ニュースダイジェストの制作業務
Wed, 17 December 2025

LISTING イベント情報

おいしいと評判のロンドンの八百屋さん

おいしいと評判のロンドンの八百屋さん

慣れない海外暮らしでは、食生活がどうしても乱れがち。しかし、英国での毎日を十分に満喫するためには、しっかりと栄養を摂って、明日へと備える必要がある。
そこで改めて注目したいのが、八百屋の存在。食卓では脇役に追いやられがちな野菜や果物をおいしく味わうことができれば、味覚に良し、健康に良しの一石二鳥だ。
毎日の食卓を華やかに演出する、良質の野菜と果物をそろえた八百屋を紹介する。

名だたるセレブ・シェフたちのお墨付き
Andreas Veg

  • Andreas Veg
  • Andreas Veg
  • Andreas Veg
  • Andreas Veg
  • Andreas Veg
  • Andreas Veg

高級ブティックが集まるキングス・ロードの北側には、大通りがすぐ近くにあるというのが信じられないほどの静けさに包まれた住宅街がある。この住宅街を抜けると見えてくるのが、「チェルシー・グリーン」と 呼ばれる三角形の小さな広場。この三角形の一辺に「アンドレアス」とい う店主の名が冠された八百屋がある。数人が入店しただけでほぼ満員状態となるこの一画は、実はセレブ・シェフのゴードン・ラムジーや料理研究家のナイジェラ・ローソンまでもが贔屓にする名店なのだ。

世界最大級の生鮮食品市場である仏パリ近郊のランジス公益市場に年5回は通うというアンドレアスさんが野菜を厳選。お薦めは、「フライパンで炒めて、ほんのちょっとのオリーブ・オイルまたは塩、レモンをかけるだけで十分おいしく味わえる」という、鉄分とビタミンCが豊富なケール(和名「葉キャベツ」、1キロ当たり9.95ポンド)。また皮をむいた瞬間に甘酸っぱい香りが周囲一帯に漂うクレメンタイン(甘みかん、1キロ当たり5.95ポンド)は、房のどの部分を噛んでもツンとした甘酢っぱさがあふれ出てくる絶品だ。

4 Cale Street, London SW3 3QU
Sloane Square駅から徒歩10分
☎ 020 7589 5775
営業時間:月~金8:00-17:30、土8:00-16:00
www.andreasveg.co.uk

100種類以上の野菜・果物が所狭しと並ぶ
Michanicou Brothers

  • Michanicou Brothers
  • Michanicou Brothers
  • Michanicou Brothers
  • Michanicou Brothers
  • Michanicou Brothers

高級住宅街として知られるホランド・パーク駅の近くに立つ、一見しただけでは何の変哲もない八百屋。店内には、段ボール箱の中に無造作に置かれたままの100種類以上に及ぶ野菜・果物が所狭しと並んでいる。ただでさえ窮屈なこの空間に店員が4、5人も常駐しているのは、引っ切りなしに訪れる買い物客への対応をするためだ。キプロス出身のミカニカウ一家が営むこの店の特徴は、店員さんがその場で切り分けて次々と味見をさせてくれるという旺盛なサービス精神。

お薦めは、真っ赤に輝くトマト(1キロ当たり3.5ポンド)。「何も難しいことを考えず、サラダに投げ込むだけで絶対においしい」とのこと。ミネラル成分がバランス良く含まれた極細のフレンチ・ビーン(サヤインゲン、1キロ当たり10ポンド)も人気だ。またこの季節に売れ行きが良いのが、ビタミンCの補給がたっぷりとできるブラッド・オレンジ(1個50ペンス)。大手スーパーでは「季節外れだからしょうがないか」と妥協してしまいがちな野菜や果物さえもおいしいので、ぜひお試しを。

2 Clarendon Road, London W11 3AA
Holland Park駅から徒歩5分
☎ 020 7727 5191
営業時間:月~金9:00-18:30、土9:00-17:30

清潔感にあふれた「野菜の博物館」
Clifton Greens

  • Clifton
  • Clifton
  • Clifton
  • Clifton
  • Clifton
  • Clifton

ベジタリアン・メニューが豊富な人気レストラン・チェーン「オットレンギ」を展開するセレブ・シェフのヨタム・オットレンギがお気に入りの店として挙げている八百屋が、このクリフトン・グリーンズだ。ロンドン市内には、物置きと見紛うかのような乱雑な雰囲気の八百屋が多数あるが、この店の清潔感はピカイチ。奥行きのある店内には、色とりどりの野菜が輝きを放ちながら陳列されている。しかもトマト、イモ、リンゴといった代表的な商品に関してはそれぞれ5種類以上が用意されていて、充実した品ぞろえはまるで野菜と果物の博物館のよう。

同店のポリシーは、包装を一切しないこと。客は一個から購入ができて、さらには包装の手間を省くことで商品の値段を下げているという。売れ筋は「栄養の優等生」として知られるアボカド(1個1.45ポンド)と、一番旬の時期に合わせてブラジルやコロンビアなどの産地を選んでいるというパパイヤ(1個1.75ポンド)。同店では商品を市場で毎日買い付けており、品ぞろえが頻繁に変わるので、来店する度に新たな発見があるというのもうれしい。

16 Clifton Road, London W9 1SS
Warwick Avenueから徒歩5分
☎ 020 7286 5060
営業時間:月~土8:00-19:45、日8:00-19:00
www.cliftongreens.co.uk

「砂だらけのニンジン」って何だ?
Natoora

  • Natoora
  • Natoora
  • Natoora
  • Natoora
  • Natoora
  • Natoora

英国内のほぼ全域に宅配を行うオンライン食品店「ナトゥーラ」の直販店。オンラインでは精肉や鮮魚も扱っているが、直販店では旬の野菜と果物に限定して販売している。商品数は決して多くないものの、こだわりを感じるものばかりが勢ぞろい。

日本語に直訳すると「砂だらけのニンジン」という意味になる「サンディー・キャロット(1キロ当たり2.6ポンド)」はその一例。通常の栽培法ではニンジンが水を吸収しすぎてしまう結果、その味までもが水っぽくなってしまう。そこで水はけの良い砂を効果的に使うことで、柔らかい土質の中で伸び伸びと成長しながらも甘味の詰まったニンジンをつくることができるのだという。もちろん、ニンジンの主な栄養素である、免疫力を活性化させるベータ・カロテンも凝縮されている。また「パープル・スプラウティング・ブロッコリ(1キロ当たり9ポンド)」も変わり種。中心部が紫色に染まったこのブロッコリは味つけせずとも葉まで食べることができて、とりわけ蒸すことで染み出す深い味わいが美味。博識で親切な店員も同店の売りの一つだ。

35 Turnham Green Terrace, London W4 1RG
Turnham Green駅から徒歩3分
☎ 020 8742 8111
営業時間:月~金9:00-19:00、土8:00-18:00、日10:00-17:00
www.natoora.co.uk

バラ・マーケットの中心的存在
Turnips

  • Turnips
  • Turnips
  • Turnips
  • Turnips
  • Turnips
  • Turnips

ロンドン最大級の食市場、バラ・マーケット。この市場がまだ卸売業者のみに利用されていた時代から消費者向けに販売し、人気シェフのジェイミー・オリバーを始めとする料理人たちからの支持を集めていたのがこのターニップスだ。今ではすっかり観光名所となったこの市場において、今も変わらず業者そして消費者向けに良質の野菜・果物を販売している。

強い殺菌能力を持つため風邪の季節に心強い味方となるにんにくを、普段から味わって食べる機会は稀だろう。そこでお薦めしたいのが、頬紅のようにほんのり赤く染まったローズ・ガーリック(1個1.95ポンド)。フランス南西部で収穫されたこのにんにくは、強めの味の中にほのかな甘さが隠れている芸術品だ。そして、10個で2.50ポンドとお得なのがジューシング・オレンジ。目が冴えるようなオレンジ色の果肉にかぶりついてビタミンCを補給すれば、風邪知らずの身体に。紫色に染まった鉄分たっぷりのケール(1キロ当たり5.2ポンド)や、ちょっと高価なイエロー・ドラゴン・フルーツ(1個5.8ポンド)などもお試しの価値あり。

43 Borough Market, London SE1 9AH
London Bridge駅から徒歩5分
☎ 020 7357 8356
営業時間:水~土10:00-17:00(金は18:00まで、土は8:00から)
www.turnipsboroughmarket.com

 

エバーグリーン・キャピタル代表取締役社長 岩崎博寿氏 インタビュー

在欧企業・ビジネスを支援する投資会社
エバーグリーン・キャピタル代表取締役社長
岩崎博寿 (いわさきひろひさ) 氏 インタビュー

エバーグリーン・キャピタル代表取締役社長 岩崎博寿氏「投資会社」と聞くと、グローバル企業によるベンチャー企業の買収などの事例をまず思い浮かべるかもしれない。
しかしながら、中小企業の経営者がリタイアするために会社を売却したり、従業員が自身の勤めている会社を買い取ったりする際の支援、さらには起業を計画する若者への出資などを行う投資会社も世の中には存在する。
こうした地に足の着いた案件を扱う投資会社の一つが、エバーグリーン・キャピタルだ。同社の代表取締役を務める岩崎氏に話をうかがった。
www.evergreen-capital.com


投資会社経営に至るまでの経緯を教えてください。

日本の大学を卒業後、イングランド中部オックスフォードに1年間留学しました。そのまま英国に留まり、「Blue Fountain Systems」というロンドンのIT会社に、2カ月間のアルバイトを経て入社。同社で12年間働いた中、最後の8年間は社長を務めました。そして、2010年にマネジメント・バイアウト(MBO)でこの会社を買い取ったのが、最初の企業買収になります。後にベルギーの日本食スーパー、レストラン、別のIT会社や不動産と買収を続け、5年間で合計6社に出資または買収を行いました。

最も印象に残っている買収案件は、最初に手掛けたIT会社ですね。それまでの雇われ社長の身から、会社のオーナーとなり、すべての責任を取らなければならないプレッシャーの中での独立でしたので。買収後は、事業計画の見直し、マーケティングによる売り上げアップ、粗利やコストについてなど、100以上の改善を行い、最終利益を2年で5倍に増やすことに成功しました。この成功の経験と利益をベースに、6社への出資または買収を続けることができました。

どのような買収案件を検討の対象としていますか。

一つは、リタイアされたい方、一旦会社を売却して創業者利益を確定されたい方、ノンコア・ビジネスのみを売却してコア・ビジネスに資金や人材を投資されたい方、ほかのビジネスに投資されたい方など、色々な理由で、会社やビジネスのすべてまたは一部を売却したい場合です。

次に、私が5年前に行ったような、従業員や役員が、働いている会社をオーナーから買い取るMBOです。MBOへの資金だけでなく、オーナーとの交渉、弁護士や税理士との打ち合わせ、売買契約書の作成などを一緒に行っていきます。

あとは、ビジネスがキャッシュ不足になった場合の、出資という形での資金の提供や、共同経営者としての出資です。最近では、起業家によるスタートアップへの出資も考えています。若い起業家のお手伝いができればいいですね。いずれにしても、資金を提供するだけではなく、経営にも参加して、売り上げと利益を一緒に伸ばし、WIN-WINの関係を作ることが大切だと考えています。

買収案件は秘密裏に進めるのでしょうか。

必ず秘密保持契約書を取り交わします。そして、最終的に売買が成立するまでは、従業員や取引先に情報が漏れないように、細心の注意を払うことが求められます。また売買が成立した後、関係者にどのタイミングでどのようなメッセージを誰が伝えるかなども、契約前から周到に準備しなければいけません。この辺りも、弊社の過去の経験を元に一緒に行っていきます。

経営において最も大切にしていることは何ですか。

一つは、目の前で次から次へと起こる問題から一歩も二歩も下がって、常にそのビジネスの5年後または10年後のあるべき姿を考えながら、会社をコントロールするということ。放っておくとどうしても目の前の作業に流されてしまいます。

もう一つは、「銃ではなく弾を売る」。高い銃を売って一日限りの大きな利益を上げることよりも、小さく長期にわたって買い続けてもらえる弾をいかに売るかを考える。これが経営の肝だと思います。

 

小林賢太郎 インタビュー 「ポツネン氏の奇妙で平凡な日々」ロンドン公演

Interview

劇作家 / パフォーミング・アーティスト
小林賢太郎

Kentaro Kobayashi: Mr Potsunen’s Peculiar Slice of Lifeショーを楽しむのに
予備知識は要らない

シンプルな衣装と舞台装置、日本語の言葉遊びなどで独自のスタイルを築いたコント・ユニット「ラーメンズ」から始まり、演劇プロジェクト「K.K.P.」、ソロパフォーマンス「Potsunen」など、様々な形で「笑い」を追求してきた小林賢太郎。
そんな彼の作品が、初めてロンドンで上演される。最新作「ポツネン氏の奇妙で平凡な日々」は、絵本に出てくる昆虫博士のような風貌のポツネン氏の、端から見ると奇妙だけれど、本人にとってはいたって平凡な日常を描いたコメディー。
現代美術を見ているような、不思議で美しい作品の創作秘話を聞く。

小林賢太郎

1973年4月17日生まれ、神奈川県出身。96年、多摩美術大学在学中に同級生の片桐仁とラーメンズを結成。脚本・演出・出演のすべてを手掛ける。2002年に演劇プロジェクト「K.K.P.」、05年にソロパフォーマンス「Potsunen」を始動。12年には「Potsunen」で、フランス、モナコにて初の海外公演を成功させる。09年、NHK-BSにて「小林賢太郎テレビ」がスタート。最近作では美術全般も自ら手掛けるなど、舞台を中心に独自の活動を展開している。http://kentarokobayashi.net

3年ぶりとなる海外公演で、東京のほかにロンドンやパリでも公演が行われますが、創作の過程で海外を意識された部分はありますか。

以前、パリとモナコで上演したときは、コントで言葉の壁を越えるための研究発表のような内容でした。ですが今回は、その辺りはあまり意識せず、僕が今やりたいことを詰め込んだ結果がこれなので、海外のお客さんがどのように受け取ってくれるのか、今から楽しみです。初めての海外公演という気負いがなくなった分、臆することなく、自分のやりたいことを思いっきりぶちまけた作品になりました。もちろん日本語が分からない方にも楽しんでいただける内容にはなっていると思います。

