2011年にドイツで開催されたサッカーの女子ワールド・カップ(W杯)優勝や、2012年ロンドン五輪の銀メダル獲得で日本中の人々そして在英邦人を熱狂させた、日本のサッカー女子代表「なでしこ」のメンバーたち。その中枢を成す大野忍選手と近賀ゆかり選手が、この春、イングランドにおけるサッカー女子の強豪アーセナル・レディースに入団した。渡英してまだ間もない3月末には欧州チャンピオンズ・リーグの試合にさっそく出場し、今後国内リーグでの活躍が期待される両選手に話を聞いた。(取材・本文執筆: 木村正人)
近賀ゆかり Yukari Kinga
1984年5月2日生まれ、神奈川県出身。なでしこリーグの日テレ・ベレーザ、INAC神戸レオネッサを経て、2014年にアーセナル・レディースに入団。大野選手とともに、サッカー女子の日本代表として、世界一となった女子W杯のドイツ大会や、銀メダルを獲得したロンドン五輪など数々の国際大会に出場している。
大野忍 Shinobu Ohno
1984年1月23日生まれ、神奈川県出身。なでしこリーグの日テレ・ベレーザ、INAC神戸レオネッサ、仏リーグのオリンピック・リヨン、なでしこリーグ2部のASエルフェン狭山FCを経て、2014年にアーセナル・レディースに入団。なでしこリーグでは最優秀選手に3度選出され、得点王に4回輝くなどしている。
3月の欧州チャンピオンズ・リーグ(CL)が初の公式戦となりました。
大野:練習試合には出ていましたが、公式戦はCLが初めてでした。楽しめた戦いでした。負けたのは悔しかったですが。試合後は真っすぐ家に帰ってきて、キンちゃん(近賀選手の愛称)と2人で反省もしましたし。失点のところだったり、得点のところだったり。自分に関しては何回か決定機も作ったんで、それを決めていれば雰囲気も変わったと思います。そういう責任感はすごくありました。
近賀:CLに出たくて英国に来たと言っても過言ではありません。CLへの思いがすごくあった中で、いきなり公式戦を迎えた。それが、第2戦で本当に犯してはいけないミスを私が犯して失点して、忘れられない試合になってしまった。それはセンターバックを初めてやったとか、慣れていないポジションだからとか、そういう言い訳では済まないミスだったんです。ただ下を向いてばかりはいられないので、後半は点を取りに行くとなって、自分が一つ前の列のポジションに入ったときに得たヒントはありました。だから、様々な意味で印象深い試合となりましたね。普段は全然平気で寝られますが、この試合は寝られないというか、目をつぶると思い出すという感じでした。
日本のサッカーと英国のフットボールの違いについて何か感じたところはありますか。
大野:自分はここに来る前、フランス女子サッカー・リーグのオリンピック・リヨンにもいたんですが、そこでもサッカーの違いというか、日本にはあって海外にはないもの、逆に海外にはあって日本にはないものを実感したということがあったので。その難しさというのは慣れるまでに時間がかかるのかなという部分はあります。海外の場合は個の力を発揮しなくてはいけない部分がすごくあるので、個を出しつつ、チームのコンセプトに対応していかなければならないのかなと思います。
近賀:自分のイメージでは1対1の勝負になってくるのかなと想像しながら来てみて、(それまでのポジションであったサイドバックから)センターバックをやることになったので、色々な確認をこの短い中でも監督やチームメートとしています。日本はどちらかと言ったらカバー※、カバー、カバー。日本代表では、自分たちよりもフィジカルが上になる相手が多いので、カバーを大切にするんです。アーセナルでも監督はカバーと盛んに言っているので、やろうとしていることは日本と近いのかな。いざ、試合になると、どこまでカバーに行くのかという微妙な距離感の違いはあるとは思いますが。
※守備において空いているスペースを埋めたり、相手選手に味方選手が抜かれたときに助けに行く行為
センターバックがしっかりしているチームは強いですね。近賀選手への期待の表れなのではないでしょうか。
近賀:たぶん、監督が私のことをよく分かってないのだと思います(笑)。まだ、自分の中でも疑問があります。一番大事なところを任せてもらっているのはありがたいですし、その分、期待に応えたいなという気持ちはあります。

3月30日に行われた欧州チャンピオンズ・リーグでの
対バーミンガム戦で敗退し、アーセナル・レディースの
シェリー・カー監督に声をかけられる
近賀選手(写真左)と大野選手(同右)
監督からはいつセンターバックで行くぞと言われたんですか。
近賀:入団してすぐにセンターバックでと言われました。両サイドに良い選手がいるというのもあると思います。「まあ、できるだろう」という感じで言われました。でも、やったことはなかったので、できるも、できないも、やったことがありませんという返ししかできませんでした。たぶん守備面より攻撃面の理由でセンターバックをやってくれと言っているのではないかなと思います。ボランチっぽいというか、しっかり後ろから前の人にボールを運ぶというところを求められているというか。
大野選手のポジションはトップ下ですね。
大野:日本でもやっていたプレーだったので。トップ下にしっかりパスを出せる選手もアーセナルにはいます。自分としては近賀選手が一つ前の中盤のボランチをやってもらった方が助かりますが、監督がどうしても近賀選手のセンターバックが気に入っているみたいなので(笑)。
近賀:違う、違う。何かそう仕立てようとしてない?
