してやろうなんて、これっぽっちも思ってなかった。(ミュージシャンの)卵にもなってなかったですし。ピアノもアメリカ行ってずいぶん経ってから弾き始めたくらいですから。

ピアノはどのように学ばれたんですか。

ルームメイトがクリスチャンで、あるとき教会に連れて行ってくれたんですけど、教会の人たちって色々な音楽を演奏するんですね。ブルースもやったり……まあ彼らはブルースって言わずにゴスペルっていう言い方をするんですけど、ジャズやったり、ちょっとポップスやったり、R&Bをやったり。そういうのを聴きつつ、鍵盤の人とか、オルガンの人の指を見て、録音して家に持って帰って練習する、といった形が多かったですね。あとはCDで耳コピー。生譜もコード譜も読めなかったんで、耳で学びましたね。

さかいゆう

ロスではどのような演奏活動を?

カバーやコピーをしていましたね。スティービー・ワンダーとか、ダニー・ハサウェイみたいな鍵盤弾きのピアノ弾き語りや、シンガー・ソングライターの曲とかを主にコピーしてました。あとは自分のオリジナル曲も1曲だけあったんですけれど――今では覚えてないんですが――、それと、「上を向いて歩こう」みたいな有名な曲とか。最終的に20曲ぐらいレパートリーがあって、それを一日4時間とか5時間ぐらいストリートでやって、通行人が置いていってくれるお金で生活してました。毎日毎日、ピアノと曲を覚えることで精いっぱいでしたが、ライブも2日に一回は観に行ってたんで、すごく楽しかったですね。

その後、日本に戻られて、メジャー・デビューするまでにはどのような経緯が?

メジャー・デビューをしたいしたいと思って音楽をやっていたわけではなくて、アンダーグラウンドでやっていたんです。とあるジャズ・バンドのフィーチャリング・ボーカリストをやったり、別のバンドのバック・コーラスをやったり。バイトもやりつつ、ぎりぎりの生活を送っていたとき、ある日、ラジオに招待されたんですね。そこでライブをやったんですが、それを聴いていた今のマネージャーが、その後、CD を買いに行ってくれて、(事務所の)皆に聴かせて、「いいじゃん」ということになって、結果、出会ったという感じですね。

現在でもたびたびカバーをされているようですが、なぜですか?

曲ってすごい不思議で、自分の曲ももちろん歌うんですけれど、過去の曲を歌うことで自分が助けられること、教えられることもすごく多いんです。ブルースやジャズのミュージシャンって、実はオリジナルの曲をそんなに持っていなくて、アルバムの中の3分の2ぐらいはカバーだったりするんですけど、それを全部自分の曲のように解釈している。元々作った方々へのリスペクトも忘れず、でも新しい解釈で――例えば昔のジャズの曲を今のビートで、メロディーはそのままっていう曲もたくさんありますし、そういう、音楽っていう遊び場、曲っていう遊び場の中で遊んでる感じがすごく好きなんですね。

それでは、ご自身が曲をつくる上で大切にされていることは?

自分の場合、音楽から音楽が生まれることってあまりなくて。何か物事を見たり、例えばすごい抽象的なんですけど、海に行ったときに波の音と風がハモったりしたときのコード進行とかタッチとかを弾くと、自分の見た風景や頭の中のイメージが膨らむんですね。その自分のイメージに(曲を)近付けるようにはしてます。歌詞は、皆が分かると言うか、共通言語なんで、例えば日本人だったら日本語があるわけじゃないですか。なので、自分のイメージよりは親切に書いてるんですけどね。でもあくまで自分のイメージを伝えるために、それと自分の日頃思っていることを伝えるために、メロディーと歌詞があるんだと思います。

11月にはロンドン公演が控えていますが、これまでロンドンに来られたことは?

初めて行きます。ロンドンのイメージは、自分より建物が圧倒的に年上というのが、メトロポリタンっていう感じ。東京だとその「メトロポリタン感」が、自分と同い年だったり、自分より年下だったり、古い建物はなくしていっちゃうというイメージなんですけど、ロンドンだと、普通の家が150年前に建てられていてっていうようなのが結構あると聞いたことがあって、そういう風景を見るのが楽しみですね。

ロンドンの昨今の音楽シーンについてはどう思いますか。

僕はR&Bとかクラブ・ミュージックが好きなんですけど、アメリカとはかなり違うと思います。イギリスの方がよりメロディーや曲の風景を大切にするイメージ。だから同じR&Bでも、イギリスの方が自分としては共感できますね。

ロンドンではどのようなライブになるのでしょう。

イメージはあるんですけど、まだ決めてないですね。10月くらいにリハーサルに入るので、それまでゆっくり考えようかなと思いまして。日本語の曲も何曲かやりたいです。せっかくだから、日本ではできないようなスペシャルなライブにしたいなと思っています。


さかいゆう
高知県清水市生まれ。18歳で音楽に目覚め、20歳のときに上京。翌年から1年間、米ロサンゼルスに滞在し、ピアノを独学で学ぶ。帰国後、2009年にメジャー・デビュー。デビュー・シングル「 ストーリー」は全国の FMラジオ43局でパワープレイを獲得するなど、大きな注目を集める。その後も、自作の楽曲が TVアニメ「のだめカンタービレ フィナーレ」のオープニング・テーマ曲や、映画「パーマネント野ばら」主題歌に起用されるなど、順調に活躍の場を広げつつある気鋭のシンガー・ソングライ ター。今年5月に発売されたアルバム「How's it going?」がロングセールス中。
 
さかいゆうSENSHUKAI presents
さかいゆう LIVE IN LONDON
日時: 11月11日(日) 19:00開場
場所: Jazz Cafe

 5 Parkway, Camden Town
 London NW1 7PG
最寄駅: Camden Town
料金: £10

上原ひろみ、さかいゆうインタビュー

上原ひろみインタビュー さかいゆうインタビュー
 
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