東京公演のカーテン・コールでおっしゃっていましたが、今回の作品は小林さんが見た夢を具現化した部分もあるんですよね。

3年くらい前に見た夢なんですが、セミを捕まえて育てたら、フクロウになったんです。そのフクロウがとても悲しそうな顔をしていたので、ゆすったり、面白い顔をして見せたりしていたら、ニコーッと笑ったのでうれしくなったところで、泣きながら目が覚めました(笑)。でも最初からその夢を題材にしようと思ったわけではなくて、途中で「そういえばあの夢が種になっているのか」と感じたんです。夢って支離滅裂ですよね。台所のドアを開けたら急に海だったり、いつの間にか時間や場所が変わってたり、ありえないことも夢の中では何の違和感もなく受け入れられる。今回のこの作品は、見終わった後で「夢を見ていたみたい」と思っていただければ成功なのかもしれません。

山高帽にスーツといった衣装から受ける印象もあると思うのですが、小林さんのソロパフォーマンスにはどこかヨーロッパ的な雰囲気を感じます。

ヨーロッパというよりも、大正時代の日本人を意識しています。大正時代の、和と洋が良い具合に混ざり合っている感じがすごく好きなんです。だからヨーロッパ的な雰囲気を取り入れているつもりはなかったのですが、大正はヨーロッパからの影響を大いに受けた時代だとは思うので、そう見えるのかもしれませんね。

「Potsunen」では、パントマイム、マジック、イラスト、映像といった様々な手法が使われています。今回は物語性が加わり、ますますコントなのか、演劇なのか、アートなのか、とジャンルが混沌としてきた気がします。

僕の表現は一言で言うと「ビジュアル・サーカス・コメディー」でしょうか(笑)。アートもあって手品もあって笑いもある。色々とやることが多くて大変ですが、やっただけ手応えもあるので、楽しんでいます。ものすごく疲れますけど……(笑)。「ポツネン氏の奇妙で平凡な日々」は、僕が今まで積み重ねてきたことが合わさったような、集大成的な作品になっていますが、何も知らずに観に来ていただいても大丈夫です。僕のショーを楽しむのに予備知識は要りません。国籍も性別も年齢も関係ないので、面白そうだなと思ったら、ぜひ劇場に足をお運びください。

(インタビュー: 石本真樹)

Kentaro Kobayashi:
Mr Potsunen’s Peculiar Slice of Life

Kentaro Kobayashi: Mr Potsunen’s Peculiar Slice of Life2015年2月3日(火)、4日(水)
19:30
£15
Leicester Square Theatre
6 Leicester Place, London WC2H 7BX
Tel: 0844 873 3433
Leicester Square駅
www.leicestersquaretheatre.com

 

「ロンドン・マラソン・リミテッド」世界最大級のチャリティー・イベントの舞台裏を追跡

困難な状況を笑うことそれこそが英国人のユーモア「ロンドン・マラソン・リミテッド」

東日本大震災の発生後、日本においてもチャリティー活動がより盛んに行われるようになってきた。国が違えば、チャリティー文化も異なる。そこで2015年最初の英国ニュースダイジェストでは、欧州3国で支持を集めるチャリティー団体を紹介。最初に取り上げるのは、「チャリティー・マラソン」の先駆けであるロンドン・マラソンだ。走ることで、どうして募金活動になるのか。なぜロンドンにはチャリティー・ランナーが突出して多いのか。関係者に話を聞いた。

The London Marathon Limited とは?

毎年4月にロンドン中心部で開催されるロンドン・マラソンの運営会社。同ロンドン・マラソンなど英各地で主催するスポーツ・イベントを通じて得られる全利益をロンドン・マラソン慈善基金に寄付。寄付金は、同基金からロンドンを中心とするスポーツやレクリエーション関連施設へと分配される。またロンドン・マラソンでは1000を超えるチャリティー団体に対してチャリティー枠を多数確保することで、世界最大級となるチャリティー・イベントの運営に成功している。
www.virginmoneylondonmarathon.com

世界最大級のチャリティー・イベント

毎年4月の日曜日、ロンドン市内ではロンドン・マラソンが開催される。かつては瀬古利彦や谷口浩美といった往年の日本人選手が先頭でゴールを切り、2003年には英国人選手のポーラ・ラドクリフが女子マラソンの現世界記録を樹立したこの大会の開催は、今年で35回目を迎える。

子午線で有名なグリニッジ旧王立天文台の近くからスタートし、ロンドン塔や大観覧車ロンドン・アイを横目に走り抜け、バッキンガム宮殿前でゴールするというロンドン市内観光ツアーのようなコースの沿道には、いつもたくさんの人だかりができる。当日に沿道へ応援に駆け付ける人数は約75万人。ロンドンの地下鉄は毎年この日に1日当たりの最多乗客数を記録するという。

沿道は、いつも活気に満ちている。世界各地から招聘(しょうへい)されたオリンピック選手や市民ランナーへの声援。元サッカー選手のマイケル・オーウェンやセレブ・シェフのゴードン・ラムジー、美人メゾソプラノ歌手のキャサリン・ジェンキンスといった、大会に出場した英国の有名人たちへの冗談交じりの野次。ウェディング・ドレスやゴリラの着ぐるみを着用して走る仮装ランナーたちが通り過ぎるたびに起こる笑い声。そして、沿道に陣取ったジャズ・バンドの演奏。スポーツの大会というよりも、あたかもロンドンという街全体を上げてのお祭りのような趣である。

このお祭りとしての側面に加えて、ロンドン・マラソンは世界最大級のチャリティー・イベントとしての顔も持っている。実は「毎年開催されるチャリティー・イベントとして1日で集める寄付金が最大のイベント」というギネス世界記録をも保持しているのだ。

出場者の大半はチャリティー・ランナー

ロンドン・マラソンの2013年の応募者は16万7449人で、実際の出場者数は3万4631人。抽選となる一般応募枠に加えて招待選手枠さらにはチャリティー枠なるものが存在し、チャリティー枠は全体の3分の1を占める。集まった寄付金は5300万ポンド(約99億円)に達した。

ちなみに1897年に創設された、近代オリンピックに次いで歴史の古いスポーツ大会と言われる米国のボストン・マラソンの2014年大会には3万2458人が出走し、そのうちチャリティー・ランナーは約2500人で、集まった寄付金額は3800万ドル(約46億円)。同年の東京マラソンでは出走者数が3万5556人で、チャリティー・ランナーは2593人(法人チャリティー枠506人)、寄付金は約2億7000万円。出走者数は3大会ともほぼ同じでありながら、ロンドン・マラソンではチャリティー・ランナーの割合が突出して大きいことがよく分かる。

ここで「募金活動を目的としてマラソン大会に出場する」という慣習にあまりなじみがない方のために、「チャリティー・ランナー」とはどのようなものであるかを簡単に説明しよう。ロンドン・マラソンには、実にたくさんのチャリティー団体が関わっている。チャリティー・ランナーとして出場する人は、その中からどのチャリティー団体に登録するかを決めなければならない。例えば、ロンドン・マラソンを通じて、がんの研究に必要な資金を集めるチャリティー団体のために寄付金を集めるとする。肉親をがんで亡くしたことがあるとか、仲の良い友人がそのチャリティー団体に勤務しているなど、その動機は様々だ。詳しい制度については後述するが、ロンドン・マラソンにおけるチャリティー枠を多く持っているという理由で特定のチャリティー団体を選ぶという人も多くいる。

チャリティー団体を選んだら、次は募金活動。家族や友人、会社の同僚などに、マラソン大会に出場するから、もしくは自己ベスト記録に挑戦するから、応援の気持ちとして一人につき一定額の寄付をしてほしい、といったお願いをする。この提案に賛同した人たちによる寄付金が、ランナーを通じた現金受け渡しやクレジット・カードでの入金によって、最終的には事前に登録したチャリティー団体へと送り届けられるという段取りになっているのだ。

ロンドン・マラソンには、この慣習を制度化した「ゴールデン・ボンド」と呼ばれる仕組みがある。同制度において、チャリティー団体は1枠につき300ポンドを大会主催者に支払い、大会への出場枠を確保する。そしてこの枠を、自分たちに代わって数千ポンド単位の募金活動を行ってくれるランナーに分配するのだ。大会主催者はゴールデン・ボンドを通じて、750団体に対して1万5000枠を提供。また各団体につき1枠限定となる「シルバー・ボンド」でも550枠を確保している。

さらには抽選の倍率が非常に高いことで知られる一般枠の当選者の中にも、寄付金を集めるランナーが多数いる。これらも合わせると、出場者の75%が本大会を通じて募金活動を行っていることになるという。

英国的ユーモアとの関係

ロンドン・マラソン大会創立者を父に持つヒュー・ブラッシャーさん
大会創立者を父に持つヒュー・ブラッシャーさん

ロンドン・マラソンの運営会社「ロンドン・マラソン・リミテッド」の最高職となる「レース・ダイレクター」を務めるヒュー・ブラッシャーさんは、大会創設者の一人である父の手伝いをしていた15歳のときから本大会の運営に関わってきた。「1981年の創設当初は、日常的に練習を積んだ、いわゆる玄人はだしのランナーばかりが集う大会でした。ところが現在では、これまで1キロさえ走ったことがないという方がたくさん出場します。当たり前のことですが、日頃から長距離種目の練習を重ねている人にとっては、ロンドン・マラソンは数あるレースの一つに過ぎません。ところが未経験者にとって、マラソンとは言わば『人生最大の挑戦』。こうしたランナーが増えていくにつれて、レースを通じての募金活動が盛んになっていったのです」。

しかし、なぜ初心者レベルのアマチュア・ランナーの参加が増えると、募金活動の規模も拡大していくのだろうか。「英国的なユーモアの特質の一つに、『困難な状況を笑う』というものがあります。初心者にとって、マラソンとは困難な営みの極致ですよね。この困難を真正面から受け止めることでさらに苦しい思いをするよりも、家族や友人に応援してもらいながら、ユーモアの心を持って取り組もうと考える人が多いからなのでしょう。非常に英国人的な考え方だと思いますね」。今やロンドン・マラソンの名物となった仮装ランナーも、注目を集めることで自身が登録するチャリティーへの関心を高め、またユーモアの心を持ってレースに臨むという姿勢の表れなのだという。

大会主催者も寄付

ロンドン・マラソンにおける寄付金は、各チャリティー団体が大会参加費を払った上で独自に集めているものに留まらない。大会の運営団体も大規模な寄付を行っている。

この大会はそもそも、陸上の3000メートル障害の五輪金メダリストであるクリス・ブラッシャーさんと、同じく五輪の同種目で銅メダルを獲得したジョン・ディズリーさんという2人の英国人陸上選手たちによって創設された。2人が79年に米国のニューヨーク・シティ・マラソンに出場した際に大きな感動を覚えたことがきっかけになったのだという。そのときの父の様子を、先に紹介したヒューさんはよく覚えている。「サッカーのワールド・カップ決勝や、競馬のダービーでもあれほどの声援を聞いたことはないと興奮していました。しかも当時とても治安が悪いと言われていたニューヨークで、市民が一体となったイベントが開催されたということに感動したのだと思います」。

ニューヨークから帰国した2人は、このニューヨーク・シティ・マラソンをモデルとした市民マラソン大会をロンドンでも開催することを計画。その際に以下の「6つの目標」を掲げた。

① 高速コースと熾烈な国際競争の場を提供することで、英国におけるマラソンのレベルと地位を高める
② 人類に対して、人間の団結が可能であることを示す
③ ロンドンにおけるレクリエーション施設の整備を目的とした寄付金を集める
④ ロンドンの観光業に貢献する
⑤ イベントの開催においては英国が最も優れていると証明する
⑥ 数々の問題が起きているこの世の中において幸福感と達成感を提供する


バッキンガム宮殿前がロンドン・マラソンのゴールとなる

このうち③が、現在まで続けられている大会主催者が行う寄付に当たる。ロンドン・マラソン・リミテッドが、参加費やテレビ放映権、スポンサー収益などから、人件費を含む運営費などの費用を引いた全額がすべて「ロンドン・マラソン慈善基金」へと渡り、同機関からスポーツ及びレクリエーション関連の各事業へと分配される仕組みになっているのだ。同基金のサラ・リドレーさんによると「スポーツ振興に役立つか、ロンドン・マラソンなどのレース会場周辺地域への貢献となるかなどの観点から申請案件を審査した上で、平均して年50件ほどに寄付を行っています」。2013年は360万ポンド、過去総計で約1000事業に5000万ポンドを提供。これらの案件の中には、12年に開催されたロンドン五輪での水泳競技の会場となった巨大プールにおける車いす補助用具の購入や、土地開発業者たちによる地上げで存続の危機に立たされている競技場への資金の供給などが含まれる。

こうしてロンドン中心部でマラソン大会が開催されることにより街が豊かになり、またチャリティー団体の存在なくしては見捨てられがちな人々が支援を受けることができるからこそ、多くの人々や機関がこのイベントを応援するのだろう。そもそも、大会に参加している各チャリティー団体が扱う難病や貧困といった問題は、本来であればスポーツや笑いとは縁遠い種類のものであるはずだ。だからといって、苦虫をかみつぶしていれば解決するわけではない。それならばとばかりに、周囲の人をも巻き込みながら、マラソンというスポーツと、お祭りの雰囲気を通じて、結果的に資金の確保という最も現実的な解決策を提供する。ロンドン・マラソンにおける沿道の熱気には、チャリティーに対する英国人の知恵がたくさん詰まっている。

英国の著名チャリティー

英各地では、マラソンを始めとするスポーツ関連のチャリティー・イベントが頻繁に開催されている。絶滅の危機にさらされている野生のマウンテン・ゴリラの保護を目的としたミニ・マラソン大会が「ゴリラ・ラン」。ロンドンの金融街シティに設置された8キロのコースを、ゴリラの着ぐるみを着用して走る。また「ムーンウォーク」は、乳がん研究の資金集めを目的としたウォーキング大会。ロンドン中心部で深夜、特製のブラジャーを着用して早足で長距離を歩く。ブラジャーを着用するのであれば、男性でも参加可。また「ロンドン・マラソン・リミテッド」は、ロンドン・マラソンのほかにも英各地のマラソンや自転車レースなどを運営し、開催地周辺のスポーツ施設への寄付を行っている。ちなみにロンドン・マラソンではウィリアム王子の次男であるヘンリー王子が、ムーンウォークはチャールズ皇太子がパトロンを務めている。

日本の24時間テレビ「愛は地球を救う」のような、チャリティー企画を目的としたテレビ番組が、BBCが2年に1度放映している「レッド・ノーズ・デイ」。「コミック・リリーフ」というチャリティー団体が、番組名にもなっている赤鼻を付けた著名お笑い芸人たちを中心とする特別番組を通じて、世界中の貧困問題の解決に向けた寄付を募る。同番組の出演者と撮影スタッフは無償で協力。過去にはブレア元首相が出演し、お笑い芸人との掛け合いを演じたこともあった。

2003年から日本でも発行されている、ホームレスが販売するストリート・ペーパーが「ビッグ・イシュー」。ホームレスはこの雑誌を一部1.25ポンドで購入し(場合によっては無償提供)、2.5ポンドで販売。出版社の利益はホームレスの仕事探しの支援などを行うビッグ・イシュー財団へと回る。日本でも人気の英俳優ベネディクト・カンバーバッチを始めとする数々の有名人たちが、毎号の表紙を飾っている。


 
 

フォトコンテスト2014 受賞者発表!