大野選手はロンドン五輪のブラジル戦で左足のうまいシュートを決めました。左利きのメッシみたいにプレーしたいということですが。
大野:もともと右利きなんですが、今からでも遅くないかなと思って、左足の練習をしています。今からでも練習すれば左利きになれると信じています。少しでもメッシ選手に近付けたら良いなと。ドリブルもそうですし、一人で試合を決めてしまうじゃないですか、メッシ選手は。
自分のスタイルを貫くのか、チームのスタイルに合わせるのかという点で迷われたりはしますか。
大野:リヨンの場合は自分のプレーよりチーム優先だったので。チームとしてこういうサッカーをしたいから、お前もそのプレーじゃなくて、変えてくれみたいな感じだったんですよ。一方で、自分の個の力を存分に出して、チームとしてこういう風にやりたいから、こういうのも出してくれ、というチームもある。アーセナルはそういうチームなので、自分のプレーを曲げなくてもいい。慣れの部分では、なじみやすいというか、すぐに入りやすいかなというのはあります。チームとしてどうしたいというのを理解しつつ、その中で、自分のプレーがチームとしてどう機能していけるかというのは自分次第かなと思いますけど。
近賀:その質問で言えば、貫くとしたら、センターバックをやってくれと言われて、やりませんというのが、もしかしたら貫くということになるのかもしれません。そういう意味では自分を貫いているわけではないと思う。私としては、チームに求められていることをやりたい。その中で、思い切りやってくれ、自分の特徴を出してくれという感じでチームは言ってくれていて。これをやるなとか、今のプレーはしないでくれとか、そういうことを言われたことはないです。自分はスタミナの部分はある方なので、色々な所で顔を出して、守備でも何回も食らいついたりとか、そういうところではサイドバックをやっているときと似ていると思います。まあそれに、チームで求められていることが自分のプレーを出すことなので、早くチームのやるものにフィットしていきたいですし、チームのプラスアルファになりたいなとは思います。
イングランド代表の弱点を見つけに来たというのは本当ですか。
大野:こちらでは、W杯チャンピオンってすごいことだって言ってくれます。日本ではもう、あまり騒がれません。自分たちは過去の話なんで、もういいという感じなんですが、イングランドの選手に「いや自分たちはそのチームに勝ったし」と言われたんです。確かにそうなんです。イングランドには勝ったイメージがない。自分たちが帰国するときは少しでも何か持って帰れればいいなと思って今、弱点を見つけているところです。
近賀:本当にイングランドに勝っているイメージがないので、弱点を見つけるというか、特徴をつかんで、勝つための情報を集めたいです。
大野:将来、イングランド代表と試合をしたとき、あの2人にやられたと思われたいですね。
渡英が決まったのは。
近賀:ギリギリでした。こちらに来たのが2月18日。ビザが出るのが長引いて、2月に入国しました。
大野:ビザの話は12月ぐらいから始まりました。準備したことはそんなになかったですね。アーセナルのウェブサイトを見ましたが、日本語版があまり更新されていなくて、これは古いなと思って。選手も違うし。一体誰なんだ、誰がいるんだ、という情報はすごく知りたかった。
近賀:こちらに来る準備は全然していませんでした。イングランド代表の選手が何人かチームにいるというのは聞いていましたが、その選手がこのシーズンにいるのかどうかというのも分からなかった。残っていたらいいなと思う選手が来てみたらいたという、そんなもので。あとは色々な人が「キンちゃん、ロンドンはこういうところだよ」という話をしてくれたくらい。ギリギリに決まったんで周りの人にもきちんと言えてなくて。あとは旅行の本をくれた人はいました。
英会話学校には行きましたか。
大野:行ってないです。英語は話せたら格好良いなと思っていたぐらい。行かなきゃ、行かなきゃと思っていても時間がなくて行けなかった。
監督さんの説明は英語で聞いていて分かりますか。
大野:いやあ。2人で今のはこう言っていたよね、と確認を取ったりはします。ただアーセナルの監督は日本と近い感覚を持っているので、その部分でやりやすさというのはありますね。それを早く自分たちも理解してしっかり結果につなげていければ。ボードに監督が結構書いてくれるのですが、自分たちがメモする前にチームもさっさと帰ってしまうので、確認できない部分がちょっとあるんです。単語さえ分かればいいかなと思っています。
近賀:いくつかの表現は、やっぱりセンターバックなので言わなきゃいけないし、本当に何個かは最初に覚えなきゃというのはありました。ディフェンス・ラインを上げるタイミング、ここはラインを止めるタイミング、下がるタイミングとか、自分がマークを取るとか、マークを任せるとか、そういうことに関連した表現は必死で覚えました。
アーセナルのチームメートとはどうですか。
大野:チームメートはすごく優しいです。びっくりしちゃうぐらい優しくて、いつも2人で「優しすぎる」と言っています。アーセナルの男子の試合を初めて観に行ったとき、電車で行ったのですが、帰るときにすごいじゃないですか、人が。チームメートたちはきっとテケテケ自分のペースで行ってしまうんだろうなと思っていたんです。自分たちは迷子にならないように一生懸命ついていこうとしていたんですが、前に行きながら何度もウチラのことを確認してくれて。えー、すごく見てくれている、早く追いつかなくっちゃ、と。すごく気を遣ってくれます。練習中もこう言っているよとか説明してくれたり。まだ、じゃれ合うぐらいのコミュニケーションは取っていませんが。
近賀:想像していたよりも親切すぎてビックリしています。最初だけかなと思っていたら、1カ月ぐらいたってもまだ親切です。シャイな感じ、恥ずかしがり屋な感じがします。すごく心配してくれるというか、試合に行くときも、試合を観に行くかと聞かれているけど2人はどうするとか、あと車の送り迎えをしてくれることもありますし、とにかく何かと気にかけてくれます。練習中も、たぶん話しても分からないだろうなという感じだとは思うんです。それでも嫌にならずに話してくれる。分からないことがあったらセンターバックのチームメートに聞くと噛み砕いて話してくれますし、本当にビックリしています。

英国ニュースダイジェストのオフィスでインタビューに応えてくれた、
大野選手(写真左)と近賀選手(同右)
チームの中ではどのように呼ばれていますか。
大野:「シノ」と呼ばれています。
近賀:「キンガー」です。
自分で判断するプレーの範囲はどうですか。
大野:日本の方が自分で判断しろという範囲は大きいと思います。こちらはシステムというか、すごくポジションにこだわるような気がします。
渡英されてから、2人で来て良かった、助かったと思うことはありますか。
大野:そんなの、毎日思っています。自分はサッカーをしに英国に来て、そのサッカーをする上で自分のことを理解してもらうことが一番重要だと思うので、そういう選手が1人でもいるというのは本当に楽ですし、自分としては助かっている部分は大いにあります。
近賀:チームメート全員に「シノにボールを預けとけばいいんだよ」って言いたいくらい。預けておけばチームはきっとうまくいく。そう信じることができる選手がいて、しかもその選手が自分のことを分かってくれている。1列前にそういう選手がいるというのは心強いの一言ですね。