英・独・仏 ニュースダイジェスト主催
フォトコンテスト2014
受賞者発表 !

既に遠い記憶となりかけた思い出が、まざまざとよみがえってくる。
いつも見慣れているはずの何げない光景が、違った輝きを見せる。
海外生活を送る英・独・仏ニュースダイジェストの読者の皆様と、
写真を撮ることの楽しさを共有したいとの願いから始まった
フォトコンテストは、4回目を迎えました。
今年も力作がそろった数々の写真の中から、受賞作品を発表いたします。

マチュア部門大賞

「アリゾナの夕焼け」
ルグラン 青木祐子 さんフランス

「アリゾナの夕焼け」 ルグラン青木祐子さん

まさか自分の作品が大賞に選ばれるなんて、初めて知らせを聞いたときには信じられませんでした。本当にうれしいです。この写真は2014年8月に米国アリゾナ州セドナ市で開催されたツアーに参加したときに撮りました。スピリチュアルな場所なので、そうした特別な雰囲気が感じられるよう背景を意識してシャッターを押したことを覚えています。また重いカメラを使用していたので、カメラを落としてしまわないように気をつけました。写真のモデルとなったツアー・ガイドのサラさんが、大自然と一体になって写っているところが気に入っています。

審査員コメント旅の思い出を扱った主題が秀逸です。写真に写った光が美しい。構図のバランスもきちんと取れています。さらに、夕陽を眺めている被写体がつくり出す、何とも言えない雰囲気が素晴らしいと思います。雰囲気を写真で捉えるというのは、非常に難しいですよね。世の中には「雰囲気を捉えた写真」が確実に存在するにも関わらず、どうすればそのような写真を撮ることができるかを説明するのは難しい。どんな雰囲気を残したいのか、その雰囲気を捉えるためにはどんな構図にすればいいか。それを考えながら、何度も撮り続けるしか他に方法はないのかもしれません。 by Canon Europe

キッズ部門大賞

「妹」
クネル翔音 さん(10歳)フランス 

「妹」クネル 翔音 さん(10歳)

今年の夏、インドネシアのバリ島の海岸で散歩をしていたときに、妹が気持ち良さそうに海岸を走っていたので、写真を撮りました。その際に心掛けたのは、太陽の光がカメラのレンズの中に入りすぎないようにすること。出来栄えとしては、妹が「走っている」という感じをよく捉えることができたと思います。私が写真を撮るときに普段使用しているのは、お母さんが昔使っていたカメラ。来年の夏は日本に行く予定なので、日本でしか撮ることのできない、日本らしい写真をいっぱい撮りたいです。

審査員コメント子供が楽しそうに遊んでいる姿をうまく捉えていますね。何よりも海に反射する光が美しい。空と海をバランス良く入れ込んだ構図も素晴らしいです。前方には走る子供と太陽の光の反射、中央やや後方に波、そして遠景には水平線と空。よく見れば、この写真は幾つもの異なる層によって構成されていることが分かります。遠方まで広がる景色を撮る際には、前方に何を置くかが重要です。前方に何もなければ、退屈な写真になってしまう恐れがあるからです。本作品は、遠くの景色と前方のモデルのバランスが取れたまさにお手本のような写真ですね。by Canon Europe

マチュア部門特別賞

「ラベンダー畑」
稲葉政文 さんイギリス 

「ラベンダー畑」稲葉政文さん

8月下旬にロンドン郊外サットンのラベンダー畑に出掛けたときに撮影した写真です。ラベンダー自体は既に花が枯れているものが多く、満開とはいきませんでしたが、天気が良くて暖かい日の光がちょうど良い具合に入ってきました。娘が動き回るので、いろいろなことに気を遣う時間はありませんでしたが、とにかく構図だけには気をつけて、娘、花、そして空がうまく収まるよう心掛けました。娘の服装がラベンダー畑にマッチしているのと、不思議そうに自分の手を見つめているところが自分でも気に入っています。

審査員コメント写真に写っている子供の顔に注目してください。子供がカメラのレンズではなく、ほかのものに興味を示している瞬間を捉えたという点にこの写真の最大の特徴があります。周囲のものに多大な関心を払っているということが如実に分かる表情ですね。画面に縦と横をそれぞれ3分割する線を設定し、その線が交わる点上に被写体を置くという「3分割法」に則った構図も完璧です。また子供と同じ低い視点から撮影しているという点にも工夫を感じます。こうして低い位置で撮るというのは、写真に「気持ち」を吹き込みたい場合に有効なテクニックです。 by Canon Europe

「Trackstand」
斉藤真大 さんイギリス

「Trackstand」斉藤真大 さん

入賞という思いもよらない結果に驚いたと同時に、うれしい気持ちでいっぱいです。この写真は、夏休みに友達が僕の住む町に来て、自転車に乗ったり、写真を撮ったりしながら遊んでいたときに撮影したものです。自転車の骨組みと、背景と人物のバランスを考え、友達がかっこよく見えるように撮ろうと心掛けました。友達をいつもよりずっとかっこよく撮れたことがうれしかったです。普段から一眼レフカメラで風景や人々を、またスクーターやスケートボードの動画を撮ったりしています。今後はスポーツに関する写真と動画をもっと撮りたいです。

審査員コメントグレーの地面と茶色いレンガの背景が、主人公の青年と自転車をくっきりと、そして鮮やかに引き立てており、構図の取り方も絶妙です。さらに手前の最下部において水平に引かれたラインによって、写真の奥行きと立体感が強まっていると思います。全体の落ち着いたトーンに、庭の花木の色合いがほのかなスパイスとして加わっているあたりにもセンスを感じますね。曇り空の下に広がる何げない日常を、柔らかく、そして温かく感じることができる1枚です。 by 宝酒造株式会社

「もしもし こちらアザラシ」
一柳絵美 さんドイツ

「もしもし こちらアザラシ」一柳絵美 さん

9月にヘルゴラント島という北海に浮かぶ小さな島を訪れた際、海岸沿いで何十頭もの野生のアザラシが、気持ち良さそうに昼寝をしている姿を目にしました。その中に、寝ぼけまなこで電話に出ているかのような格好の1頭を発見。あまりの可愛らしさに感激し、その表情を逃すまいと、できるだけズームインして、たくさん撮影したうちの1枚がこの写真です。受賞できるとは全く考えていなかったので、とてもうれしいです。動物が好きなので、これからも自然な表情を浮かべる動物の写真を撮っていきたいと思います。

審査員コメント野生動物の一瞬の動きを捉えており、タイトルとマッチした、ユーモラスでインパクトのある作品だと思います。アザラシののんびりした表情や、「もしもし?」と電話をしているかのような可愛らしいしぐさ。しかし、その首の傷跡からは野生生活の厳しさが垣間見られます。このアザラシの人生までも写し出しているかのようです。今回の応募作品には、ポストカードになりそうな奇麗なものが多かったのですが、その中で最も動きを感じられる作品でした。「もしもし?」の後に続くアザラシの言葉が何であるかは、見る人の想像力によって違ってくるのでしょうね。 by Steigenberger Frankfurter Hof THE SPA

「白鳥の湖」
ジャンフランソワ・ジェニー さんフランス 

「白鳥の湖」ジャンフランソワ・ジェニー さん

娘の夏休みを利用し、7月下旬に家族皆でマレーシアにて夏のヴァカンスを過ごしました。クアラルンプール滞在中にバード・パークに行き、そこで数羽の水鳥が湖上に浮かんでいる姿を見て、あまりの美しさに魅了されシャッターを切りました。それぞれの水鳥の動きが異なるので、全体のバランスを取り、優雅な雰囲気が表現できるように気を付けました。チャイコフスキーの「白鳥の湖」を連想し、あたかもダンスをしているかのような水鳥の姿が美しく撮れたところが気に入っています。これからは言葉では表現できない自然の美しさを撮りたいと思っています。

審査員コメントどこにでもあるような池の風景ですが、そこに鏡のように池に映り込んだ自分を見ている右上の水鳥の姿が印象的です。経済、宗教、人種間での民族主義の台頭、さまざまな理由で少しずつ世の中がまたおかしくなりつつあるのを実感する時代となりました。そんな時代にあって、この一つの限られた空間の池の中で、いろいろな方向を向きながら、群れの中で睦まじく暮らす一家。そして鏡のように自分に問い掛けている一羽の鳥を見て、一つのメッセージを含む写真なのでは?と感じました。自分の子供たちの次の世代が平和であればいいのですが。 by GUILOGUILO

キッズ部門入賞

「雨の日のクモの巣」
ヘインズ朋樹 さん(7歳)イギリス 

「雨の日のクモの巣」」ヘインズ朋樹 さん

僕の写真が入賞したことを、お母さんから教えてもらいました。とてもびっくりしましたが、うれしいです。写真を撮ったのは、学校から帰る途中の道。雨がやんだ後にできたクモの巣にたくさん付いている水滴とクモを見つけました。クモが逃げてしまわないように、そしてクモの巣や木に触って水滴が落ちないように気をつけました。きれいな形をしたクモの巣に、水滴がキラキラ光ってきれいなところを上手く撮ることができたと思います。普段は家族、旅行の風景、庭の鳥や花、自分で作ったレゴや絵の記録を撮るのが好きです。これからは動物も撮りたいと思っています。

審査員コメントまるで宝石のように光る雨滴と、カラフルなクモの存在感が際立っています。またクモの巣の背景に広がる緑いっぱいの自然が、手前に見える雨水の瑞々しさとクモの生命感をより一層引き立てているようにも思えます。暗くそして雨続きであるがゆえに、ともすると陰鬱な気分になりがちな英国特有の天気の中で、日常的な風景の中からこのような美しい自然を発見してしまう子供らしい視線が素晴らしいと感じたため、入賞作品として選ばせていただきました。 by JP Books

キッズ部門入賞

「秋のコロッセウム」
今村颯輝 さん(11歳)ドイツ 

「秋のコロッセウム」 今村颯輝 さん

10月12日にクサンテンという町で撮った写真なのですが、雲一つない天気で気持ち良い日でした。そのとき、コロッセウムの中をおばあさんが孫を連れて歩いていたのです。日本にいる祖母とは今は遠く離れているので「おばあちゃんと散歩できていいな」と思いながら撮りました。僕は高いところが好きなので、高い位置から撮ろうと、自分の視線より高く撮れるよう手を頭の上まで伸ばしてコロッセウム全体が入るようにしました。普段、写真を撮るのは家族で出掛けて気が向いたときくらいです。ドイツでは、日本にはない建物や風景を撮りたいと思っています。

審査員コメント広いコロッセウムの中で、おばあさんとその孫と思われる2人が仲良く手をつないで歩いている姿が、とてもほのぼのとしていて印象に残りました。撮影された方は、この写真に写った2人のように、コロッセウムの真ん中に家族と一緒に立ったらどんなに楽しいことがあるだろう、果たしてどのような景色が見えるのだろう……と、きっといろいろなことを想像しながら撮ったのではないかと思います。写真を通じて家族の絆を感じさせてくれたところが、入賞作品として選んだ決め手となりました。 by Paris Miki International GmbH

キッズ部門入賞

「猫ちゃんは可愛かった」
伊藤雅珠 さん(6歳)フランス

「猫ちゃんは可愛かった」伊藤雅珠 さん

この写真は、学校の帰りに仲良しのお友達と公園に行ったときに撮ったものです。お友達がダイジェストのコンテストに応募するというので一緒に応募したくてお花をたくさん撮っていたら、猫ちゃんが来て、可愛かったので撮りました。自由にしている猫ちゃんを撮りたかったので、そこを注意して撮りました。猫ちゃんのポーズと目の表情が気に入っています。使ったのはママのカメラ。普段は貸してもらえないけれど、このときは応募したくてお願いをして貸してもらい、たくさん撮ることができました。本当はもっともっと毎日撮りたいです。

審査員コメントまず、猫の意志のある目が良いと感じました。大人だとなかなかこのような構図は撮らないのではないでしょうか。子供だからこそ撮れた写真であり、そのときの雰囲気がよく伝わる、とても素敵な写真です。今回の応募のために、お母さんからカメラを借りて写真を撮ったということですが、せっかく入賞されたので、これからも続けて写真を撮っていただきたいですね。周りにあるさまざまなものをよく観察し、そのときにしかない時間を写真に残していってください。これからのますますの成長を応援しております。 by BOOK OFF

審査員総評

今年も水準の高い作品がそろいました。本コンテストは今年で第4回を迎えましたが、作品の水準が回を追うごとに向上していくのがはっきりと分かります。このため、秀作ぞろいの応募作品の中から大賞や入賞作品を選び出すという作業も年々難しくなってきており、審査員も頭を悩ますことが次第に多くなってきました。一例を挙げますと、本コンテストにおいては、これまで被写体を反射的に撮影したいわゆるスナップ写真が応募作品の中に多く見られました。ところが今回集まったのは、構図を練ったり、タイミングを計ったりと撮影に時間を掛けたとうかがえる写真ばかり。またカメラの機能が進化していることも、作品の水準が高まっていることの一因となっているのかもしれません。一方で、写真を撮影する際にその出来栄えを左右するのはカメラの機能ではなく、あくまでも撮影者の腕です。一体どんな写真を撮りたいのかを自身に問い掛けながら撮るのが、写真撮影を上達させるためのコツと言えます。 by Canon Europe