プライベートはどうですか。
大野:出掛けてないですね。出掛けるとしたら近くのスーパーに買い物に行くぐらいです。テスコもありますし、サンズ……
セインズベリーズのことですか。オレンジ色のところですか。
大野:そう、そこに行ったりしています。
近賀さんはどうですか。
近賀:似ていますね。近くに英語のレッスンをしてくれている人がいて、この間はその人の家で日本食を振る舞ってもらいました。それで結構リフレッシュしたりとか、休日はそんな感じですかね。
自炊されていますか。
近賀:自炊です。日本のときから基本的には自炊です。パスタもゆでるだけですし。
大野:得意料理はないんですよ。お肉を焼いたりとかはできるじゃないですか。英国にもモヤシとかはあるので。あとはキンちゃんと一緒でパスタをゆでたりとか。
サッカー選手はよくパスタを食べるんですか。
大野:ウチラの考えでは、楽だからです。たぶん……(笑)。
渡英してから、お互いに対して意外な発見はありましたか。
大野:キンちゃんはクールなイメージなんですよ、日本では。すごくクールな近賀選手で通っているのに、こちらではふざけたキャラで通ちゃってるので。こっちに来て逆転じゃないですけど、皆とのコミュニケーションでもしゃべるし、英語で話そうともするし、今度、日本代表に行ったときにみんなにバラしてやろうと思っています。
アーセナル男子の宮市亮選手やチェルシー女子の大儀見優季選手との交流はありますか。
大野:宮市選手とは、渡英したばかりのころ、アーセナル側の手配で写真を一緒に撮ってもらう機会がありました。大儀見ちゃんはハイ、一回。彼女が所属しているチェルシーには韓国代表のチ・ソヨン(INAC神戸レオネッサ時代のチームメート)がいて、そのソヨンが誕生日だったので、キンちゃんと2人でサプライズに行ってという食事会はしました。ただ彼女たちがいるところは電車で1時間ぐらいと若干遠いので、ちょくちょく会えるという感じではないのですが。
リヨンでの経験は生きていますか。
大野:経験が生きていると感じている部分はあります。またリヨンに行って悔しい思いはしましたが、後悔はしていないので、アーセナルで同じことの繰り返しにはしたくないなと思います。
近賀選手は海外で暮らすのは初めてですね。
近賀:携帯でメールもできますし、パソコンではスカイプで話したりできます。まだホームシックは大丈夫ですね。Wi-fi の環境もすぐに整えてくれたりとか、すごくよく対応してくれました。後から聞いたらそんなスピードで準備を整えてもらえるというのは普通では無理みたいですね。本当によくチームからサポートをしてもらっているので、ありがたいです。
ロンドンで行ってみたいところは。
大野:観光名所には全部行ってみたいです。
近賀:ハリー・ポッターの名所にも必ず行かなきゃ。
大野:(ホグワーツ特急が発着するれんがの壁に)突っ込んでみたいですね。
5月18日(日)ホーム開幕戦!
アーセナル vs マンチェスター・シティ
大野選手、近賀選手を応援しよう!
5月18日(日)にロンドン郊外で行われるサッカー女子の国内リーグ、アーセナル・レディースのホーム開幕戦に行って、大野・近賀選手を応援しませんか。試合当日に英国ニュースダイジェスト本誌、またはウェブサイトの本記事のプリントアウトを持参した方には、試合会場で「Eikoku News Digest」と書かれた案内を持つスタッフより、両選手のサイン入り写真をプレゼント致します。試合後には、競技場内で選手と握手や写真撮影を行うことも可。当日は、ホーム開幕戦に臨む両選手を目一杯応援しよう!