From News Digest

英・独・仏のニュースダイジェスト主催フォトコンテスト2014に数多くのご応募をいただきまして、誠にありがとうございました。本企画は、読者の皆様からの参加に大きく依存する構成となっております。大切な思い出を写した写真を共有していただいた応募者の方々、またお忙しい中、コメントの提供などご対応いただいた大賞・入賞受賞者の方々、そして賞品を提供してくださったスポンサー企業の皆様に、社員一同、心より感謝申し上げます。  

当選までの流れとしましては、例年と同様、まずはニュースダイジェスト社内で一次審査を実施。「審査員総評」でも紹介されていましたが、今年は各作品とも非常に凝ったものが多く、一次審査から難航しました。その後、各国審査員による最終選考を実施。大賞作品、審査員特別賞作品、各国入賞作品が決定しました。  

応募作品の中には、プロの手によるものと見紛うほどの高い水準に達した写真が数多くありました。一方で、実際に写真撮影の仕事を経験された方というのはほとんどいらっしゃらなかったようです。受賞後の感想をうかがった大賞・入賞の受賞者の方々が、口をそろえたように「まさか自分が受賞するとは思ってもみなかった」と仰っていたのが印象的でした。また受賞者の皆様は、普段から写真を撮るのが好きという方が多かったようです。撮ることにはそれほど自信はないけれども、写真展に行くのが好きと仰る方もいらっしゃいました。「好きこそものの上手なれ」という言葉の意味を、再認識したような気がします。

受賞者と賞品

    マチュア部門

  • 大賞: ルグラン 青木祐子さん
    Canon Europeより Canon EOS 100D Digital SLR Camera
  • マチュア部門特別賞: 稲葉政文さん
    Canon EuropeよりCanon PIXMA MG6450
  • 英国入賞: 斉藤真大さん
    宝酒造株式会社より清酒・焼酎・みりんのセット(200ポンド相当)
  • ドイツ入賞: 一柳絵美さん
    Steigenberger Frankfurter Hof より THE SPAのご利用券(250ユーロ相当)
  • フランス入賞: ジャンフランソワ・ジェニーさん
    新割烹のレストランGUILOGUILOよりお食事券 (200ユーロ相当)
  • キッズ部門

  • 大賞: クネル翔音さん
    Canon EuropeよりCanon IXUS 145
  • 英国入賞: ヘインズ朋樹さん
    JP Booksよりバウチャー(50ポンド相当)
  • ドイツ入賞: 今村颯輝さん
    Paris Miki International GmbH より 「Ray-Ban」キッズ用サングラス(70ユーロ相当)
  • フランス入賞: 伊藤雅珠さん
    BOOK OFFよりバウチャー(60ユーロ相当)

スポンサー

  • スポンサー
 

おいしいと評判のロンドンのお肉屋さん

ロンドンのおいしいと評判のお肉屋さん - クリスマス・ディナーの準備にも使える!

英国の大手スーパーで買ったお肉を食べても、味がいまいちだと感じた経験はないだろうか。昨年には牛肉加工品への馬肉混入事件が英国内で次々と発生。この国で、きちんとしたおいしい肉を食べるのは実はそう簡単なことではない。しかも、もうすぐ年の瀬。自宅で豪華な英国風のクリスマス・ディナーを楽しみたいという家庭もきっと多くあるはずだ。そこで今回は、ロンドン市民の間で信頼と人気を集めるお肉屋さんを紹介する。

5代目が経営する老舗中の老舗
C. Lidgate

  • C. Lidgate
  • C. Lidgate
  • C. Lidgate
  • C. Lidgate
  • C. Lidgate
  • C. Lidgate

ロンドン西部ホランド・パーク駅を出て右に向かって歩き出すと、間もなく見えてくるお肉屋さん。150年の歴史を誇る老舗中の老舗で、現在33歳のダニーさんは5代目の経営者。イングランド中部コッツウォルズにあるチャールズ皇太子の私邸ハイグローブ内の農場を含む各所から厳選して肉を取り寄せている。店内に並べられているのは、ソーセージだけでも15種類前後。18世紀のレシピを使ったもの、アスパラガスとピスタチオ入りのもの、鹿肉を使ったものなど、まるでソーセージの博物館のよう。

物色していると、フレンドリーなスタッフたちが「遠慮せず試食品を食べてください」と言って微笑んでくれる。同店がお薦めするクリスマス・ディナーの食材は、王道のブロンズ・ターキー(約10.5~11キロ、約17人用で181.50ポンド)。ロンドン近郊エセックスの農場で放し飼い(フリー・レンジ)にして育てられた七面鳥をローストすることで出来上がる風味と食感は「宝物のよう」との評判。安価なものでは、パーティー用のパイがお薦め。値段は一人分で6ポンド前後、注文してから15分で用意してくれるというから、駆け込みの準備にも間に合う。

110 Holland Park Avenue, London W11 4UA
Holland Park駅から徒歩3分
☎ 020 7727 8243
営業時間:月~金 7:30-19:00、土 6:30-18:30
www.lidgates.com

高級住宅街にある行列ができるお肉屋さん
The Ginger Pig

  • The Ginger Pig
  • The Ginger Pig
  • The Ginger Pig
  • The Ginger Pig
  • The Ginger Pig

毎週日曜日に中心部の駐車場でファーマーズ・マーケットが開催される、高級住宅地マリルボーン。この駐車場の向かいに位置する精肉店「ザ・ジンジャー・ピッグ」は、週末ともなれば来店客が行列を成すほどの人気店だ。主にイングランド北部ノース・ヨークシャーに保有する3000エーカー(約12平方キロ)の農地から肉を供給する同店がクリスマス用に薦めてくれたのは、牛肉のリブロース(1キロ当たり22.5ポンド)。英国で一般的に「フォアリブ」と呼ばれるリブロースは、牛肉では最高級とされるサーロインのすぐ前の部分の肉で、ロースト料理に最適。

また小腹を満たすだけなら、1週間で900個が売れるというソーセージ・ロール(3.5ポンド)をどうぞ。見惚れてしまうほどにきめ細かいひき肉と、ほんのり漂うこしょうの香りを同時に味わえば、「ソーセージって、こんなにおいしいものだったんだ」と思わず感慨に浸ってしまうこと間違いなし。しかも、ランチならこれ一つでお腹いっぱいになってしまうほどの重量感。同店すぐ近くの小さな公園のベンチに座り、ソーセージ・ロールを頬張りながら過ごす週末なんていうのも悪くない。

8-10 Moxon Street, Marylebone, London W1U 4EW
Baker Street 駅から徒歩5分
☎ 020 7935 7788
営業時間:月~水 9:00-17:30、木・金 9:00-18:30、土 9:00-18:00、日10:00-15:00
www.thegingerpig.co.uk
*ロンドン各地に支店あり

閑静な住宅地にある3兄弟の店
Godfreys

  • Godfreys
  • Godfreys
  • Godfreys
  • Godfreys
  • Godfreys

ロンドン北部のハイバリー・アンド・イズリントン駅から徒歩15分。閑静な住宅街の中にひっそりと立つその外観からは想像もつかないが、サボイやヒルトンといった超高級ホテルへと肉を供給している名店がこのゴッドフレイズだ。その名を店名に冠したフランク・ゴッドフレイ氏が1905年に創業。現在は同氏のひ孫に当たるゴッドフレイ家の3兄弟が経営している。

この店にクリスマス・ディナーのお薦めを尋ねると、「フリー・レンジ・ホール・スリー・バード・ロースト(5キロで137.59ポンド)」という聞き慣れない名称を教えてくれた。3兄弟の一人であるクリスさんによると、異なる3種の鳥肉を組み合わせた逸品。表面を覆っているのは肉付きの良いフリー・レンジのガチョウ。その内側に最高級の鶏肉として知られる去勢鶏が丸ごと一つ。またさらにその内側にキジ肉が入っていて、それぞれの肉の間はアプリコットとセージ葉で仕切られている。ローストすれば、カリッとした表面と重なり合う肉の旨みを存分に堪能できるのだという。廉価なものでは、1905年の創業時から変わらず、水や化学調味料を加えずにつくり続けているという各種ベーコンが人気だ。

7 Highbury Park, Islington, London N5 1QJ
Highbury Islington駅から徒歩15分
☎ 020 7226 2425
営業時間:月~土 8:00-18:00
www.godfreys.co
*Finsbury Parkにも支店あり

5ツ星ホテルと同じ肉が食べられる
Allens of Mayfair

  • Allens of Mayfair
  • Allens of Mayfair
  • Allens of Mayfair
  • Allens of Mayfair
  • Allens of Mayfair

豪奢な建物が並ぶロンドン中心部メイフェア地区で、窓際に大きな肉の塊を吊るしたお肉屋さんを見かけたことがある人は多いのではないだろうか。ヴィクトリア様式の建物の入り口付近に敷き詰められたモザイク・タイル。主役は人間ではなく肉であると言わんばかりに、店のど真ん中で堂々と肉を切り分ける職人たち。そんな風景から、コノート、クラリッジズ、ドーチェスター、バークレーといったロンドンの5ツ星ホテルへと肉を提供するこの店の矜持と、創業120年の歴史が感じられる。

クリスマス・ディナーには、ブロンズ・ターキー(1キロ当たり11.50ポンド)を薦めてくれた。ロンドン近郊ケント州にある農場で食肉処理まで遂行。育成した場所で食肉処理を行うのは英国では非常に珍しく、上質な肉を生産するために、フード・マイルを短縮し、かつ七面鳥へストレスを与えることを避けるのが目的だという。ハーブを添えて、クランベリー・ソースと一緒にいただくのが美味。また食べやすいよう背骨が切り取られたジューシーなラム・ラック(1キロ当たり38ポンド)は、フライパンで軽く色を付けるように焼いてからローストするのがコツなのだとか。

117 Mount Street, Mayfair London W1K 3LA
Green Park/Bond Street駅から徒歩10分
☎ 020 7499 5831
営業時間:月~金 8:00-18:00、土 8:00-17:00
www.allensofmayfair.co.uk

若きエネルギーに満ちたお肉屋さん
Provenance

  • Provenance
  • Provenance
  • Provenance
  • Provenance
  • Provenance

家畜という言葉が、緑に彩られた田園風景の中で育てられる動物を意味していたのは今は昔。大手スーパーマーケットなどに流通しているブロイラーなどは、暗い室内でまともに歩行さえできないままに育てられているという。そんな状況に苛立ちを覚え、「ロンドンには良質の肉を提供する店が少ない」と感じていた農業大国ニュージーランド出身の若者たちが一念発起。「フリー・レンジ」と「草を飼料として育てられた」という2つの条件を満たした肉を扱うことをコンセプトとして、2013年にこの店を創業した。肉屋というと、どうしても昔のなじみで通う主婦たちが利用するイメージがあるが、同店にはノッティング・ヒル地区に住むたくさんの若者たちが訪れる。

クリスマス・ディナー用の肉の注文にはオンライン予約が必須で、ロースト料理には七面鳥に加えてガチョウがお薦めとは同店のマネージャーを務めるトムさんの弁。牛の腰部の一番おいしい部分を切り取ったサーロイン、またはあばら肉の最も柔らかい部分であるリブアイを繊維に対して直角に切ったステーキ(ともに1キロ当たり31.99ポンド)が、一年を通じての売れ筋商品となっている。

33 Kensington Park Road, London W11 2EU
Ladbroke Grove駅から徒歩5分
☎ 020 7229 8814
営業時間:月~土 8:00-19:00、日 10:00-16:00
www.provenancebutcher.com

 

ロンドンから東京に伝えるパラリンピック

ロンドンから東京に伝えるパラリンピック 2012年から2020年に託された未来

1964年の東京パラリンピック開催からちょうど50年が経過し、2020年の東京パラリンピックまであと6年を切った。誰もが「史上最高のパラリンピックだった」と口をそろえる2012年大会の開催地となったロンドンは、世界で唯一2度目の夏季パラリンピックを開催する史上初の都市となる東京にどんな思いを託したのか。選手、メディア、ボランティア関係者たちに話を聞いた。

人物ドキュメンタリーではなく、
試合そのものを中継してほしい

競技選手

国枝慎吾選手世界ランキング第1位の車いすテニス選手
国枝慎吾選手

1984年2月21日生まれ。9歳のときに脊髄腫瘍のため車いす生活に。パラリンピックにおいては、2004年の アテネ大会における男子ダブルス、2008年の北京大会と2012年のロンドン大会男子シングルスで金メダルを獲得。今季は車いすテニスの4大大会におけるグランドスラムを達成し、現在、世界ランキング第1位。2009年より車いすテニスでは日本初となるプロ選手として活動している。
www.tennis-navi.jp/blog/shingo_kunieda

純粋にスポーツを観に来てくれた観客

パラリンピックは過去3大会に出場しました。アテネ大会のときはあまり観客がいなくて、北京大会は会場の盛り上がりがいまいちという印象を受けました。ただロンドン大会の会場は、純粋にスポーツを観に来てくれた観客であふれていたんです。これは選手にとって最高の栄誉だと感じましたね。「ロンドンのパラリンピックが一番良かった」と本当に誰もが口をそろえて言いますし、僕もそう思います。あれよりも良いものを2020年の東京に持って行くことができたらいいなという思いはありますね。  

ただあくまで仮の話として、もし今年、東京でパラリンピックを開催していたら、ロンドンほどは盛り上がらなかっただろうなと思います。車いすテニスの試合で、例えばあの有明コロシアムのコートを満席にするのはまだ難しいんじゃないかな。だから、今後6年間の選手やメディアの活動というものが、大きな鍵になると思います。その間に一人でも多くの方に興味を持ってもらうことが、パラリンピックの成功につながるのではないでしょうか。

観て面白いと思えるレベルに達している

テレビ取材などの依頼をいただくことがあるのですが、僕の生い立ちなどを追った人物ドキュメンタリーを内容としたものが多いんですよ。ごく正直な希望を言わせてもらえるならば、人物ドキュメンタリーを放映するよりも、試合そのものを中継してほしい。車いすテニスの試合は、そのまま中継して面白いと感じてもらえるだけのレベルにもう達していると思うので。試合を観てもらうだけで、「ああすごいな」と言ってもらえることが選手としては一番大事。インタビュー記事やドキュメンタリー映像はあくまで補足程度に留めてもらって、とにかくまずはプレーを流してほしいなというのが正直な気持ちです。試合中継を流してもらえさえすれば、車いすテニスの魅力は絶対に伝わると思います。

車いすテニスの男子シングルスにおいては、僕とフランスのステファン・ウデ選手の対戦が特に面白いと思いますよ。彼とはパラリンピックのロンドン大会の決勝でも対戦したのですが、オフェンスのウデと、ディフェンス・カウンターの僕という構図になっているんですよね。例えるならば、男子テニスにおけるフェデラーとナダルのような図式です。プレーしている僕自身が面白いと感じているし、あの試合を観るのもきっと面白いだろうなと想像します。やっぱり観ていて面白いのがプロの試合だと思うので。

国枝慎吾選手
今年7月にイングランド中部ノッティンガムで開催された
ブリティッシュ・オープンで優勝し、記念撮影をする国枝選手

日本企業が支える障害者スポーツ

僕は2009年にプロに転向したんですけれども、その際にスポンサー企業に選手を支援してもらいながらプレーしていくという形式を整えようと考えました。車いすテニスで世界ランキング第1位になっても食べていくことができないと、同じように車いすテニスで世界を目指そうという人が今後出てこなくなるだろうなと思ったからです。車いすテニスにおけるほかの日本人選手の多くも同じような環境でプレーしています。つまり選手はスポンサーを募って、企業から支援してもらい、世界を転戦する。このシステムが今すごく機能し始めているんです。一方で、他国ではどちらかというと国が支援するという側面の方が強いと思います。本音を言えばそれはそれですごくうらやましいのですが、ともかく日本では企業の支援が大きい。これは日本人選手にとって大きなアドバンテージです。

そしてだからこそ、僕は勝ち続けなければならない。これまで勝ってきたからこそ今の僕がいるし、勝ち続けることが車いすテニスの普及につながっているんですよね。野球やサッカーのような人気スポーツであれば勝っても負けても報道されますが、テニスでなおかつ車いすテニスとなると、本当にグランドスラム大会で優勝し続けていかないと、報道はパタッと終わるんじゃないかという恐れを持っています。

車いすテニスの普及のために宣伝活動にもっと携わるべきという声があったとしても、僕は勝ち続けることでこのスポーツを広めていくという道を選びます。今もテニス以外での様々な仕事の依頼をいただいていますが、練習や試合の日程を最優先して日々のスケジュールを組んでいますし、そのスタンスは今後もずっと変えないでしょうね。あくまでも僕はタレントではなくて、スポーツ選手なので。

障害者スポーツのルールという
文脈で障害を語るべき

メディア

ジャイルズ・ロングさん障害のクラス分け視覚化システム
「LEXI」の開発者

ジャイルズ・ロングさん

1976年7月9日生まれ、13歳のときに発症した骨肉腫のため、右腕に人工骨を充填する手術を受ける。 パラリンピックでは水泳の英国代表としてアトランタ、シドニー、アテネ大会に出場。シドニー大会における100Mバタフライ(S8*1)では世界記録で金メダル。現役引退後はスポーツ解説者などとして活動。 ロンドン大会で使用された障害クラス分けの視覚化システム 「LEXI」を開発した。
www.gileslong.com

LEXIの開発に至ったある出来事

2000年のシドニー大会において、「SB7*2」という障害クラスにおける100メートル平泳ぎの決勝が行われたときのことです。このレースでは、身体の右半分に障害を抱えた英国代表選手と、両腕がない中国代表選手が大接戦を演じました。結局、英国代表選手が僅差で勝利したのですが、このとき手を使うことができない中国代表選手は頭でタッチをしてゴール。このテレビ映像を観た私の友人たちの間では、「頭でゴールするなんて、あの中国代表選手はすごい!」といった話題で持ちきりでした。

あの中国代表選手が「すごかった」ことは間違いありません。ただ英国代表選手の方がすごかったから、英国代表が金メダルを得たわけです。なのに、あのときには中国代表選手の方が本当の勝利に値するのではないかといったような雰囲気がありました。この出来事を通じて、障害のクラス分けについてのルールを理解しない限り、観客はパラリンピックを公平なスポーツとして楽しむことはできないという思いを強くしたのです。

私は幼いころから、グラフィック・デザイナーとして働く父親に、複雑なことを簡単に説明したいときには絵を見せることが重要だとよく説かれていました。そこで、父の言葉を思い出しながら、現在では「LEXI」として知られる、漫画のようなキャラクターを使って障害のクラス分けを説明する方法を思い付いたのです。

LEXI 障害クラス分けの視覚化
ロングさんが開発したLEXI。緑は障害なし、赤は重度の障害があることを意味し、身体の各所における障害の重度を示すのに使われる。チャンネル4は、本システムを2014年のソチ冬季パラリンピックでも活用した

「障害クラス分けの視覚化」への反発

アテネ大会と北京大会の開催前にもLEXIの原型となるアイデアを両大会の放映権を持つBBCに持ちかけていましたが、採用されず。ところがロンドン大会の放映権を獲得した民放局チャンネル4の関係者に提案すると、興味を示してくれたのです。それから、プログラマーやデザイナーの力を結集させて、絵の下に簡単な説明文を入れたり、音声を吹き込むなどの仕組みを整えたりした末に、LEXIが完成し、チャンネル4に採用してもらうことができました。

「障害のクラス分けを視覚化する」という試みに対する反発もありました。代表的なのは「観客はパラリンピックで競技を観たいのであって、障害の詳細を知りたいわけではない」というもの。ただ皮肉なことに、障害について語るのを避けようとすればするほど観客は障害のことばかりを意識してしまうのです。実際、これまでパラリンピック観戦と言えば、興奮よりも困惑の方が多かったのではないでしょうか。「なぜ両手がない人が、両手がある人と同じレースに出ているのか。不公平じゃないか」と困惑気味に話しながら観戦しているうちに、肝心のレースが終わってしまうというようなことがたくさんあったと思うのです。一方で、障害のクラス分けというルールさえ理解すれば、観る人は競技だけに集中できる。ロンドン大会ではLEXIを採用したことで、「パラリンピックのルールを語る」という文脈において障害を取り上げることができました。これは大きな前進だったと思います。

障害者スポーツが持つ新しい楽しさ

障害者スポーツについてどう語るべきか。そもそも「障害者」という言葉を使っていいのか否か。障害者スポーツと聞くと、楽しむよりも前にこうした様々な疑問が浮かんでしまう人がいるかもしれませんね。もちろん、一般的に侮辱表現とされている言葉を使ってはいけません。またかつては当たり前のように使われていた言葉が、現代では差別表現と見なされてしまう場合があるというのも正直なところ厄介な問題です。一方で、ただ「慣れていない」という理由によって、少々の誤解を生じさせたり、間違いを犯したりした人に対しては周囲が寛容にならなければいけないとも思います。例えば、パラリンピックを純粋に楽しもうとしている人がちょっとした間違いを犯し、そうした対応や発言のせいで誰かを怒らせてしまったとしましょう。その場合において悪いのは、小さな間違いを犯した方ではなく、無暗に怒る人の方だと私は考えます。

スポーツの世界において、もはや目新しいものはそれほど多くありません。障害者スポーツには、ほかのスポーツが既に失ってしまった「新しさ」がある。その新しい楽しさを一人でも多くの人に知ってもらうために、私はLEXIの機能をより進化させながら、障害者スポーツの魅力を世界に広めていきたいと思っています。

*1 障害者水泳競技のクロール、バタフライ、背泳ぎにおいて、1番を最重度とするクラス分けの8番目に相当する障害レベル。
*2 障害者水泳競技の平泳ぎにおいて、1番を最重度とするクラス分けの7番目の重度に相当する障害レベル。

東京が多様な価値観を受け入れる街として
生まれ変わる機会にしたい

ボランティア

西川千春さん大会ボランティアにおける
通訳部門のチーム・リーダー

西川千春さん

1960年生まれ。コスト削減管理、事業展開サポート、調査案件受託などを中心とするコンサルタント会社を経営する傍ら、ロンドン五輪のボランティアとして、柔道や卓球などの競技が行われたエクセル会場における通訳チームのリーダーを務める。2014年のソチ冬季五輪にもボランティアとして参加。NPO法人「日本スポーツボランティアネットワーク」のプロジェクトに携わるほか、大学での講演やスポーツボランティア講習会での講師としても活動中。目白大学外国語学部英米語学科非常勤講師。
http://www.ssf.or.jp/topics/sochi/

五輪とパラリンピックを区別しない

2012年に開催されたロンドン五輪では、ボランティアとして出場選手へのインタビューの通訳などを担当しました。実は私はロンドンのパラリンピックそのものには参加していないのですが、ボランティア研修は五輪もパラリンピックも同じ。2012年のロンドン大会においては五輪とパラリンピックを区別せず、一つの組織委員会で両大会を総合的に統括したからです。

ロンドンでは、英国代表チームの祝勝パレードを、五輪選手とパラリンピック選手が一緒になって行いましたよね。パラリンピック開幕前に、五輪選手だけの祝勝パレードを東京で行った日本とは対照的でした。今年7月から8月にかけてスコットランドのグラスゴーで開催された総合競技大会のコモンウェルス・ゲームにおいても、陸上や水泳などにおける障害者スポーツ競技を同時開催。この「五輪とパラリンピックを区別しない」という考え方は、今後の潮流になっていくのではないかと思います。

皆の力で成功させなくてはならない

「東京でのパラリンピックは、ロンドンほどの成功を収めることができないかもしれない」と不安視する声があるみたいですが、やる前からそういうことを言っているようでは駄目ですよ! 皆の力で成功させなければならないんですよ! そもそも英国もパラリンピック発祥の地でありながら、最初からパラリンピックに対して深い理解があったかと言えば、そうでもないと思います。開催前にはパラリンピックの原型となる大会が開催されたストーク・マンデヴィル病院から名を取った公式マスコットの像を街中に置いて盛り上げたり、パラリンピック選手たちの姿とともに「Superhumans(超人)」とのメッセージが書かれたテレビCMを流したりといった様々な取り組みが行われました。特にあのCMに関しては、まさに超人的な能力を発揮できる人たちが集まった大会であるというメッセージがとても魅力的だったと思います。  

そしていざ開幕したら、開催期間中はチャンネル4が文字通り全日にわたってテレビ中継しましたよね。しかもテレビ中継だけではなく、オンラインで大会の様子をつぶさに追うことができたのには驚きました。大手スーパーのセインズベリーズが全面的にパラリンピックのスポンサーを務めたというのも画期的な動きだったのではないでしょうか。こうした一連の試みの甲斐もあって、ロンドンのパラリンピック選手たちは国民のヒーローになったのです。

ロンドン五輪ボランティア
ロンドン五輪にボランティアとして参加した際の西川さん(中央)

補助の人に尋ねられたら誰に答えるか

東京での五輪とパラリンピックの開催には、東京が多様な価値観を受け入れる街として生まれ変わるためのきっかけづくりという意義があると思います。ロンドンは典型的な多文化社会ですよね。様々な国籍や文化が存在する都市であるというだけではなく、異なる文化を持つ人々に対してどう振る舞うべきかという教育が徹底されている都市でもあります。障害の有無だけに関する話ではありません。年齢、性、宗教、性的指向などを理由として差別をしてはいけない、ということが自然に認識されていると思います。そういった成熟国家として持つべき常識を学ぶという意味でも、日本にとってパラリンピックは良い機会になるでしょう。多様性を許容する意識を学ぶ機会と言い換えてもいいかもしれませんね。

五輪とパラリンピックのボランティア研修においても、多様な人々への対応の仕方についての指導を受けます。例えば車いすに乗られている方が一人いるとしましょう。その方には補助の方が同伴している。同伴者が車いすの人に代わってボランティアに質問したとき、そのボランティアは誰に向かって回答すべきか。この場合は車いすに座っている人の目を見て話さなければならないのです。または外見からは男女どちらか区別がつかない人がいるとします。その方にトイレを案内するときはどうするか。そういうときは「男子トイレはあちらにあり、女子トイレはこちらです」と両方を案内すべきであると教わりました。ボランティア研修を通じて「差別と受け取られる可能性のある対応をしてはならない」という意識を学んでいったのです。

東京での五輪そしてパラリンピック開催はこうした意識について学ぶ絶好の機会となるでしょう。この機会を通じて、日本は新たな開国を迎えるとさえ私は思います。だから、皆で盛り上げていきたいですね。

日本人選手を応援しよう!

車いすテニスのマスターズ
NEC Wheelchair Tennis Masters 2014
2014年11月26日(水)~30日(日)

車いすテニスのマスターズ車いすテニスの年間ランキング上位8人が出場する大会「マスターズ」がロンドンで開催されます。会場は、ロンドン五輪とパラリンピックのメイン会場となったクイーン・エリザベス・オリンピック・パーク。日本からは、男子シングルス世界ランキング1位の国枝慎吾選手と同8位の三木拓也選手、そして女子シングルス世界ランキング1位の上地結衣選手が出場する予定です。

11月26日(水)~30日(日)11:00‐17:00ごろ
入場料: £10~15
場所: Lee Valley Hockey and Tennis Centre,
Queen Elizabeth Olympic Park, London(屋内) 
最寄駅: Stratford
Tel: 0871 220 0260
www.lta.org.uk/fans-major-events/Wheelchair-Tennis-Masters-2014

読者特典!英国ニュースダイジェスト
読者特典!

11月29日(土)に開催される男女シングルス準決勝の試合後、特別ブースにて、日本人選手との握手やサイン及び写真撮影を行える機会を用意致します。日本人選手が順当に勝ち進み、準決勝に進出することを願いながら、当日は皆で応援に出掛けよう!