● 日時:5月18日(日)14:00
● 場所:Meadow Park
Broughinge Road, Boreham Wood, Hertfordshire WD6 5AL
● 入場料:£5(子供£2.50) *試合当日、競技場にて購入
● WEB:www.arsenal.com/ladies
ロンドンからの行き方
St Pancras International駅からFirst Capital Connect線に乗り、「Elstree and Borehamwood」駅下車(乗車時間は約30分)。
駅を出てすぐ左手にある大通り「Shenley Road」を右に進み、
しばらくすると左手に見えるマクドナルドを通り過ぎてBrook Roadに入ると、
競技場の住所となるBroughinge Roadへとたどり着く。
競技場隣接の駐車場有り。
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日照時間が延びるこれからの季節、英国を飛び出して、
19世紀まで、貿易の中心地として栄えたマルセイユ。旧港の南の丘、147.85メートルの高台にノートルダム・ド・ラ・ガルド寺院(Notre-Dame de la Garde)はそびえる。現在の寺院は19世紀に建築家エスペランデュによって建てられたものだが、歴史をたどれば基となった寺院は、1214年に丘の上に建てられていた。今年、誕生から800年を迎える。寺院の上には黄金に輝く9.72メートル、重さ約1トンの聖母マリア像が町を見下ろすように立っている。この黄金に輝く聖母マリアは「ボンヌ・メール(良き母)」と呼ばれ、これまで漁を、町を、そして住民を見守ってきた。内部のモザイク装飾は圧巻。内部には天井から幾つもの船がつる下げられていたり、海にまつわる絵画などが飾られていたりと、漁や平癒に対する感謝の気持ちから納められた奉納品が飾られている。ここから見るマルセイユは絶景。市内から徒歩で来るには、かなりの坂道を登ることになるので、バスが便利。
20世紀最大の建築家と言われるル・コルビュジエが建てた巨大な集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」。中でも一番初めに建てられたマルセイユのユニテ・ダビタシオンは、今日でも世界中の人を魅了している。
マルセイユのせっけんは、植物性のオイルと苛性ソーダを混ぜたもの。ルイ14世の時代の1688年10月5日、財務総監を務めていたジャンバティスト・コルベールにより、原料の油脂はオリーブ・オイルにすることなど、マルセイユのせっけん作りの製法が定められた。現在でも伝統的な方法で作られているマルセイユせっけんは、72%の植物オイルを含んでおり、かま炊きけん化法で植物オイルとソーダを煮詰め、その後、塩水で不純物を取り除くなど、約80時間の行程を経て生み出されている。



マルセイユのアペリティフとして欠かせないのが、マルセイユ生まれのアルコール、「パスティス(Pastis)」だ。パスティスの前身とも言われるのが、19 世紀、フランスの芸術家たちを魅了したアルコール「アブサン」。強い陶酔感と興奮をもたらすアブサンは、ゴッホ、ゴーギャン、ピカソ、ロートレック、ランボー、ボードレールなど、フランスにいた多くの芸術家を魅了した魔のお酒と言われている。しかし20 世紀に入りアブサンの製造が禁止され、その代わりにポール・リカールがアブサンの製法を改良して作ったのがパスティスだった。スターアニスやフェンネル、リコリスの香辛料が強いため、スーッとした後味が爽快感を与える。ちなみに「Pastis de Marseille(マルセイユのパスティス)」と表記するためには、アルコール度が45% 以上で1リットル当たり、2 グラム以上のアネトール(アニスの主成分)が含まれていなければならない。パスティスは水割りで飲むのが一般的で、水を入れると白く濁るのが特徴。慣れてきたらカクテルにも挑戦しよう。有名どころでは、グレナデン・シロップ(sirop de grenadine)を加えたLa tomate、ミントのシロップ(sirop de menthe)を加えたLe perroquet など。
ロンドンからマルセイユまでは飛行機の直行便を利用するのが便利。ロンドンの各空港からマルセイユ・プロヴァンス空港までは格安航空便も飛んでおり、約2時間で到着する。同空港から市内までは、シャトル・バスでマルセイユ・サン・シャルル(Marseille-Saint-Charles)駅まで約30分、またはタクシー。


自身の離婚問題を理由にカトリック教会から離脱したヘンリー8世。彼の4番目の妻であるアン・オブ・クレーヴズに離婚条件の一つとして与えられたのが、この木造の邸宅だった。だがアン元王妃自身がこの家を訪れたことはなかったという。チューダー朝の様式を忠実に再現した庭園には独特の風情がある。16~18世紀にかけてイングランド南東部で盛んだったという製鉄の技術に関する展示も充実している。