*29日(土)以外にも、出場選手がサインや写真撮影に応じてくれる可能性があります。ご希望の方は、当日会場にいる大会関係者に直接お問い合わせください。

*日本人選手が準決勝に出場しなかった場合には、本機会を用意できない場合があります。あらかじめご了承ください。各試合の開始時間や組み合わせは、各試合実施日の前夜に発表されます。29日(土)の日程の詳細につきましては、英国ニュースダイジェストのSNSサービスなどを通じてお知らせする予定です。


 

今井美樹 インタビュー

今井美樹 インタビュー ロンドンの自然と音が培った「ふくよかさ」

2012年8月に来英した直後から、ライブを望む声がロンドンの至るところで聞かれていた。
それから実に2年以上が経過。人々の「なぜ」「まだ」がいまだ衰えを見せぬ中、
ついに2015年1月、ロンドンのカドガン・ホールでライブが行われることが決まった。
歌手、今井美樹。このロンドンで2年間、一人の女性として、
歌手として、何を考え、どのように生活してきたのか。
ロンドン市内のオフィス・ビルで、来英直後からライブ決定に至るまでの心境について聞いた。
(本誌編集部:村上 祥子)

MIKI IMAI

1963年4月14日生まれ。宮崎県出身。高校卒業後に上京。83年、女性ファッション誌にてモデルとしてデビュー。翌84年から女優としての活動をスタートする。86年「黄昏のモノローグ」で歌手デビュー。その後は数々の連続ドラマに主演する一方で、「瞳がほほえむから」(1989年)、「PIECE OF MY WISH」(1991年)、「PRIDE」(1996年)などの楽曲が大ヒットとなる。2012年8月、家族とともに来英。翌13年にはユーミン(松任谷由美)のカバー・アルバム「Dialogue」をリリース。14年5月に日本全国6カ所でコンサート・ツアー「Dialogue」を実施した。

ガラスの扉が開け放されたオフィス・ビルの小部屋。
ひんやりとした風にのって、シャッター音の合間から微かなハミングが聴こえてきた。
その場の空気を一瞬のうちに明るく染め変えるような笑顔を浮かべて、
彼女は流れるように次々とポーズを決めていく。
その口元が、小さく動いていた。
「写真撮影は苦手。だからいつでも音楽をかけているんです。
音楽がいつも私を助けてくれる。音楽がないときには、自分で歌っちゃうの」。
歌手、今井美樹の生活には、いつも音楽がともにある。

転がり続けてここまでたどり着いた

今井美樹2012年8月、今井美樹は夫でミュージシャンの布袋寅泰氏と一人娘とともに、「一家の長の夢」だった英国へとやって来た。49歳という年齢から始まった初の海外生活は、当時も今も「アップアップ」。「日常があるのでなんとか前に進むしかなくて、転がり始めたら、今のところはここまでたどり着きましたという感じですね」。「自分は自分のペースでゆっくりやっていくしかない」、そう思っていた彼女にとっての一番の気がかりは、当時10歳になる娘さんのことだった。

「一番心配だったのが娘のことでした。娘がこの国に、この街に、この学校に慣れてくれるだろうか。もちろん、色々なことがあるでしょう。でも学校に行きたくないとしぶったことがなかったんです。初日から「友達ができた!」って帰ってきて。こちらに来る直前、日本で英語を集中して学ぶ環境があったんですけれども、それでも大変だと思うんです。友達にも恵まれたし、学校が非常にサポート力のあるところだというのも大きいでしょうが、新しい場所での学校生活を、自分の中で抱きしめてくれている。彼女から泣き言が出なかったということが、何よりも私たちの背中を押してくれましたね」。

現地校に通い、あっという間に英国での生活に慣れた娘さん、今ではこんな笑い話も。「夫は言いたいことがすごくはっきりある人で、それを自分の言葉で言うから、英語がとても人に伝わりやすい。でも娘の場合は学校で習ったり、友人と話す生きた英語。ですから夫が自分の友だちに会って話し掛けたりすると、『ごめんね。パパ英語が下手だから』なんてこっそり言うんですって。それで夫が『俺、あいつに英語が下手だからって言われた』なんて落ち込んだり(笑)」。

娘さんが充実した日々を過ごしていることに加え、もう一つ、今井さんの英国生活を支えたのが、来英したばかりのころの天気だった。緑濃い木々と真っ青な空の色のコントラストが視界を鮮やかに彩る夏の終わりから秋の初めにかけての日々。「キラキラとした美しい光」が、「旅人」ではなく「生活者」としてロンドンに根を張った今井さんを優しく包み込んでくれた。

「今お借りしている家の庭がとても好きなんです。最初に来たころ、庭が私たちを受け入れてくれたというか。プラムやリンゴがたわわに実っていて、それがものすごくおいしくてびっくり。朝起きて、娘に『プラムとっておいで!』って言って朝食やおやつに出したり、去年の夏にはリンゴでアップル・パイを作ったり。整然とした作られた庭じゃなく、ワイルド。季節を感じるの。葉が落ちたと思ったら春になって若葉が出てきて、徐々に花が咲いて――季節がめぐって、自然が生きていること、自分たちも一緒に生かされていることをすごく感じる。東京に来てからずっと仕事ばかりだったから、今はロンドンでの暮らしが非常に人間的だと思うし、娘にもそういうことを感じられる人になってほしいですね」。

かつて自分とともにあった音楽たち

今井美樹自宅があるのは、子供のいる家庭が静かに日常生活を営む住宅地。家事をこなし、娘さんの学校の送り迎えをし、「渋滞のエリアを運転するときに近道を教えてもらったりするだけでハッピー(笑)」という、「ごく普通の毎日」を慈しむように暮らす今井さんだが、その一方で、やはり日本から遠く離れた海外の地で生きる孤独感や厳しさを感じることもあった。

「娘は学校、夫はスタジオに行っていて、昼間一人でキッチンにいたりすると、正直、寂しいなと思うこともあったんです。言いたいこともなかなか伝わらないとなると、とりあえず外へ出てみようという気にもならないんですよね。そういうときには、新しい音楽を聴く元気もなくて、自分が歌い始めた80年代後半ごろにすごく好きで聴いていた曲を聴くことが多くなるんですね。そうすると自分の気持ちが踊るんですよ。自分自身も若くて、アグレッシブに色々なことにトライしていたあのころ一緒に歩いてきた音楽って、今もすごく自分の心を湧き上がらせてくれる。キッチンで洗いものしながら踊りまくったりして(笑)、すごいな音楽って、と改めて感じました」。

そして何とか前に進み続けて1年が経ったころ、再び生活のリズムに変化が訪れる。昨年夏から今夏にかけて、日本の女性誌の表紙と巻頭のファッション・ページを担当することになった今井さんは、ほぼ2カ月に1回の割合で日本に戻っては撮影をこなした。それに加え、昨年末には敬愛するユーミンのカバー・アルバム「Dialogue」をリリース。プロモーション活動なども行うことになり、ロンドンに来る際に一度は仕事のモードが断ち切られ、歌手、今井美樹としての立場よりも家庭人としての立場を優先してきた生活から、「急にスイッチを入れてエンジンをバーってふかし続けないと前に進めない」状態へと追い込まれた。

「一番大事な、自分を助けてくれる大好きな音楽の中に自分自身が気持ち良く入りたいのに、気持ちも体もなかなかついていかない。本当にやりくりするのは大変でした。2カ月に1度は必ず娘を置いていかなければならないというストレスも大きかったですね。これまで日本でもしてきたことですが、この距離で続けるのは思いのほか大変でした。ただ、その忙しい中で色々な仕事をやらせていただき、自分も頑張ったし、スタッフも一生懸命サポートしてくれたことが前に進む助けになってここに至っているので、きっとその流れからもロンドンでライブをするということに気持ちがつながっていったんでしょう。その意味でも去年一年は大きな意味があったと思います」。

「職業人としての責任」を胸に

今井美樹来年1月末、ロンドンのカドガン・ホールで、来英後初となるライブ・コンサートが行われる。決意するまでの2年という時間。ロンドンでの日常に慣れるために「アップアップ」し、ロンドンと日本という距離を背負いながら仕事に忙殺されつつも、常に一歩一歩前進してきたこと、そしてその中で昔愛した音楽の大切さを改めて感じたことから、ゆっくりと自分の中の気持ちがロンドンでのライブへと傾き始めていく中で、今井さんには乗り越えるべきもう一つの壁があった。「ロンドンに来て、ライブを再開するならば絶対日本から始めたかったの」――頑ななまでにそう決めていたという彼女の心にあったのは、2011年3月に起こった東日本大震災だった。

出産後、比較的すぐに仕事を再開したという今井さん。年齢のこともあり、それまでと同じようには体力ももたず、仕事に子育てにと多忙な日々を過ごすうちに、本来「音楽のなかにいられたら幸せ!」と思っていたのに、いつのまにか「ねばならない」という気持ちにがんじがらめになっていた。そんなときに、震災があった。「デビュー25周年を迎えて、4月の前半にリハに入って後半からツアーがスタートすることになっていたんです。しかも11年ぶりにドラマに出演していて、最終回を撮っている最中。被災地に行きたいとか、娘のところに戻ってあげたいとか、気持ちがあちらこちらに飛んでいました」。そんなとき、自分が担当しているラジオ番組のディレクターから、様々な番組のナビゲーターが「PIECE OF MY WISH」という彼女の曲を頻繁に流していることを聞いた。どんなときでも自分自身を信じてほしいと、聴く者を包み込むように、力強く歌われるこの歌、実は今井さんにとっては「背負うのが重くなっていた」その曲だった。

「『PIECE OF MY WISH』はもう皆の曲だから、皆が大好きで愛してくださる曲だからこそ、背負うことが苦しくなっていました。数年間、どうやったらいいかずっと悩んで、チャレンジしては「うーん、越えられない」、でも皆が一番聴きたい曲……。そのギャップに悩んでいましたが、ディレクターからその話を聞いて、ああ、歌わなきゃいけないって思ったの。この曲は必要としている人たちの曲で、そういう人たちの心に灯火を灯すような存在になってくれているのだとしたら、その曲を持っている人間として責任を持って歌わなきゃいけないって、本当にそう思ったんですよね」。

「音楽が好きだから音楽をやっています」と語ってきたが、歌手としての自分の立場を「職業人」として明確に認識するようになった。「やっと社会に恩返しができる。やっと歌を歌う人間としての意味を見出して、その気持ちを胸に音楽をやっていくんだと思えるようになった」、その矢先に来英が決まった。「パツンと気持ちを断ち切られてしまった」からこそ、ライブは日本で待ってくれている人たちの前から始めたかった。そして今年5月、日本全国6カ所でツアーを敢行。2年越しの「責任」を果たした翌朝に、一通のメールが今井さんの元に届く。「目を覚ましたら、布袋さんから『この日を待っていました』っていう長々としたメールがきていて(笑)。こちらの人たちは、君がライブをやるのを待っている、と。やっぱりその気になりますよね」。今井美樹のロンドンでのファースト・ライブが現実的に動き出した瞬間だった。

日本語を丁寧に歌いたい

今井美樹ライブでは、今井さんのこれまでの代表曲や、カバー・アルバム「Dialogue」からの楽曲が歌われる。新曲や英語の曲を歌おうとは「考えたこともなかった」。耳慣れぬ英語の洪水が意味を成す前に流れていく中で、耳ではなく、心の中にすっと入り込んでくる母国語の言葉たち。昔聴いた日本の曲の数々が、ロンドンでの2年間を支えてくれた今だからこそ、英国に住む日本人が「距離がある中で、日本の『何か』を待つ」気持ちを、身をもって分かるようになったという。「今井美樹じゃなくても良いのかもしれない。ただ、この時間、日本語の歌を聴けて良かったと思っていただければ。日本語で歌われている曲を、丁寧に、日本語で伝えよう。そうすることで、ライブを観に来てくださった方たちが、何かを思い起こしてくれて、気持ちがリフレッシュできたり、明日も頑張っておいしいお弁当を作ろうって思ってくださればうれしいです」。

ライブのメンバー構成は、今井さんに加え、「Dialogue」でサウンド・プロデューサーを務めたトニー賞受賞ミュージシャンのサイモン・ヘイルと、彼が選んだ4人のカルテットの計6人。「Dialogue」の制作、そしてその後日本で行われた「Dialogue」ツアーで共同作業を重ねてきたサイモンの存在とその共同作業の行程もまた、現在の今井さんを力強く支えてくれている。

「最初にサイモンたちとレコーディングを始めたのは、オーナーさんが手作りでマイクを作っているような、いかにも英国らしい、小さなスタジオ。まずはマイクを何本か立てて、どのマイクが良いかを決めるんですが、そのときにオーナーのフィリップが、通常日本でのレコーディングのときには選ばれることのない、いつもより声のLOWもしっかりと録れるタイプのマイクを選びました。それは、始め戸惑いであり、でもとても新鮮な出来事でした」。今井美樹の歌声と言えば、どこまでも澄み渡る高音の印象が強いが、その一方で普段の声のトーンは低めで、胸の奥に心地良く響くまろみを帯びている。どちらが良いというものではない。ただ、真ん中から下の成分が含まれる「ふくよかな声」が選ばれたことが、「あなたのその声でいいんだよ」と言われたようで新鮮だったし、サイモンたちも「その声に沿って」演奏してくれた。

その後、半分ほどレコーディングをしてから日本で歌入れをし、ロンドンで残りの作業を行ったが、ロンドンと日本、そして同じロンドンでもスタジオによる違いが大きいことに驚かされたという。「かつて何度もロンドンでのレコーディングをしてきました。でも当時は、音作りは基本的に日本で作って、それをそのままロンドンのスタジオに持ってきてやるというスタイル。それが今回はすべてロンドンのシステムでレコーディングを始めて、日本そしてロンドンの別スタジオでまた歌を録る……。同じ『ロンドン』レコーディングでも過程が違ったことで、色々気付いたことがありました。日本ではプロデューサーとかアーティストによって違いが現れるけれど、こちらはスタジオに色があるのかもしれない。だからこそロンドンにはこんなにも色々な音楽があって、それがアーティストの特徴にもなっているのかなという気がしました」。暮らし始めたからこそ出会えたスタジオで見つけた新しい発見。この経験を通して、これだとこだわり過ぎるのではなく、「日常の中でロンドンのあちらこちらに散らばっている色々な音」でチャレンジしていきたいと感じるようになった。

ツアーではまた、共通言語がないことで学んだこともあった。「それまではきっと、こだわっていることを全部やろうとしていたんですよね。だけど、こちらの考え方を理解しようとしてくれているけれども、国の違いなどで伝わらない部分があるのだとしたら、そこはこだわっても仕方がない、その代わり、ここだけは大事にしたいと思うようになりました。だんだんやりたいことが明確に、コンパクトになってきたんです。あとは自分がステージに立つことだけ頑張っていれば、彼らが本当に美しい音楽を奏でてくれるから」。

そうして生まれたステージは、これまで今井美樹を見つめ続けたファンやスタッフにとっても「何かが今までと違う」と感じられるものだったという。「『何かが違う』って、作為的じゃなくてリアリティーがあると思うんです。変えようとしたわけじゃなく、ただすごく丁寧に、大切にやろうと思ってやった結果。うちのスタッフが、『今までで一番好き』って言ったの。それは多分、この2年という歳月の中で見つけた、日常の小さな幸せだったり、何でもないことの積み重ねだったり、この国の持つ豊饒さだったり、そこから生まれるミュージシャンたちの音楽の温度だったり、色々な要素がたまたま一つの形になって私をふわーっと持ち上げてくれたんだと思うんです。それを経験してきたということがすごく大きい」。

ロンドンのライブでは、今井さんに加え5人のミュージシャンというシンプルな構成になるだけに、試される部分も多い。「バンドの数を減らすということは、オリジナル通りにはならないわけだから、ある意味自らに足枷(あしかせ)をはめるわけです。でもその一方で自由に解釈できるということだから、すごく楽しい。サイモンが様々な色彩を付けてくれることを信じていますし。皆さんがきっと待ってくださっている曲も当然やりますし、せっかくサイモンやカルテットと一緒なのだからトライしてみたい曲も数曲あります。ヒットチューンだけじゃなく、ふくよかな音楽をやっていきたい。せっかくあんな温かい音を出す素敵なホールでできるんですから、その素晴らしい音の響きの中に自分がいたいですよね」。

「何か」が分からないままに自由でいたい

カバー・アルバムをリリースし、日本でのツアー、そして来年1月にはロンドンでのライブ。すると次には当然、オリジナルの新曲は、となるわけだが、実はこちらもライブの準備と同時進行の形で、少しずつ動き出している。曲の約半数を手掛けるのは、布袋氏を含めた日本の作家たち。そして残りはサイモンを初めとする英国のミュージシャンたちに提供してもらう予定だ。「新しい音楽プロデューサーにもお願いしますが、例えばその人に日本の作家さんの曲を任せてみるとか。あの人の曲をイギリスのこの人に任せたらどんな花が咲くんだろうって、自分自身が一番ワクワクしています。こうしたい、ああしたい、というよりも、やってみたらこうなった、だったらもっとこうしてみたいといったように、オリジナルだからこそ自由にやりたい。蓋を開けてみないと全然分からないけれど、音を楽しむ『音楽』が溢れている国だから、きっと何とかなるんじゃない? って(笑)」。

自分の年齢からすると、今後アルバムは限られた枚数しかつくることができないだろう。好きなことばかりをやってもいられない。だからこそ、楽しまなければもったいないし、庭や日差しに抱かれて「深呼吸ができる」ここロンドンで、心を自由にさせて音楽に取り組んでいきたい。日本とロンドンで何が違うのか、何もかもが違うようにも感じるし、何も違わないこともあるようにも思う。「日本のライブで感じた『何か』が違うという感覚にもつながっているんでしょうが、その『何か』が分からないままでいたい。そこの部分がふくよかさだと思うから。日本だったら、全部に明確な理由がある。でもロンドンでは、うまく理由を説明できないという自由さを味方にして、音と楽しんでいきたいですね」。

日本で目覚めた歌手としての「責任」を胸に抱きつつ、音と戯れる喜びを噛みしめる日々。ロンドンという地で煌めく日差しを浴びつつ循環する自然の中に身を置き、色鮮やかな音を吸収し続ける歌手、今井美樹は、今まさに実りのときを迎えようとしている。

MIKI IMAI New Year Concert

2015年1月23日(金) 19:30
£30〜40
Cadogan Hall
5 Sloane Terrace, London SW1X 9DQ
Tel:020 7730 4500(BOX OFFICE)
最寄り駅:Sloane Square
www.cadoganhall.com
 

ロンドン・フィルム・フェスティバル 2014

ロンドン・フィルム・フェスティバル

2014年10月8日よりロンドン映画祭が開幕する。約2週間の開催期間中に、英国や日本映画を含む世界中から集まった248作品をロンドン各地で上映。
メイン会場となるロンドン中心部レスター・スクエア近辺は、今年も同映画祭に訪れる映画監督や俳優たちの姿を見ようとする観客でごった返すことになるだろう。
大人気のイベントのため、チケットは事前に予約するのが無難。今年の注目作品を紹介する。
www.bfi.org.uk/lff


Opening Night Gala

カンバーバッチが暗号解読者を演じる
The Imitation Game

10月9日(木)15:15 Odeon West End, Screen 2
10月10日(金)20:45 Hackney Picturehouse, Screen 1

The Imitation Game

英国の数学者で第二次大戦中は暗号解読者としても活躍したアラン・チューリングの人生を描いた話題作。BBC の人気ドラマ「シャーロック」のベネディクト・カンバーバッチが主人公を演じる。コンピューターの誕生に大きく寄与する研究を行い、ナチス・ドイツが用いた暗号の解読に成功するなどの功績を残すも、同性愛が違法であった時代に同性愛者であるがゆえに逮捕された末、自殺を遂げたチューリングの人生を、緊張感あふれる物語に仕上げている。

(UK-USA 2014/114分)
監督: モーテン・ティルダム
出演: ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グードほか


Closing Night Gala

葛藤を抱える軍曹役にブラット・ピット
Fury

10月19日(日)19:00 Odeon Leicester Square

Fury

第二次大戦末期に、ナチス・ドイツと対峙する連合国の米国部隊を通じて描く人間ドラマ。軍事訓練さえまともに受けたことがないにも関わらず、戦車の副操縦手として戦地へ赴くことになった新入りの兵士が、戦場の凄まじさを目にしたことで自らの限界を突き破る。屈強そうな外見とは裏腹に内面で葛藤を抱える軍曹を演じるのは、本作のエグゼキュティブ・プロデューサーを兼任するブラット・ピット。本物の戦車を使った、生々しく迫力に満ちた戦闘シーンは見物だ。

(USA 2014/120分)
監督: デーヴィッド・エアー
出演: ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマンほか


Centrepiece Gala Supported by the Mayor of London

平和運動を導く英国人女性の人生を描く
Testament of Youth

10月14日(火)19:15 Odeon Leicester Square
10月16日(木)15:00 Odeon West End, Screen 2
10月17日(金)18:00 Curzon Mayfair Cinema, Screen 1

Testament of Youth

第一次大戦中に従軍看護師に志願し、その後、平和運動に従事した英国人女性であるヴェラ・ブリテンの自伝を映画化。オックスフォード大学で文学に傾倒していたブリテンの学生生活は、第一次大戦によって中断される。従軍看護師として婚約者や自身の兄弟を含む兵士たちが戦場で次々と命を落としていく姿を間近で見た彼女の人生は、やがて大きく変化していくことを余儀なくされる。主人公を演じるのは、スウェーデン女優のアリシア・ヴィキャンデル。

(UK 2014/130分)
監督: ジェームズ・ケント
出演: アリシア・ヴィキャンデル、キット・ハリントン、タロン・エガートンほか


Festival Gala In association with Time Out

英国の国民的画家ターナーの素顔とは
Mr. Turner

10月10日(金)18:00 Odeon West End, Screen 2
10月11日(土)11:00 Odeon West End, Screen 2

Mr. Turner

即興演劇の手法を取り入れた独自の演出で知られる「ハッピー・ゴー・ラッキー」のマイク・リー監督が、英国の国民的画家J・M・W・ターナーを主人公に据えて紡ぎ出す物語。ロマン主義と形容された美しい作品群とは対照的に、同時代の芸術家たちを軽視する傲慢で粗野な中年の男としてターナーを描くことで、作品に広がりと深みを与えている。ターナーを演じるティモシー・スポールは、2014年のカンヌ国際映画祭において本作で男優賞を受賞した。

(UK 2014/149分)
監督: マイク・リー
出演: ティモシー・スポール、ドロシー・アトキンソン、マリソン・ベイリーほか


カンヌで大絶賛された河瀨監督の新作
「2つ目の窓」 Still the Water

10月10日(金)18:15 BFI Southbank, NFT1
10月12日(日)15:30 ICA Cinema, Screen 1

Still the Water

2014年のカンヌ国際映画祭で12分間のスタンディング・オベーションを受けた、河瀨直美監督の最新作。亜熱帯の島、鹿児島県の奄美大島に暮らす高校生の杏子と同級生の界人。杏子の母であるイサは「ユタ神様」として島民の心の拠りどころとなっていたが、病に冒され、死期を迎えようとしていた。人生を全うしたときに開かれるという「2つ目の窓」とは何か。自然と神と人が共存する奄美大島の大自然を舞台に、生命の源と命の連鎖の奇跡を描き出す。

(Japan-France-Spain 2014/116分)
監督: 河瀨直美
出演: 村上虹郎、吉永淳、松田美由紀ほか


色丹島の戦後史を描いたアニメ映画
「ジョバンニの島」 Giovanni's Island

10月10日(金)18:15 BFI Southbank, NFT2
10月11日(土)13:00 BFI Southbank, NFT2

Giovanni's Island

北方四島の一つである色丹島の戦後史を描くアニメ映画。父の言いつけを守り、亡き母親が好きだった宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を毎日朗読する2人兄弟。終戦を迎え、ソ連の兵士たちが一斉に上陸してきたことで、彼らの生活は一変する。島の大人たちが警戒心を強める中で、その兄弟はソ連の将校の娘と心を通い合わせるようになるが、やがて2人の父親がソ連軍に連行されてしまい……。過酷な運命に翻弄されながら生きる島民たちの姿を描く。

(Japan 2014/102分)
監督: 西久保瑞穂
声の出演: 横山幸汰、ポリーナ・イリュシェンコ、谷合純矢ほか


自分の娘の正体は天使かそれとも悪魔か
「渇き。」The World of Kanako

10月13日(月)20:45 Hackney Picturehouse, Screen 1
10月15日(水)15:30 Vue West End Cinema, Screen 7
10月19日(日)20:45 Rich Mix Cinema, Screen 1

The World of Kanako

「このミステリーがすごい!」大賞受賞作のベストセラー小説を「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督が映画化。失踪した女子高生を探すろくでなしで元刑事の父親。学校では成績優秀で誰に対しても優しく接すると評判だった娘の行方を追ううちに、彼女が不良グループと付き合い、覚せい剤を所持していたなどの意外な事実が明らかになる。果たして自分の娘は天使か、それとも悪魔なのか。娘の正体を探りながら混乱を深め、凶暴化していく父親を役所広司が熱演する。

(Japan 2014/118分)
監督: 中島哲也
出演: 役所広司、小松菜奈、妻夫木聡ほか


台湾人監督が描く美しき日本の田園風景
「さいはてにて-かけがえのない場所-」
The Furthest End Awaits

10月15日(水)20:45 ICA Cinema, Screen 1
10月18日(土)15:15 BFI Southbank, NFT2

The Furthest End Awaits

台湾の女性監督チアン・ショウチョンが、日本人キャストとともにつくり上げた作品。東京で自家焙煎カフェを経営していた女性が、幼いころに生き別れてしまった父親を探すために石川県の能登に帰郷。そこで出会ったシングル・マザーのキャバクラ嬢と彼女の子供たちとの交流を重ねていくうちに、新しい生き方を見つけ出していく。本作品の撮影では、日本初の世界農業遺産となった能登の美しい田園風景の中でオール・ロケを敢行した。

(Japan 2014/118分)
監督: チアン・ショウチョン
出演: 永作博美、佐々木希、桜田ひよりほか


チケット入手方法

● オンライン - 公式ウェブサイト(www.bfi.org.uk/lff)から直接申し込む。
● 電話 - ボックス・オフィス Tel: 020 7928 3232(毎日9:30-20:30)

● 会場にて直接
   BFI Southbank Box Office:毎日11:00-20:30
   各フェスティバル会場:当日、最初の作品上映の30分前から販売開始。

● ラスト・ミニット・チケット/ スタンドバイ・チケット
ガラ作品の多くが既に売り切れとなっているが、あきらめるのはまだ早い!
10月2日以降、一旦売り切れとなった作品のチケットが再度売りに出されることがある。ウェブサイト、またはBox Office(020 7928 3232)に電話して問い合わせてみよう。
なお新しいチケットは連日出る可能性があるので、最後までチャレンジを。それでも購入できなかった場合には、スタンドバイ・チケット。通常、上映開始30分前から各上映会場にて当日券が販売される(ただしOdeon Leicester Squareの当日券はOdeon West End、Empire の当日券はVue West End にて購入)。

チケット料金

● BFI Southbank, Ciné Lumière, Curzon Chelsea , Curzon Mayfair, Hackney Picturehouse, ICA, Rich Mix, Ritzy, Vue Islington: £12.50
● Queen Elizabeth Hall: £15.00
● Curzon Soho, Empire, Vue West End, Odeon West End, Odeon Covent Garden: £16.00

● ガラ&特別上映:
● Odeon West End, Curzon Chelsea, Queen Elizabeth Hall, BFI IMAX: £20
● Odeon Leicester Square: £26
● オープニング&クロージング・ナイト・ガラ: £32

● トーク: £17.50

* そのほか、マチネ料金や学生や高齢者を対象とした割引料金あり
 (料金は会場や上映時間によって異なる)
*上映日時などは直前で変更されることがあります。あらかじめご了承ください。


 

シャーロックとホームズのロンドン

シャーロックとホームズのロンドン

19世紀に作家アーサー・コナン・ドイルが生み出した名探偵シャーロック・ホームズを、21世紀の現代人として甦らせたBBCのドラマ「シャーロック」は、2010年の初回放送から現在までに世界180カ国で放送されるほどの人気を博しています。

原作の推理小説でもBBC「シャーロック」でも、その主な舞台はロンドンの街です。
そこで今回は、19世紀のホームズと21世紀のシャーロックが活躍するロンドン散策へとお誘いしましょう。(清水 健)