万有引力を発見した科学者アイザック・ニュートンの先祖が所有していた邸宅とその広大な庭が、現在では一般開放されている。ガーデンの中心部には小川が流れ、廃墟のような囲いに仕切られた芝生の上には水仙やダリアが眩しいほどに咲き誇る。ランチを食べたり、お昼寝休憩をしたりするには絶好のスポット。
毎週数千人単位が訪れるという蚤の市。翼を付けた女性の姿が彫られた戦没者記念碑の近くにある、かつて教会として使われていた建物の中で毎日開かれている。各種の家具を中心に、動物の剥製、アール・デコの置き時計をはじめとする骨董品が並ぶ。思わず悲鳴や笑い声を上げてしまうような変わり種の掘り出し物にもきっと出会えるはず。
それぞれパティシエとディスプレー・アーティストとして働いていた2人が立ち上げたヴィンテージ・ショップ。アンティークなのになぜか最先端の流行を押さえていると感じさせるようなセンスある商品ばかりが並ぶ。経営者の2人は小型トラックに乗って欧州各地の蚤の市を1年中周っていて、「こんなアンティークを探している」という買い付けの要望にも応じてくれる。
第一次世界大戦中には注射針を製造する工場が置かれていたという敷地を転用した複合施設。ハンドメイドのジュエリー、ヴィンテージ服、手芸品などをそろえたショップ、ギャラリーに加えてカフェも併設している。レンガの壁、地下にある井戸、そして色鮮やかな雑貨の数々に彩られた店内にいると、童話の世界に紛れ込んでしまったかのような感覚を覚える。
手前にインテリアやキッチン用品、店の奥にガーデニング用のアンティーク製品を配置している。カフェやレストランが多数並ぶ通りの入り口に位置しているので、アンティークにあまり興味のない同伴者を近くで休憩させたりする際には好都合。
ルイスの地ビールとして有名なハーヴェイズのビール醸造所に隣接したショップ。創業してから200年以上の歴史を誇る家族経営のブランドで、当代は8代目。醸造所の見学ツアーの予約が2年先まで埋まっているという信じられないほどの人気ぶりを見せている。ショップではハーヴェイズが製造する各種ビールを購入することができるほか、同社が販売を手掛けるワインや蒸留酒もそろえている。
その名の通り、15世紀に建造されたという建物の中にある古書店。児童書や挿絵付きの本を多く取り扱っている。同店の入り口から延びていく小石が敷き詰められた小道の風景と、頭を屈めなければ入ることができないほどの低い天井、そして店内に並んだメルヘンチックな本の数々が非日常体験を与えてくれる。
陶器の里として知られるポーランド南西部ボレスワヴィエツから取り寄せた陶器を扱う店。深みのある紺色を使ったデザインは、目に安らぎを与えるような温かな美しさを醸し出している。バター入れやソース差しまでかなり多種の商品をそろえているので、英国の食卓を飾るアイテムが見つかること間違いなし。併設カフェでは、それらの陶器を使ってピエロギやビゴスといったポーランドの伝統料理が供されるという贅沢なおもてなしをしてくれる。
ロンドンをはじめとする英国各地で見かけるレストラン・チェーン「ビルズ」の第1号店。最初は果物や野菜を販売する屋台としてスタートしたが、2000年に発生した洪水の被害で営業停止に。翌年にレストランとして開業したところ大ヒットし、全国展開するに至った。気軽なカフェ・スタイルで朝食からディナーまで楽しむことができる。
ウーズ川を渡る橋の付近にあるカフェ兼レストラン。シチューやパスタといった定番メニューに加えて用意される「本日のお勧め」はいつも美味。テイクアウェイもできて、ほかの多くの独立系店が閉業となる日曜日でも営業しているのがうれしい。
1605年にカトリック教徒の過激派によるロンドンの国会議事堂を舞台としたテロ未遂事件が発生。以来、11月初旬に平和を願って花火を打ち上げたり、実行犯の一人であるガイ・フォークスを模った藁人形を燃やしたりする習慣が定着した。ルイスは毎年、英国内で最大規模のガイ・フォークス・ナイトを開催。プロテスタント色の強い地域であることや、ルイスの戦いで諸侯が王に勝利したことから民主主義を脅かすテロ事件への強い反発が生まれたなど、ルイスがこのイベントを盛大に祝うようになった理由については諸説ある。

























































































人生の記念にと生まれて初めて船旅に参加した人、一年の半分以上を船上で過ごす人。数千人もの人々をのせた船は、最終日前夜、真っ暗な海をしぶきを上げつつひたすら進んでいる。船尾にある部屋のベランダからは、くっきりと北斗七星が見える。明朝にはサウサンプトンの港に到着すると思ったとき、心に浮かんだのは何より、船を楽しみ、人生を謳歌している人たちとの別れを惜しむ気持ちだった。船旅の魅力の、ほんの一端を味わうことのできた5日間。船の達人、人生の達人までの道のりは、まだ始まったばかりだ。
ソチ五輪における