推理小説「シャーロック・ホームズ」とは

シャーロック・ホームズが活躍する冒険譚は、1887年に発表された「緋色の研究」から1927年の「ショスコム荘」まで、40年にわたり60編(4つの長編と56の短編)が刊行されています。ホームズの生みの親であるアーサー・コナン・ドイル(1859~1930年)は、エディンバラ大学医学部へ進み、そこでシャーロック・ホームズのモデルとなる外科医のジョゼフ・ベル博士と出会いました。ベル博士は患者を一瞥しただけで職業や出身地を言い当てたと言われ、ドイルはその驚くべき観察眼を投影したシャーロック・ホームズという名探偵を誕生させます。ホームズは1881年に出会った相棒のジョン・H・ワトソン医師とともに、ロンドンのベーカー・ストリート221Bに拠点を構え、次々と事件を解決していきます。1891年に「最後の事件」で宿敵のモリアーティ教授と決闘して行方不明になりますが、3年後に「空家の冒険」で帰還。1903年に引退してからは、サセックスの丘で養蜂をしながら暮らしています。

「シャーロック・ホームズ」シリーズが時代を超えて読み継がれているのは、船医として世界を旅し、文学・歴史にも造詣が深かったドイルの豊かな人生経験が生かされた多彩な登場人物たちが魅力的であるのに加え、ロンドンの街並みから英国の田園風景までを鮮やかに描き出す卓越した筆致によって、読者がホームズと一緒に事件を推理しながら情景を思い浮かべられるからです。ホームズの世界を学問として研究してしまう「シャーロキアン」と呼ばれる熱狂的なファンがいるほどです。

「最後の事件」のホームズとワトソン
「最後の事件」のホームズ(イラスト右)とワトソン(同左)

BBCドラマ「シャーロック」とは

シャーロキアンは、コナン・ドイルが発表した60編を正典「Canon」と呼んで愛読し、名探偵の推理を検証したり、さらに記述の中にある矛盾に対し、いかに理論的につじつまを合わせるかを競ったりする知的遊戯「ゲーム」を楽しんでいます。

そしてホームズとワトソンが21世紀に活躍するとしたら、という思考実験から生まれたのが、2010年に初回放送されたBBCドラマ「シャーロック」です。プロデューサーでシャーロキアンのスティーヴン・モファットとマーク・ゲイティスが試写版「ピンク色の研究」を制作、これが好評でシリーズ化が決定しました。原作で描かれた第二次アフガン戦争から130年のときを経て、英国が再びアフガニスタン戦争の泥沼にはまっているのは歴史の皮肉ですが、これがBBC「シャーロック」の構想を膨らますことになり、第二次アフガン戦争に軍医として従軍したワトソンは、アフガニスタン戦争で負傷してトラウマを抱えているという設定に。

この役を演じるのはマーティン・フリーマン、そして高機能社会不適合者を自称する探偵シャーロック・ホームズ役にはベネディクト・カンバーバッチ。現代らしく、互いをファースト・ネームで呼び合う2人が生で感情をぶつけ合いながら友情を育み、協力し合いながら謎解きに挑みます。モファットとゲイティスはこの「シャーロック」に、正典やほかのホームズ映像作品からの引用をちりばめており、正典の読み解きをシャーロキアンが楽しむように、映像を読み解く楽しみがあります。

ベネディクト・カンバーバッチとマーティン・フリーマン
21世紀のロンドンを駆け巡るシャーロック(写真右)とジョン(同左)

時代の社会背景を映し出すシャーロックとホームズ

ストランド・マガジン
第一次大戦中に発行された「ストランド
・マガジン」

今年は第一次大戦が始まって100年という節目の年ですが、ホームズもこの大戦に向けて祖国のためにひと働きしています。「それは8月2日の夜9時のことだった。世界の歴史上もっとも恐るべきあの8月である―― 」で始まる「最後の挨拶」では、引退してサセックスの丘で養蜂をしながら暮らしていたホームズが、アイルランド系米国人のスパイに成りすましてドイツの諜報網に潜入し、第一次大戦前夜にこれを壊滅させます。1917年にこの作品が発表された翌年、ドイルは息子を戦争で失います。

このように実在の事件を絡めた作品は、BBC「シャーロック」にも見られます。例えば、シーズン3の第3話「最後の誓い」は、メディアを支配する恐喝王が審問される場面から始まりますが、これは著名人の電話盗聴事件で議会下院の調査委員会に召喚されたメディア王のルパート・マードック氏を連想させるものでした。コナン・ドイルは「シャーロック・ホームズ」シリーズで様々な社会の矛盾を告発していますが、BBC「シャーロック」もまた、社会派の一面をのぞかせているのです。
「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」(新潮文庫)より

 

シャーロックとホームズのロンドン散策

ホームズは「赤毛組合」で、「ロンドンについて正確な知識を持つのが、ぼくの趣味のひとつなのさ」と語っていますが、ロンドンの街を歩くと、至るところでシャーロック・ホームズゆかりの地に出くわします。

そこで正典とBBC「シャーロック」の舞台となった名所を、双方のエピソードとともにいくつかご案内しましょう。

地図をクリックすると拡大します
ロンドン・マップ

ベーカー・ストリート221B
221B Baker Street

ホームズとワトソンが暮らしていたベーカー・ストリート221番地は、恐らくロンドンで最も有名な住所でしょう。現在も世界中からホームズ宛ての手紙が届き、中には警察からの捜査依頼もあるほどです。ホームズの活躍した19世紀末、ベーカー・ストリートは85番地までしかなく、221番地は架空の住所でしたが、1930年にアッパー・ベーカー・ストリートと一続きになって実在の住所となりました。239番地にはシャーロック・ホームズ博物館が、108番地にはシャーロック・ホームズの名を冠したホテルがあり、ベーカー・ストリート駅構内の壁面にはシャーロック・ホームズの小説の一場面やシルエットが描かれています。

BBC「シャーロック」で使われている、シャーロックとジョンが下宿する「ベーカー・ストリート221B」の外観は、ユーストン・スクエア駅近くのノース・ガウアー・ストリート187番地で撮影されました。ここの1階にある軽食堂「スピーディーズ・カフェ」には、店内一面に撮影の様子の写真が掲げられています。

シャーロック・ホームズ博物館
239番地にあるシャーロック・ホームズ博物館

A The Sherlock Holmes Museum
221B Baker Street, London NW1 6XE
(実際は239番地)

スピーディーズ・カフェ
「シャーロック」ファンが集まるスピーディーズ・カフェ

B Speedy’s Cafe (B)
187 North Gower Street
London NW1 2NJ



ディオゲネス・クラブ
The Diogenes Club

シャーロック・ホームズの兄マイクロフトが創設会員の一人でもある「ディオゲネス・クラブ」は、ロンドン中の社交嫌いの紳士が集まり、クラブ内では他人には声を掛けてはいけないという風変わりな紳士クラブです。バッキンガム宮殿から伸びるザ・マルと平行するペル・メルには紳士クラブがひしめいていますが、コナン・ドイルもまた、文士たちの集まる紳士クラブ「アセニアム(Athenæum)」の会員でした。

BBC「シャーロック」では、マーク・ゲイティス扮するマイクロフトがくつろぐ「ディオゲネス・クラブ」に、英国学士院(ブリティッシュ・アカデミー)の建物が使われています。英国学士院は人文社会科学の研究者自治組織で、講演会のときに入館できるほか、9月20、21日にロンドン内の建築物が一般公開されるオープン・ハウス・ロンドンでも見学することが可能(英国学士院は20日のみ)。また、ガイ・リッチー監督の映画「シャーロック・ホームズ」の撮影に使われたリフォーム・クラブ(The Reform Club)も公開されます(両日)。

BBC「シャーロック」の撮影に使われた英国学士院
BBC「シャーロック」の撮影に使われた英国学士院
ドイルも会員だった紳士クラブ「アセニアム」
ドイルも会員だった紳士クラブ「アセニアム」

The British Academy
10-11 Carlton House Terrace, London SW1Y 5AH


クライテリオン・レストラン
Criterion Restaurant

ホームズとワトソンを引き合わせる旧友のスタンフォード氏とワトソンがばったり出会ったのは、ピカデリー・サーカスにあるクライテリオンのバーでした。ワトソンがホームズと出会うきっかけとなったのを記念して、店内にはプラークが掲げられています。ところで、ロンドンでは初となる、シャーロック・ホームズを記念するプラークが日本から贈られたものだったということはご存知でしたでしょうか。1948年、GHQ占領下の東京に英米日のシャーロキアンが集まりました。ホームズが修得していた格闘技にちなんで名付けられたホームズ同好会「バリツ支部」に在籍する彼らからロンドン市に贈られたプラークが、1953年1月3日にここで除幕されました(現在は所在不明)。

BBC「シャーロック」の試写版では、ジョンとスタンフォード氏がクライテリオンで昼食をとっていましたが、本編ではラッセル・スクエアで出会った2人がベンチに腰掛けて飲んでいるコーヒー・カップに「クライテリオン」と印字されています。

クライテリオン・レストラン
ピカデリー・サーカスに面するクライテリオン・レストラン
ロンドン初となるホームズ記念プラークの除幕式
ロンドン初となるホームズ記念プラークの除幕式

Criterion Restaurant
224 Piccadilly, London W1J 9HP


聖バーソロミュー病院
St Bartholomew's Hospital

正典のホームズとワトソンの出会いの場は、聖バーソロミュー病院(通称バーツ)の病理学教室。「緋色の研究」で、ワトソンのバーツ研修医時代の元同僚スタンフォード氏がここで2人を紹介すると、ホームズはいきなり「あなたはアフガニスタンに行っていましたね」と語り掛けてワトソンを驚かします。日に焼けた傷痍軍人ならばアフガニスタン帰りに違いないという見立てです。かつてはこの言葉を刻んだ記念プラークが病理学博物館にありましたが、見学者が多すぎるということで、現在はヘンリー8世門を入ったところにある同病院の博物館に移設されています。

BBC「シャーロック」でもシャーロックとジョンの出会いの場はバーツで、シャーロックはここの研究室で捜査のために実験をしていました。また、シーズン2の第3話「ライヘンバッハ・ヒーロー」では、シャーロックが病理学棟の屋上からギルツパー・ストリートの歩道に飛び降りたため、その着地点は「シャーロック」ファンの巡礼地となっています。

聖バーソロミュー病院の病理学棟
聖バーソロミュー病院の病理学棟

St Bartholomew's Hospital
West Smithfield, London EC1A 7BE

ホームズとワトソンの会話が刻まれたプラーク
ホームズとワトソンの会話が刻まれたプラーク


ザ・シャーロック・ホームズ(パブ)
The Sherlock Holmes

ロンドンを訪れるシャーロキアンが必ず立ち寄るのが、チャリング・クロス駅近くのノーサンバーランド・ストリートにあるパブ「ザ・シャーロック・ホームズ」です。店内にはホームズが解決した事件にちなんだ証拠の数々が展示され、2階のレストランにはホームズの書斎が再現されています。これらは1951年に開催された英国フェスティバルで展示されたもので、あまりの人気に閉会後も取り壊されることなく英国内外を巡回し、1957年に現在のパブに落ち着きました。この場所は、「バスカヴィル家の犬」でヘンリー・バスカヴィル卿が宿泊したノーサンバーランド・ホテルにちなんで選ばれています。

BBC「シャーロック」では、連続殺人事件の容疑者をシャーロックがノーサンバーランド・ストリートへとおびき出しますが、実際の撮影ではレキシントン・ストリートが使われており、ブロードウィック・ストリート46番地にあるスペイン料理店「ブリンディサ」の窓際の席からシャーロックとジョンが見張ります。

シャーロキアンの聖地となっているパブ
シャーロキアンの聖地となっているパブ
2階にはホームズの書斎が再現されている
2階にはホームズの書斎が再現されている

The Sherlock Holmes
10-11 Northumberland Street, London WC2N 5DB

C Tapas Brindisa Soho
46 Broadwick Street, London W1F 7AF

ロンドン博物館の「シャーロック・ホームズ」展

ロンドン博物館では10月17日からシャーロック・ホームズ展「Sherlock Holmes: The Man Who Never Lived And Will Never Die」が開催されます。これまでのホームズ展では、科学的な捜査法や法医学、そしてヴィクトリア朝という時代に焦点が当てられることが多かったのですが、今回はホームズが活躍した19世紀末、霧の立ち込める石畳を辻馬車が走る、7つの海を支配した大英帝国の首都ロンドンという街が主役になります。

ロンドン博物館の学芸員アレックス・ワーナー氏は、「シャーロック・ホームズというプリズムを通して、ロンドンの街を再発見する機会にしたい」と語っています。このホームズ展では、コナン・ドイルが探偵小説を書くきっかけとなったエドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」の原稿が英国で初めて公開されるほか、正典の「空家の冒険」の原稿、BBC「シャーロック」でカンバーバッチが着ていたコートやドレッシング・ガウンも展示されます。

ロンドン博物館学芸員のアレックス・ワーナー氏
ロンドン博物館学芸員のアレックス・ワーナー氏

  • 「シャーロック・ホームズ」シリーズが掲載されていた「ストランド・マガジン」
    「シャーロック・ホームズ」シリーズが掲載されていた「ストランド・マガジン」
  • シドニー・パジットによるアーサー・コナン・ドイルの肖像画
    シドニー・パジットによるアーサー・コナン・ドイルの肖像画
  • BBC「シャーロック」でカンバーバッチが着用したコート
    BBC「シャーロック」でカンバーバッチが着用したコート


Sherlock Holmes:
The Man Who Never Lived And Will Never Die

10月17日(金)~2015年4月12日(日)
10:00-18:00
£12
Museum of London
150 London Wall, London EC2Y 5HN
Tel: 020 7001 9844
Barbican/St. Paul's/Moorgate駅
www.museumoflondon.org.uk
編集日記: 「シャーロック・ホームズ」展に行ってきた(2014年10月20日)
 
<< 最初 < 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 > 最後 >>

Ko Dental お引越しはコヤナギワールドワイド 不動産を購入してみませんか LONDON-TOKYO Dr 伊藤クリニック, 020 7637 5560, 96 Harley Street

JRpass totton-tote-bag